人工歯・研削材の国内トップ 松風 【7979・プライム市場】

歯科医療分野で不可欠な製品を供給
高付加価値×グローバルで持続成長戦略描く

歯科材料分野で国内トップクラスの地位を築く松風は、2025年3月期に売上高386億9800万円、営業利益率約14%を達成し、すべての利益項目は過去最高を更新した。高付加価値製品と海外市場を軸に進めてきた収益構造の転換が、確かな成果として表れ始めている。また、第5次中期経営計画では、グループ売上高501億円、営業利益率15%、ROE13・5%という次の目標を掲げる。100年以上にわたり培ってきた技術力を武器に、松風はいま、次の成長カーブを描くフェーズへと歩みを進めている。
松風-山嵜文孝

山嵜文孝(やまざき・ふみたか)

取締役専務執行役員

1961年5月生まれ。81年3月、松風入社。2008年総合企画部長、11年執行役員総合企画部長、13年取締役総合企画担当、15年取締役常務執行役員 総合企画担当、22年取締役専務執行役員 生産・総合企画担当。24年取締役専務執行役員 総合企画担当に就任(現在)。

12年に長期的方針を転換
海外事業注力、利益率向上

松風の収益構造は、この10年あまりの間に大きく姿を変えてきた。デンタル事業では、人工歯、研削材、化工品、セメント、金属、機械器具など、幅広い製品群を展開しているが、近年、成長をけん引しているのが化工品分野、とりわけ充填修復材である。

▲充填修復材は粗利率80%、グローバルで成長余地が高い製品

「充填修復材は、世界市場で年率15%程度の成長が続いている分野で、当社にとっても収益性の高い製品です。粗利益率は約80%と高く、こうした高付加価値製品の比率が高まることで、会社全体の収益体質も着実に良くなっています」(山嵜文孝専務)

加えて、収益構造の変化をもう一段押し上げているのが、海外売上比率の上昇だ。現在同社は、売上の約6割を海外が占める。国内では機械器具などの仕入商品も一定割合を占めるのに対し、海外では原則として自社製品のみを展開しており、構造的に利益率が高い。

近年は、海外売上の拡大に加え、為替環境も一定の追い風となりトップラインは伸長基調にある。同時に全社的な効率化によって販管費率も改善しており、こうした要因が重なって、ここ数年は営業利益率も継続的に上昇している。

「とくに充填修復材のような高付加価値製品を海外で伸ばしていくことは、当社の収益基盤を強化するうえで重要な戦略です」(同氏)

この流れの起点となったのが、創業90周年を迎えた2012年に打ち出した長期視点の経営方針転換だ。創業100周年を見据え、売上規模や利益率、海外比率の目標を設定し、そこから逆算して戦略を構築する「バックキャスト型」の経営に舵を切り、経営資源の配分を意図的に海外へとシフトしてきた。その成果が、現在の収益構造の変化として着実に表れている。

また、海外展開を支えているのが、学術ネットワークの存在である。影響力のある教育関係者や歯科医師に製品を使ってもらい、論文や学会発表を通じて評価を積み重ねていく。同時にハンズオンセミナーを通じて使用感を実感していただくための取り組みも継続的に進めている。

「歯科医療の分野では、臨床の裏付けが非常に重視されます。製品の価値をきちんと認めていただき、その評価が広がっていくことで、信頼が積み上がっていくのです」(同氏)

技術を磨き、その価値を学術の力で世界に届ける。松風の現在の収益構造は、そうした取り組みの積み重ねの上に成り立っている。

持続的成長を支えたのは
100年続く技術志向の姿勢

1922年の創業以来、松風は幾度も事業環境の急激な変化に直面してきた。国内での医療制度改革により、業界構造が変わった時代には、売上規模の拡大一辺倒から、収益性を重視する経営へと舵を切ったこともある。決して順風満帆だったわけではない。しかし、時代に応じて戦略を変えながらも、同社が一貫して守り続けてきたものがある。それが「技術志向」の企業文化だ。

「創業者は京焼製造を生業とする家系で、やきものの技術を工業化できないかと挑戦した人物です。当時の “歯科医療に貢献できる他にはないものをつくろう”というDNAが、今も脈々と受け継がれていると感じています」(同氏)

▲「松風ブロックPEEK 」は保険適用できる白い歯の材料

実際、松風は国産初の陶歯やレジン歯、世界初の歯科用球状アマルガムなど、日本初・世界初の製品を数多く世に送り出してきた。人工歯や研削材で国内トップシェアを築いた背景には、品種の豊富さと品質への徹底したこだわりがある。多品種少量生産という一見非効率にも見える体制を磨き上げ、あらゆる症例に応えられる製品群を揃えてきた。研究開発の現場では、特定分野に偏らず、歯科医師や歯科技工士、歯科衛生士などさまざまな専門性を持つ人材が知見を持ち寄りながら、新しい製品づくりに挑み続けている。

新製品が必ずしもすぐに大きな利益を生むとは限らない。それでも「コモディティ化しないために、新しい価値を生み出し続ける」(同氏)。その姿勢こそが、松風の競争力の源泉であり、現在の高付加価値型の事業構造にもつながっている。

世界的な成長余地なお大きい
デジタル分野の基盤整備図る

歯科医療市場は、世界的に見れば今なお大きな成長余地を残した分野である。新興国では治療の普及余地が大きい。先進国でも、高齢化や歯科医療と全身疾患との関係性に対する認識の高まりを背景に、その重要性は増している。国内市場が成熟する一方で、グローバル市場はその20倍規模とも言われ、長期的な成長産業と位置づけられる領域だ。

「特に充填修復材は、当社の強みが生かせる領域であり、収益性の高い事業として存在感を高めています。グローバルで見れば、当社のシェアはまだ一桁台にとどまっており、今後の成長余地は極めて大きい分野です」(同氏)

高付加価値領域を中心に、海外市場での潜在性的な成長余地は依然として大きい。主力分野の着実な拡大を通じて、収益基盤のさらなる強化を図っていく考えだ。

▲3Dプリンタに使用する、樹脂系プリンタ材料「S-WAVEプリントシリーズ」

もう一つの成長軸が、デジタル分野への展開である。歯科技工の現場では、CAD/CAMや3Dプリンタの活用が広がりつつあり、治療のデジタル化は今後さらに進むと見られている。松風は、材料メーカーとしての技術基盤を生かし、樹脂系プリンタ材料などの新領域でも存在感を高めていく方針だ。生産面でも、品質を前提とした自動化・効率化投資を進めながら、成長分野へのリソースシフトを進めていく。収益構造を磨き込み、持続的な成長を支える基盤づくりに注力する。

「当社が目指しているのは、世界の歯科医療の現場で“選ばれ続ける存在”になることです。短期的な売上だけでなく、長期的に信頼されるブランドであり続けることが、結果的に持続的な収益成長につながると考えています」(同氏)

100年にわたって培ってきた技術志向の文化を土台に、松風は次の成長ステージへと歩みを進めている。

松風(7979・P)


京都市東山区福稲上高松町11

https://www.shofu.co.jp/




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