創業から圧力計測に集中
100年前の製品が未来技術遺産に
長野計器の経営理念は「一芸を極めて世界に挑戦」。同社が掲げる「一芸」とは、圧力を「はかる」技術に徹することである。
事業を横へ広げるよりも、高精度・高耐久・高信頼へと縦へ深掘りする。その姿勢は創業期から一貫しており、1924年製の分銅式標準圧力計など3点が、「国産圧力計の発展とその標準化に大きく寄与した」として、国立科学博物館の「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に登録されている。
同社は創業から100年以上にわたり技術を積み重ね、時代とともに進化し続けてきた。その歩みの延長線上に、今がある。
北極域研究船「みらいⅡ」
光ファイバセンサ技術で船体を監視
一芸を極めた技術が求められるのは、往々にして前例のない領域だ。
国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が建造を進める北極域研究船「みらいⅡ」は、本格的な砕氷機能を備える日本初の研究船である。北極海の海氷域で大気・気象・海洋・海氷に関する幅広い調査観測を可能とし、北極海の環境変化と人為起源による影響の把握・定量化、将来予想の精度向上などを目的とした国際的な研究プラットフォームとして活躍が期待されており、2026年11月頃の竣工が予定されている。
氷を割りながら進む砕氷航行は、通常の波浪とは比較にならない衝撃が船体に繰り返し加わる。負荷が蓄積すると船体の疲労が進行し、最悪の場合、船体の突然の破損につながりかねない。だからこそ、船体各所の「歪み」をリアルタイムで監視するシステムが不可欠となる。長野計器はこの要求に応えるため、インフラモニタリング領域で長年培ってきたFBG(光ファイバ)センサ技術と、加速度センサおよびジャイロセンサを組み合わせ、航行中の船体状況を監視する「船体構造応答モニタリングシステム」を新たに開発した。
氷や波による圧力や縦曲げモーメントなどの船体状況をリアルタイムで計測・記録・表示し、異常検知時には即時アラートで安全航行を支援する。電気を用いないFBGセンサによる計測は電磁ノイズの影響を受けにくく、引火性物質を扱う環境でも高い安全性を確保できる。
国家規模のプロジェクトで重視されるのは、「壊れず、確実に、正確にはかり続ける」過酷環境でも計測を止めない信頼性だ。
日本初の本格的な砕氷研究船プロジェクトに採用された事実は、長野計器の技術が社会から厚い信頼を得ていることを示している。
燃料電池自動車「MIRAI」
水素関連センサを共同実証
極限の現場だけではなく、人々の生活につながる次世代製品にも長野計器の技術は採用されている。
トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」では、同社の圧力センサが心臓部2種類の役割を担う。1つは、高圧で貯蔵された燃料タンク内の水素残量を把握するセンサ。もう1つは、車載の発電装置へ送り込む水素の圧力を監視するセンサだ。後者は計測値をもとに別システムが発電効率を制御するため、航続距離に直結するセンサである。
難しさは高圧水素を扱う点にある。水素は金属の微細な隙間をすり抜けやすく、高圧になるほどその傾向が強まる。センサには、長期間にわたって水素に触れ続けても劣化しにくい素材と構造が求められる。長野計器はトヨタ自動車との10年以上にわたる共同実証を通じて、この技術的ハードルを乗り越えてきた。水素社会は安全性・信頼性・再現性がなければ普及しない。同社の技術は、理想の未来と人々の生活とをつなぐ架け橋の役割を果たしている。
行動と総力の結集で未来を拓く
研鑽された技術が、未来を創る
長野計器の社是の一つに、「行動と総力の結集で未来を拓く」がある。北極の氷海を行く研究船「みらいⅡ」の船体、そしてトヨタ自動車「MIRAI」。フィールドが異なる2つの最前線に、同社の技術は組み込まれている。共通するのは、「極めた技術」を未来に向けて展開しているということである。これまでの研究や実績の積み重ねなしには、どちらの現場にも立つことはできなかった。
「はかる」技術を極め続け、この先の未来も切り拓く。
超高圧から極微圧まで
創業は明治29年。圧力計や圧力センサを中心とする各種センサなどの精密機器を開発・製造・販売。圧力計では国内シェア60%、世界シェア20%を占める。近年では計測制御機器事業が伸長しているほか、新エネルギー分野では業界に先駆けて研究開発を進めている。












