内科、産婦人科、泌尿器科の技術蓄積が強み
スペシャリティファーマが定義する「企業価値」
─御社は医薬品業界の中で、どのような特徴を持つ企業ですか。
山口社長 私たちは、内科(消化器・甲状腺)、産婦人科、泌尿器科という女性医療を中心とした3領域に強みを持つスペシャリティファーマです。創業は1920年で、もともとは食品加工会社の研究部門で、廃棄されていた臓器から医薬品成分を抽出し国内初のホルモン製剤を発売したことから始まっています。またこのホルモン製剤の研究開発技術が土台となり、アニマルヘルスや検査事業へと領域を拡大してきました。
─会社として大切にしてきた価値観は何でしょうか。
山口社長 研究から投資の回収までには長い期間がかかりますが、収益性を確保しながらも「人々の健康と社会への貢献」を最優先に、開発投資を継続し事業につなげていく。その価値観は現在も受け継がれています。
─長期的な経営視座を重視されているということですね。一方で株式市場では、「資本コストや株価を意識した経営」が注視されています。その上で御社が考える企業価値とは何と考えますか。
山口社長 資本コストや株価は当然意識していますが、当社では株主の方々、患者さんや医療機関、従業員、取引先や共創相手、金融機関といったあらゆるステークホルダーに対して、「中長期にわたって継続的に提供できる価値の集合体」を企業価値と考えます。
短期的な視点だけに陥ってしまうと各ステークホルダーの利益に相反してしまうこともありますが、中長期視点で事業を捉えて成長を目指せば、患者さんに提供できる価値の拡大だけでなく、それによって獲得できる利益も拡大し、その結果、従業員の給与の上昇や株式価値の上昇につながり、協業先への提供価値の向上などにもつながります。このように中長期視点で全てのステークホルダーへ提供できる価値が一致する点を探索しながら事業を進めることが、企業価値を高めることと考えます。
─御社の企業価値の源泉はどこにあるとお考えですか。
山口社長 当社では国内トップシェアの製品を複数抱えており、仮に供給が途絶えれば患者さんの命にも関わります。社会にとって必要な製品を100年以上、品質を確保しながら安定供給し、新製品を継続的に出し続けてきた実績、技術、社会からの信頼。それが企業価値の源泉と考えます。そしてもう一つ、オープンイノベーションが、将来、全てのステークホルダーへ利益を生むための基盤となります。
─研究開発投資はどのような考え方で行っていますか。
山口社長 売上高比で約10%、年間50~70億円規模を研究開発に充てています。医薬品開発は10~20年を要するにも関わらず、成功確率は高いとは言えません。1社だけで全リスクと費用を負うモデルは成立しない時代ですので、スタートアップやアカデミアとの共同研究、他社からのパイプライン取得など、オープンイノベーションが当たり前になってきています。当社は資金規模では大手に敵わなくても、スペシャリティ領域での実績や技術、医療関係者の方々との信頼関係が、共創相手として選ばれる理由となっています。
─女性医療領域の成長機会についてはどうお考えですか。
山口社長 女性特有疾患による年間経済損失は国内だけで5000億円弱と試算されており、国内外で「女性がどう健康を維持していくか」が社会課題となっています。日本はまだ欧米に比べると遅れをとっていますが、これまでは「病気じゃないから」と我慢されてきた症状でも、健康リテラシーの高まりによって病院に行かれる方が増えています。また国内シェアトップである保険適用で処方される低用量ピルなどの安定供給を確保しながら新薬も世に出すことで今後さらに女性の活躍に貢献できると考えます。
医薬品に留まらず、予防・検査・診断・予後の維持でも、女性医療のリーディングカンパニーとして検査の重要性を伝え、早期発見・受診を促す啓発活動を強化していきます。
5本柱で描く、持続的成長
世界の医療インフラへ
─中期経営計画と、進行中の取り組みについて教えてください。
山口社長 26年3月期を最終年度とする現中計では、売上高700億円、営業利益率8%、ROE8%の目標達成が視野に入っています。25年11月に公表した暫定版の次期中計(2026年度スタート)では、医療用医薬品の強化を軸に、アジアを中心としたグローバル展開、世界のパートナーとの創薬プロジェクト、アニマルヘルス、検査・アラウンドピル領域の5本柱で持続的成長の土台を築きます。2035年の長期ビジョンを掲げながらグループ売上高1000億円の早期達成を目指しています。
グローバル展開では医薬品市場が毎年7~8%伸長しているアジアにて、ベトナムの会社を連結子会社化し、フィリピンの会社にも出資済みです。日本での高品質な製造ノウハウの移植が現地での差別化につながります。
─成長投資と株主還元のバランスについて教えてください。
山口社長 研究開発はもちろん、設備・新規事業・人材への投資を重視しており、投資が先行する時期もありますが、それが将来の企業価値を高める取り組みと捉えています。株主還元については、過去40年以上減配なし(記念配当・特別配当を除く)という安定配当の維持を基本としつつ、業績に連動した利益還元も行っています。
─投資家に評価してほしい点と将来像を教えてください。
山口社長 当社は短期急成長型ではなく、持続的に価値を積み上げていく会社です。医療インフラの一部として、継続した研究開発で社会課題を解決しながら価値を提供していく。そういった着実な成長を評価いただきたいと思います。現在は国内が土台ですが、10~20年後には海外で事業の柱を何本か完成させ、世界の医療インフラの1つになっていたいです。
─最後に、株主・投資家へのメッセージをお願いします。
山口社長 ホルモン製剤を土台にスペシャリティ領域で磨いてきた強みが、当社の成長の源泉です。社会に必要とされる会社であり続けることを今後も目指していきますので、ぜひ長期投資の対象としてご評価いただけますと幸いです。
あすか製薬ホールディングス(4886・P)
代表者:山口 惣大 所在地:東京都港区
設立:2021年4月 資本金:11億9,790万円
従業員:1,632名(2025年3月31日現在)
事業内容:グループ会社の経営管理およびこれに附帯する業務








