不動産の先にある価値
「デュアルタップは不動産会社だと見られることが多いですが、本質的には“人の人生における価値を提供する会社”だと考えています。サービスを受ける人がどう感じるか、どういう人生を送れるか、その質を高めることが、私たちの役割です」(臼井社長)
同社が目指しているのは、単に“モノ”を提供することではなく、その先にある価値の提供である。例えば不動産であれば、その価値は単純な価格や利回りだけでは測れない。
「不動産オーナーにとっても、物件に住む方にとっても、誇れるかどうかが大事です」(同氏)
同社の主力商品である資産運用型マンション「XEBEC(ジーベック)シリーズ」は、「23区×駅徒歩10分×高機能」というコンセプトで設計されている。利便性だけではなく、長期的に価値が落ちにくい立地や品質にこだわることで“持つこと自体が価値になる”“住むこと自体が誇りになる”不動産を追求してきた。
「デュアルタップのサービスを受ける方が、人生の中で“良かった”と思ってもらえるようなもの、幸せを感じられるようなサービスをやりたいと考えています」(同氏)
この“人生の満足度”を起点とした発想こそが、同社の事業の根底にある。
モノからコトへ 変わる価値観
かつては「何を持っているか」が価値とされてきたが、現在は「どう過ごすか」に重きが移りつつある。
いわゆるモノ消費からコト消費への変化は、多くの分野で指摘されているが、それは単なる消費行動の違いにとどまらない。人が「何に満足を感じるか」という基準そのものが変わりつつあることを示している。
「例えば食事でも、何を食べたかより、誰と食べたかのほうが記憶に残ることがあると思います。高いものを食べても、相手や状況によっては美味しく感じないこともある。逆に、スポーツを終えた時に飲んだ、ただの水がすごく美味しくて印象に残ったりする。結局、人はそういう“体験”に価値を感じているのではないでしょうか」(同氏)
価値はモノそのものではなく、その過程や時間の中にある。そうした変化は、住まいのあり方にも影響を与えている。
「昔は高いものを持つこと自体に意味があったと思うのですが、今はそうではなくて、どういう時間を過ごしたかのほうが大事になってきている。お金の使い方も、そういう方向に変わってきているのではないかと思っています」(同氏)
こうした変化の中で、「幸せ」の捉え方もまた変わり始めている。そしてその変化に向き合ったとき、住まいという一つの領域だけでは完結しないという現実が見えてくる。
住まいの先にあるもの
こうした価値観の変化を踏まえ、デュアルタップの視点もまた広がりを見せている。臼井社長は、これまでの事業を振り返りながらも、その先にある領域を見据える。
「これまで住まいを中心にやってきましたが、その延長線上で考えると、不動産だけでは完結しないと思っています」(同氏)
人の生活は、住まいだけで成り立っているわけではない。日々の暮らしは、食や余暇、そして将来的なケアといったさまざまな要素によって支えられている。
「サービスを受ける方がどう感じるか、どういう人生を送れるか。そこに関わっていきたいのです」(同氏)
こうした考えの延長線上にあるのが、『医・食・住・遊』というビジョンである。不動産という枠にとらわれず、生活そのものを支える価値をどう提供していくか。同社の視点は、すでに次の領域へと広がり始めている。
『医・食・住・遊』で描く価値のかたち
『医・食・住・遊』は単なる事業の多角化ではない。人が一生の中で関わる領域を横断しながら、どのように価値を提供していくかという問いに対する、一つの答えでもある。中でも具体化が進んでいるのが、「医」と「遊」の領域だ。
「医療の領域では、不動産と掛け合わせながら、これまで住まいで大切にしてきた“価値の感じ方”を拡張していくイメージです。その先にあるのが、“幸せな老後”をどう提供するかというテーマです」(同氏)
超高齢化社会において、住まいは単なる居住空間ではなくなる。どのようなサービスを組み合わせ、どのような時間を提供できるかによって、人生の質は大きく変わる。同社が見据えるのは、そうした“暮らしの先”にある価値である。
一方で、「遊」の領域ではホテル事業を起点に展開を進める。ただし、既存のホテルと同じことをやるつもりはない。重視するのは“記憶に残る体験”だ。
「私たちがやりたいのは、単に泊まる場所を提供することではありません。運営次第で体験の質は大きく変わります。効率や価格を優先すれば、体験価値は下がる。一方で、例えば、最後に食べた朝食がすごく美味しかったら、それだけで滞在全体の価値は大きく変わる。そうした“記憶に残る体験”を設計していきたいと考えています」(同氏)
単なる機能ではなく、体験としての価値をどう設計するか。その思想は「食」の領域にも通じる考え方だ。何を提供するかではなく、どのように感じてもらうか。その質が問われる。こうした価値の積み重ねが、結果として“人生の満足度”を高めていく。
『医・食・住・遊』という構想は、単なる多角化ではない。そのすべてを一つの流れとして捉え直そうとする試みでもある。すべてが完成しているわけではない。しかし、方向性は明確だ。住まいを起点に、医療、食、そして遊びへ。事業領域を横断しながら、人の一生に関わる価値を設計していく。変わらないのは、「誇れる」「幸せだと感じられる」価値を提供したいという軸である。
不動産という枠を超えながらも、その本質は変わらない。デュアルタップの次の20年は、その価値をより広い領域で実装していく時間になる。








