
(右)DX戦略本部 副本部長 執行役員 水上幸治氏
(左)DX戦略本部 AAS-DX推進部 AAS-DX推進室室長 山崎廣二氏
社長直下で加速する
「両輪」の推進体制
AAS-DXは、中長期的な視点でDXをどう捉え、具体的にどのような手を打つべきかを示す道標として機能している。同社はこれを全社的な経営戦略として具現化するため、強力な組織改革を実行。2023年10月には「DX戦略本部」を設置し、AAS-DX5か年計画を全社的に推進。現在は代表取締役社長である畠山仁氏が自ら本部長を兼任する「社長直下型」組織のもと、「AAS-DX推進部」と「先端技術研究所」が連携してDXを推進している。
DX戦略本部の水上幸治氏は、この組織体制の強みについて次のように語る。
「5か年計画を策定した当初は、社内でも何をベンチマークにすべきか手探りの状態でした。しかし、経営トップが本部長を兼任し、全社を挙げた体制が整ったことで、意思決定のスピードが飛躍的に向上しました。現在は、次の5年を見据えた『計画のリニューアル』に着手しています」
この強力な推進体制こそが、アジア航測のDXを支えている。
全社を巻き込むDX人財育成と
マインドの刷新
同社ではDX推進に向け、「意識改革(Change Mind)」、「仕組みづくり(Change Environment)」、「技術革新(Change Customer Experience)」の3つの柱を掲げている。
3つの柱の筆頭が全社員の「意識改革」であり、自ら変革(DX)にチャレンジするマインドの醸成を目指している。
具体的なアプローチとして、独自の「DX人財教育プログラム」を2023年から本格始動させた。外部の専門企業によるeラーニングやハンズオン研修を活用し、全役職員の3割に相当する約500名の受講を現中期経営計画期間内の目標に掲げている。さらに、幹部から若手までを対象にプレゼンテーション大会や勉強会を開催し、実践的な学習機会を提供している。
「意識改革で最も重要なのは、失敗を恐れずにチャレンジする風土づくりです。社内版生成AIのナレッジを共有する『アイデア箱』を設置したことで、若手を中心に新たな業務活用法を議論する動きも活発化しています」と水上氏は手応えを語る。
変革に挑戦する組織や社員を正当に評価する仕組みづくりも並行して進んでおり、挑戦を後押しする土壌が整いつつある。
社内生成AI「αGeAI」
日常業務の必須ツール
意識改革を支え、具体的な生産性向上をもたらすための「仕組みづくり」では、DXの足回りとなるIT基盤強化を進めており、「DXの加速化」「BCP対策」「働き方改革」に取り組んでいる。中でも最も大きな成果を上げているのが、独自の社内生成AI環境「αGeAI(アルファ・ジーイー・エーアイ)」の導入と活用だ。
2022年末の生成AIの台頭を受け、同社は慎重な技術検証と、「生成AI利用ガイドライン」の策定を実施。2024年4月、Microsoft Azure OpenAI Serviceを基盤としたセキュアな環境下で「αGeAI」の運用を開始した。外部への情報漏洩を防ぎながら、安全にAIを活用できるインフラである。
全役職員が利用可能な環境にあり、日常業務で活用する必須ツールとして定着している。用途としては、文章の翻訳や推敲、プログラムコードの生成、アイデアの壁打ちなど多岐にわたる。
水上氏は、その導入成果を次のように明かす。
「社内で約120件の活用サンプルを抽出し、定量的な効果を測定したところ、年間で約5、300時間の業務時間が削減されていることが実証されました。これは経費換算で約3、000万円の削減効果に相当します。しかもこれは、ヒアリングベースで見える化した最小限の数値に過ぎず、実質的な効果はさらに大きいと確信しています」
さらに、基幹システムとBIツールの連動による業績分析のリアルタイム化や、営業活動を効率化する〝AAS版-SFA〟の構築も進み、全社的なITインフラの強化が着実に実を結んでいる。
コアコンピタンスとAIを融合
新たな成長領域を創出
DXの成果を顧客や社会への価値提供につなげる「技術革新」の側面でも、同社は極めて大きなマイルストーンを達成した。2026年5月18日、自治体向けGIS(地理情報システム)業務支援サービスと生成AIを融合させた新ソリューション、「ALANDIS+GeAI(アランディスプラス ジーイー・エーアイ)(仮称)」のリリースを発表。
「ALANDIS+」は自治体DXを支援する行政向けGISソリューションで、今回開発された新システムは、自治体が保有する膨大な紙資料や過去の対応履歴などをAIに学習させることで知識継承を支援するほか、対話形式でGISを操作できるようになる。2026年10月以降に提供を開始する予定だ。
「自治体では行政判断のために過去の紙資料を探して利用するケースも多く、情報検索に時間を要することがあります。本サービスはそうした課題を改善するとともに、『〇〇地域のハザードマップを表示して』といった自然な言葉でGISを操作できるようにします。自治体職員の負担軽減に加え、当社に蓄積された技術・ノウハウの継承や保守サポート業務の効率化にも寄与するイノベーションです」(山崎氏)
アジア航測にとって、AIは目的ではなく、価値創造を支える手段である。自社で航空機を保有し、国土を正確に測るという絶対的なコアコンピタンスがあるからこそ、それを独自の地理空間情報サービス基盤へと昇華させ、真に価値のある顧客体験(CX)へとつなげることができる。
企業価値向上に向けた情報発信と
「DX銘柄」への挑戦
アジア航測の優れたDXの取り組みは、外部からも高く評価されている。経済産業省、東京証券取引所および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が主催する「DX銘柄2026」において、同社は3年連続で「DX注目企業」に選定された。これは、経営戦略とDXが高度に連動している証左である。
しかし、同社はさらなる高みとして「DX銘柄」の獲得を目指している。
水上氏は、今後の展望と課題を冷静に見据えている。
「注目企業に選ばれ続けていることは光栄ですが、銘柄の壁を破るためには、これまでの社内向け改革だけでは足りないと分析しています。今後は、ALANDIS+GeAIのような成果を積極的に発信するとともに、各部門に『AIエバンジェリスト』を配置し、現場が自立的にAIを活用できる体制へ移行させていきます。AAS-DXはまさに今、新たなステージへ進もうとしています」
激動するビジネス環境に対応しながら、常に変革と成長に挑戦し続けるアジア航測。「空間情報技術で社会をつなぎ、地球の未来を創造する」という大いなるビジョンに向け、同社のAAS-DXは、さらなる進化を遂げていくに違いない。








