グローバル企業への飛躍と、見えてきた新たな課題
本格的な海外展開の芽は1987年、台湾への塗装機器展開から始まった。以来、世界各地で現地ニーズに合わせた営業網を構築し、今日に至るグローバル販売網の礎を築き上げてきた。さらに2010年代以降、海外展開は一気に加速。2017年度には、中国のコンプレッサメーカー・SCR社のM&Aなどを成功させ、海外売上比率は50%を突破した。現在では22の国・地域に32社を展開し、海外売上比率は66・3%に達している。
しかし、急激なグローバル化は同時に新たな課題も浮き彫りにした。従来は「現地企業のブランド力活用」や「現地への経営の舵取りの委任」を中心とした手法をとってきたが、これが当初の目論見と異なり、グループ全体での迅速な意思決定やガバナンスの浸透が難しくなる場面が生じたのである。世界市場での競争が激化する中、ローカルな機動力を活かしつつも、グループ全体としての一体感とガバナンスを高度に両立させる組織設計が急務となった。
そこで同社は2026年4月より、CxO制およびエリア統括制の導入を決断した。CTOやCFOなど各機能の最高責任者へ決裁権限を大幅に移譲することで意思決定のスピードを向上させると同時に、グローバルレベルでのガバナンス体制を強化。柔軟性と統制力を兼ね備えた新体制へ移行を進めている。
危機感から生まれる変革。
「Vision2035」と意識・行動のアップデート
会社の制度や組織図を変えるだけでは、真の成長は望めない。最大の焦点は、全社員の意識と行動の変容にある。 不確実性の高い時代を生き抜くために「シナリオプランニング」の手法を導入。最悪の市場変化までをも想定した緻密な将来予測を行い、長期ビジョン「Vision2035」と、それを踏まえた具体的マスタープランを策定した。
あえてネガティブな外部環境の変化まで直視したのは、社内に強い危機感を共有するためだ。過去の好業績に甘んじることなく、「今、変わらなければ未来はない」という健全な危機感を持って変革を推し進める。
マスタープランの実行力を高めるため、30代の若手執行役員の登用や、次世代リーダー育成プログラム「Rise18プロジェクト」のメンバーを計画策定に巻き込むなど、組織の足元から自発的な変化を生み出す仕掛けが動き出している。100周年という節目は過去を祝う場ではなく、次の100年の「1年目」に向けた実行力を極めるスタートラインなのだ。
「モノづくり」から「全体のエネルギー解決」へ
「私たちが目指すのは、お客様が真に求めているものを追求し、これまでにない発想で圧倒的な付加価値を創出することです」と代表取締役社長の三好栄祐氏は語る。革新的なコンプレッサ構想である『手のひらに百馬力』に象徴されるように、単に製品をつくるのではなく、顧客の根本課題に挑む姿勢が求められている。
「従来の『モノづくり』は部分最適になりがちです。しかし顧客が真に必要としているのは、工場全体の効率化や環境対応といった全体最適としての『ソリューション』です。ソリューションを提供するモノづくりを行うためには、社員一人ひとりが市場や顧客に対する感性を磨かなければなりません」
工場においてコンプレッサと塗装ラインは、全体のCO2排出量の多くを占める領域でもある。アネスト岩田は、この両分野で培った技術力を融合させ、工場全体の省エネと脱炭素に貢献する「エネルギーソリューションメーカー」への進化を宣言している。創業時の情熱を胸に、世界のエネルギー課題を解決する企業へ─アネスト岩田の新たな100年への挑戦が、今始まっている。
次の100年へ、新たな挑戦を。
三好 栄祐 代表取締役 社長執行役員 CEO
アネスト岩田は、おかげさまで創業100周年という大きな節目を迎えることができました。今日の当社があるのは、長年にわたりご支援、ご愛顧をいただいたお客様、お取引先、株主の皆様、そして歴代の社員をはじめ、多くの関係者の皆様のお力があったからこそです。心より感謝申し上げます。
しかし、100周年はゴールではありません。私たちは、この節目を「次の100年へのスタート」と捉えています。
社会や産業の構造が大きく変化する中、これまで培ってきた技術や事業を守るだけでは、持続的な成長は実現できません。だからこそ私たちは、2035年を見据えた「ビジョン2035」を掲げ、既存事業のさらなる進化と新たな領域への挑戦を進めています。
コンプレッサや塗装機器で培ってきた技術を生かし、工場全体のエネルギー課題を解決する「エネルギーソリューションメーカー」へ─。モノづくりそのものも進化させながら、新しい価値を社会に提供してまいります。
未来をつくるためには、変化を恐れず、今、挑戦することが必要です。次の世代がさらに大きく飛躍できる土台を築くこと。それが、100年の歴史を受け継ぐ私たちの使命だと考えています。
感謝の気持ちを力に変え、次の100年へ。アネスト岩田は、これからも挑戦を続けてまいります。










