質の良化が利益押し上げ
──第3四半期までの決算では、売上・利益ともに順調に推移していますね。
難波氏 今決算は、表面的な数字だけではなく中身を伴った非常に良い結果になったと評価しています。9ヶ月で通期営業利益目標であった65億円を達成しましたが、一過性の要因によるものではなく、地道な本業が着実に推移した結果です。
特に着目していただきたいのは、売上や利益の「額」の成長以上に、中身の「率」が大きく改善している点です。まず「粗利率」は、前年同期の17・4%から17・7%へと上昇しました。商社において17%超の粗利率というのはかなり高い水準です。一方で売上に対する販管費率は前年同期の11・8%から11・6%へと改善しています。この結果、営業利益率は長期経営計画「SANYO VISION 2028」の目標である5・1%を大きく上回り、6・1%で着地しました。粗利率向上と経費率低減という「質の良化」が利益を大きく押し上げたことが、今決算最大のハイライトだと考えています。
収益構造そのものの改善
──この好業績は為替や市況などの外部環境によるものではないか、という声もあるのではないでしょうか。
難波氏 為替や原材料コスト、海上運賃などのボラティリティは常に存在します。しかし当社では、外部環境の変化をきちんと販売価格へ反映させる契約をほぼ全てのお客様と結んでいます。良い時も悪い時も、一方が過大な利益や損失を被らない仕組みがあり、外部環境に過度に依存しません。
また販管費抑制も一時的なコストカットではなく、インハウスで開発し刷新した基幹システムの本格稼働やAIの利活用など、「再現性がある」構造的な変化です。
唯一の一過性要因を挙げるとすれば、ファインケミカルでホルムズ海峡の閉鎖に伴う影響がありますが、全体への影響は限定的です。今回の決算は、現場の力が高まり、収益構造そのものが改善した成果であるとご理解いただきたいです。
営業利益75億円への見通し
──通期業績予想の上方修正にて、営業利益は75億円へと引き上げられました。一方で、サステナビリティは唯一の減益となっていますね。
難波氏 サステナビリティは、洋上風力発電や大型プロジェクトの割合が高く、単年度で見るとアップダウンが生じやすいビジネスモデルです。今期は大型案件の端境期にあたり減益となっていますが、中長期的に見れば非常に成長している分野です。現在の売上比率は全社の10%弱ですが、数年後には全体の4分の1を占める主力セグメントへ成長すると見込んでいます。向こう2~3年の案件はすでに仕込みが終わっており、来期は洋上風力などが控えているため、「谷深ければ山高し」で業績の力強い回復を見込んでおります。
他の3セグメント、特にファインケミカルやインダストリアル・プロダクツは非常に堅いビジネス基盤を持ち、着実に利益を積み上げています。 ライフサイエンスも、過去には大手代理店契約終了の痛手がありましたが、着実な回復軌道を描き、右肩上がりで推移しています。既存事業の安定成長に新規案件が加わることで、営業利益75億円は十分に達成可能と考えます。
地に足のついた領域拡大
──今後の成長を牽引するドライバーと、それを生み出す事業拡大の戦略についてお聞かせください。
難波氏 基盤となる2事業の堅調な稼ぎに加え、サステナビリティの回復とライフサイエンスの成長が牽引役となります。さらにEV関連や自動車のベンチマーキングサービスといった新規案件が、すでに収益貢献を始めています。
今後の領域の広げ方ですが、当社は過去に多角化を進めた後、現在の4セグメントに選択と集中を行いました。今後も全くの飛び地へ事業を広げるつもりはありません。例えば、サステナビリティで手掛ける洋上風力や地熱開発も、一時的なテーマに乗ったものではなく、長年手掛けてきた温泉などの掘削の歴史から派生したものです。新規案件は4領域の中で半歩ずつ陣地を広げる「地に足のついたピボッティング」戦略をとっています。この広げ方が当社らしい成長戦略だと考えています。
M&A体制をさらに増強
──事業領域の拡大にはM&Aも重要な役割を果たします。御社は統合後のプロセスも含め、M&Aに長けている印象を受けます。
難波氏 事前のデューデリジェンスや企業価値評価を徹底し、極めて厳格に案件を精査しています。加えてクロージング前に企業文化のフィット感まで徹底して確認するため、買収後100日程度でスムーズな同化を実現できているのです。近年では再生可能エネルギー、天然・植物由来のサーキュラーマテリアル、自動車のアフターマーケットといったコト売り領域に注力しており、厳格な目利きを維持しつつ大型案件もこなせるよう、M&Aチームも大幅に増員・補強しました。
社内ではすでに創立100周年となる2047年を見据えた議論も進んでいます。持続的成長を実現するために、既存事業の深耕、厳選したM&A、人材投資を組み合わせることで稼ぐ力をさらに高めていきます。
成長投資と並行し、株主還元も強力に推進します。80周年記念配当や自己株式取得により、今期の総還元性向は48%超へ上昇見込みです。今後もさらなる企業価値向上と株主還元の拡充に努めてまいりますので、ぜひご期待ください。








