スマートフォンやIoT機器の普及により、デジタルは重要な社会インフラとなった一方で、利用環境は年々複雑化している。日本PCサービスの家喜信行社長は、こうした状況を「デジタル社会特有の構造的な課題」と捉えている。
背景には、三つの要因がある。まず、相談先が分散していることだ。パソコンメーカー、家電量販店、通信会社など、それぞれが一部の領域を担っているため、利用者はどこへ問い合わせるべきか判断しづらい。次にデジタル機器そのものの多様化である。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット、Wi-Fi機器、IoT家電、さらには店舗向けPOSレジなど、生活や仕事を支えるデバイスは増え続けている。三つ目は、トラブル原因の複雑化だ。機器の故障なのか、設定の問題なのか、通信環境なのか。利用者自身が症状を正確に切り分けることは容易ではない。
デジタルが社会インフラとなった現在、こうした複雑さが「誰に相談すればよいのか分からない」という新たな課題を生み出しているといえる。
──この課題に対し、日本PCサービスはどのような役割を担っているのでしょうか。
家喜 私たちは「デジタルインフラのサポート会社」だと考えています。創業当初は「パソコン版JAF」を掲げ、パソコンのトラブル解決を中心に事業を展開してきました。しかし現在は、パソコンだけでなくスマートフォンや通信機器、IoT機器のほかWi─Fi環境など、サポート領域は大きく広がっています。
近年ではデジタルインフラの重要性が増す中、アライアンスの取り組みや対応領域もさらに拡張しています。グループ会社のスマホスピタルでは、ドコモ提携修理取次店舗として「ドコモ スマートフォン」の即時修理サービスにも対応しており、法人向けにはIT環境の構築や運用支援も行っています。
私たちの役割は修理そのものではなく、お客様がデジタルを当たり前に使える状態を維持し、その利用を支えることです。
──その役割を実現するために、どのような体制を構築しているのでしょうか。
家喜 当社の強みは、デジタルに関するさまざまな困りごとをワンストップで解決できることです。こうしたサービスは、フラッグシップブランド「デジホ」として展開しており、修理だけでなく、設定や使い方の相談、不具合への対応から修理まで、デジタルライフサイクル全体をサポートしています。
その基盤となるのが、全国380拠点に及ぶ駆けつけ専門部隊・持込店舗をはじめとするサービスインフラです。グループ内には、ヘルプデスク、キッティングセンター、取付設置工事・設定部隊、コールセンターに加え、法人向けの導入・運用を専門に担う部隊も備えており、お客様の状況や課題に応じたサポートを提供しています。
例えば飲食店などへ導入が進むPOSレジ「Airレジ」の導入支援では、LAN配線工事および端末の初期設定から設置、運用サポート、トラブル対応まで一気通貫で対応しています。
また、お客様によって求めるサポートの形もさまざまです。電話やリモートで解決できるケースもあれば、店舗への持ち込みや訪問対応が必要なケースもあります。私たちは複数のチャネルを持つことで、個人・法人を問わず幅広いニーズに対応できる体制を整えています。
──なぜ多くの顧客から選ばれているのでしょうか。
家喜 全国47都道府県でサービスを提供できる体制と、長年にわたり蓄積してきたノウハウが評価されているのだと思います。現在、個人向け会員サービスは約70万台にのぼり、提携企業数は900社を超えています。また、会員向けを中心とする電話・リモートサービスでは94%を一次対応で解決しています。法人顧客は20名以下の中小企業が中心です。社内にIT担当者を置けない企業や、担当者が退職してしまった企業からの相談が多く寄せられています。
個人・法人を問わず、デジタルを安心して活用できる環境づくりを支えてきたことが、多くのお客様に選ばれている理由だと考えています。
──デジタル社会の進化に伴い、今後どのような価値を提供していきたいですか。
家喜 私たちは年間42万件を超えるサポートを行っています。その中で、どのような機器が使われ、どのような困りごとが発生しているのかというデータも蓄積されています。今後は、そうした知見を活用しながら、単にトラブルを解決するだけでなく、お客様の暮らしや仕事をより便利で快適にする提案にも取り組んでいきたいと考えています。
例えば、お使いのデジタル機器の買い替え時期や故障の予兆をお知らせするデジホ健診や、利用状況に応じた通信環境の見直し、スマートホーム機器の活用提案など、デジタルを通じた生活の最適化もその一つです。デジタルが社会インフラとなった今、その活用を支えることも私たちの重要な役割です。
日本PCサービスが目指すのは、修理会社ではなく、デジタル社会を支えるインフラ企業という姿だ。次回は、顧客対応で蓄積した「リペアデータ」に着目し、新たな成長戦略を探る。
※各提携数・実績・会員数などは2025年8月時点の実績です。










