
| あすか製薬ホールディングス 山口 惣大社長 Profile◉やまぐち・そうた 1983年生まれ、2008年首都大学東京(現・東京都立大学)大学院理工学研究科修了、20年一橋大学大学院経営管理研究科修了。08年日立製作所入社。16年あすか製薬株式会社入社。21年あすか製薬株式会社代表取締役社長就任(現任)。25年あすか製薬ホールディングス株式会社代表取締役社長就任(現任)。 |
サスメド 上野 太郎社長 Profile◉うえの・たろう 1980年生まれ、2012年熊本大学大学院医学系研究科博士課程修了。14年公益財団法人神経研究所附属晴和病院医師(現任)。2015年サスメド合同会社創業。16年サスメド株式会社代表取締役社長就任(現任)。24年一般社団法人全国医学部発ベンチャー協議会理事(現任)。 |
100年の知見と先進デジタル
産婦人科領域で共同開発
──はじめに、両社の事業内容についてお聞かせください。
あすか製薬HD 山口社長 当社は100年以上培ってきたホルモン製剤の知見をもとに、産婦人科や甲状腺等の特定領域で実績を重ねてきました。21年の持株会社化を機に、薬にとどまらず予防、検査・診断、治療、予後までを包括する「トータルヘルスケアカンパニー」への進化を進めています。
サスメド 上野社長 当社は15年創業のベンチャー企業で、社名は「持続可能な医療」に由来します。私は現役の医師でもあるのですが、現場で感じた課題をもとに、「治療用アプリ」の開発、ブロックチェーン技術を実装した臨床試験システム「SUSMEDSourceDataSyncⓇ」の提供など、「医療×デジタル」の切り口で事業を展開しています。
──「治療用アプリ」とは、どのような仕組みなのでしょうか。
上野社長 不眠障害を含めて多くの疾患の治療ガイドラインにおいて、実は「認知行動療法」などの非薬物療法が薬よりも推奨されています。しかし、診察室での対面カウンセリングは医師の時間・リソース不足という壁があり普及が進んでいません。こういった非薬物療法をデジタル化し、医師が薬と同じ手間で処方できるようにした医療機器が、治療用アプリです。
──医療現場の負担を減らし、非薬物療法を届ける仕組みなのですね。製品実績についてお聞かせください。
上野社長 当社では私自身の専門領域でもある不眠障害において、26年6月に不眠障害用アプリ「Medcle」の保険収載(※)を実現いたしました。薬を控えたい方や受診を躊躇していた方へ、公的医療保険で受けられる新しい治療選択肢を提供しています。また不眠障害にとどまらず、慢性腎臓病やがん領域など多様な疾患でもパイプライン開発を進めているところです。
※保険収載:薬事承認された医薬品や医療機器が公的医療保険の適用対象となり、患者が1~3割の自己負担で処方を受けられる状態になること。
──両社で共同開発を進めている、産婦人科領域における治療用アプリは、どのようなアプリなのでしょうか。
山口社長 共同開発を行っているのは、月経に伴い抑うつ症状や不快感が生じるPMS(月経前症候群)や、PMDD(月経前不快気分障害)の治療用アプリです。月経に伴う症状は生活に密接に関わっており、アプリによる治療を行うことで、つらい症状をコントロールする新しい治療手段をご提示したいと考えています。
──両社がタッグを組んだ背景を教えてください。
山口社長 産婦人科領域はつらい症状があっても「単なる体調不良」と我慢してしまい、病院を受診されていない潜在患者さまが非常に多いという課題があります。当社では女性のための啓発サイト「Mint+」での情報発信をはじめ、予防から検査・診断、治療、予後に至るまで一貫したサポートを進めてきました。製薬の枠を超えたアラウンドピル事業を推進するうえで、医療現場の課題に精通し、優れたデジタル技術を持つサスメドとのタッグはまさに不可欠なものでした。
上野社長 当社はアプリ開発の技術やノウハウは持っていますが、産婦人科領域で患者さまに届けるまでのノウハウや、医師とのネットワークといった浸透力には限界があります。その点、あすか製薬HDはホルモン製剤の歴史で培った揺るぎない実績の上に、産婦人科領域のKOL(主要な医師)の皆さまとの強い信頼関係を構築されており、ご一緒させていただけることを、大変心強く感じております。
あすか製薬HD×サスメド 共同開発提携概要
■提携対象:産婦人科領域「治療用アプリ」
PMS・PMDDを対象とする治療用アプリ。非薬物療法のアプローチにより、症状の改善や患者のQOL向上を目指す
■提携の骨子
▶︎共同で開発、保険収載へ
あすか製薬HDの疾患領域における知見、臨床開発力および販売力と、
サスメドの治療用アプリの研究開発ノウハウや臨床試験管理システムを活用し、
開発から薬事承認、保険収載まで両社一体で推進
▶あすか製薬HDの独占販売権
日本国内での販売はあすか製薬HDが担う
目指すのは、当たり前の選択肢
上市はゴールではなくスタート
──あすか製薬HDは長い歴史があり、長期視座で経営されている印象があります。一方でサスメドは創業10年ほどで非常にスピード感がありますよね。文化のギャップは感じないのでしょうか。
山口社長 製薬は命に関わる事業ですから、仕事の進め方は非常に慎重になります。かつては「石橋を叩き過ぎている」と言われるほど、慎重な企業文化がありました。ただ私自身、社長になる前から「従来のやり方のままでは成長できない」と痛感しており、少しずつ社内の意識を変えてきたのです。近年は現場に「まずやってみよう」と挑戦する風土が定着してきました。サスメドのようにリスクを取って素早く決断されるスピード感からは学ぶことが非常に多く、異なる文化だからこそ素晴らしい刺激になっていますね。
上野社長 文化は違っても、「患者さまに貢献したい」という想いは同じです。あすか製薬HDの現場からは「前例がなくても挑みたい」という強い熱意を感じます。弊社も不眠障害用アプリの承認手続きを通し、規制対応の大変さを、身をもって経験してきました。だからこそ製薬会社が慎重にプロセスを重ねる重要性も、痛いほど理解しています。
──アプリの上市が待たれますが、両社がこの協業の先に見据える最終的なゴールと、医療の未来像をお聞かせください。
上野社長 上市はゴールではなくスタート地点です。かつて診ていたPMSの患者さまで、抑うつ症状に悩んでいた方が治療を経て社会生活を送り、結婚報告をくださった経験があります。アプリを通した治療による患者さまの生活の充実こそがゴールと考えています。
山口社長 アプリが目指す姿は「珍しい治療」ではなく、患者さまにとって「ごく当たり前の選択肢」になることです。生成AIが数年で日常に溶け込んだように、アプリ治療も現場の土台として根付かせたいですね。10年後の未来に向け、患者さまのQOL向上に貢献するヘルスケアをともに創ってまいります。
あすか製薬ホールディングス株式会社[4886・プライム]
東京都港区芝浦2-5-1
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/
サスメド株式会社[4263・グロース]
東京都中央区日本橋本町3-7-2
https://www.susmed.co.jp/








