冨士ダイス 【6167・プライム市場】

77年の歴史を礎に、100年企業への進化を果たす
──代表取締役2名体制で挑む「変化に対応できる企業体質」への転換

国内の超硬耐摩耗工具市場において長年にわたりトップシェアを堅持し、日本のものづくりを支え続けてきた冨士ダイス。1949年の創業から77周年を迎えた2026年、同社は代表取締役2名体制への移行という大きな決断を下した。超硬合金の主原料であるレアメタルのタングステンの供給不足をはじめとする世界的な不確実性の高まり、そして次の「100年企業」への飛躍を見据え、同社はどのように生まれ変わろうとしているのか。春田善和会長、津田雅宣社長の二人に、新体制の狙いや直面する課題、そして2030年、2035年に向けた未来への展望を熱く語ってもらった。

春田 善和会長
Profile◉はるた・よしかず
1963年生まれ、神奈川県出身。87年慶應義塾大文学部卒業後、冨士ダイス入社。2015年取締役、18年常務、23年専務、24年社長、26年会長に就任。
津田 雅宣社長
Profile◉つだ・まさのぶ
京都府出身。88年舞鶴工業高専卒、冨士ダイス入社。2020年取締役、24年常務、26年社長に就任。

「代表取締役2名体制」に
込められた真意

──中計推進中というタイミングで新体制へ踏み切った背景とそれぞれの役割についてお聞かせください。
春田善和会長(以下、春田) 主な理由は4つ。1つ目は、現在直面しているタングステン不足の問題が、創業以来最大の危機と言えるほど深刻であること。2つ目は、国内事業の伸びしろが限られる中で海外展開の加速が急務であること。3つ目はガバナンスの一層の強化、そして4つ目は組織全体が主体的に意見を出し合える体制づくりです。役割としては、津田社長にCOOとして執行全般を委ね、私はCEOとして中長期戦略の策定や渉外・監督業務に専念。社長に権限移譲することで、意思決定スピードを圧倒的に高めていく狙いがあります。

津田雅宣社長(以下、津田) 春田会長が地道に守り、築き上げてこられた基盤を受け継ぎつつ、私は執行責任者として事業戦略をさらに推進する役割を担います。上場以降、取締役会に権限が集中しがちでしたが、ワークフローの整備などを進め、現場に近いところで迅速に判断できる仕組みを作ってきました。変化に対して先手、先手で動ける強靭な組織へとアップデートさせていく決意です。

▲10,000分の1ミリの精度を追求するガラスレンズ成形用金型

100年企業へ向けた
新理念の構築

──昨年策定したビジョンにはどのような想いを込めましたか?
津田 次の100年を見据えたとき、「超硬耐摩耗工具専業」の枠組みに囚われていると持続的な成長は望めません。そこで「人と素材と技術の力で『感動体験』を。」という新ビジョンを掲げ、世界中に驚きや喜びを届けられる企業へ進化したいという想いを込めました。一方で、創業者の「人間尊重」や「事業を通じて社会に貢献する」といった根幹は変わりません。社員が自律的に挑戦し、ボトムアップで意見を交わし合える風土づくりを進めています。

春田 社員一人ひとりの主体性が100年企業への絶対条件。モノを売るだけでなく、お客様課題にとことん向き合う「素材・技術ソリューション企業」へと進化する必要があります。川上から川下、あるいは異分野も含めた事業領域の拡大が我々の進むべき道だと確信しています。

創業以来最大の試練に
立ち向かう「構造改革」

──現在のタングステン需給の危機をどう乗り越えますか。
春田 中国が世界のタングステン産出・精錬の約8割を占める中、日本への供給が厳しく制限されるなど、地政学的リスクが表面化しています。タングステンの中間原料APTの価格は、今年1月から3月にかけて中国の輸出規制前の約10倍と大幅に上昇。今期の連結売上高目標244億円(前期比約74億円増)は大幅な価格転嫁を含むものであり、持続性という観点では楽観視できません。1年ほどで供給構造に見切りをつける覚悟が必要という強い危機感を持っています。しかし裏を返せば、当社の圧倒的な技術力と顧客ネットワークを証明するチャンス。ヨーロッパなどからの新規調達ルートの開拓を急ぐと同時に、タングステンなどレアメタルを削減した合金の販路拡大を模索しています。

津田 具体的な切り札は開発中の新材料や新規事業です。タングステンやコバルトの使用量を9割削減した新合金「サステロイ STN30」の本格販売や、消費電力を大幅に低減する高性能電極「PME」の製品化が一例。2025年10月から始動した「超硬耐摩耗工具・金型のリサイクル事業」は全国へと回収網を拡大中。使用原料の10%程度をリサイクル原料で賄う体制を早期に確立し、次期中計の核として資源循環型のビジネスモデルを完成させます。

「海外事業の飛躍」に向けた
新たなグローバル戦略

──津田社長は「海外事業本部長」も兼任。海外市場での展開と、国内営業との連携についてお聞かせください。
津田 現在の中計では「海外売上比率25%以上」を目標に掲げ、各エリアで攻め方を変えています。特に手応えを感じているのがインド市場。休眠していた現地法人を今年4月に再開させ、デリー近郊と南部の2拠点で優秀な現地エージェントを活用しつつ日本からの出張サポートも組み合わせることで、確実な手応えを得ています。一方、中国市場は量的な拡大を追うのではなく、光学関連(レンズ・コネクター等)の高付加価値分野に集中。北米は政権の動向を見極めつつ調査を継続し、ASEANでは自動車産業の縮小に対応して他産業への参入と現地人材の育成を加速させています。

春田 実は、これまでは国内営業が「守り」、海外営業が「攻め」と組織が分断され、価格戦略やアプローチがバラバラになりつつありました。そこで、グローバルな視点で価格設定の適正化を含む販売戦略を推進すべく、国内外の営業組織を統合。次世代を担う世代が自ら最適な営業体制を再構築していけるよう、議論を戦わせている最中です。

長期ビジョンと、
次世代へのバトン

──最後に未来への展望を教えてください。
春田 次期中計からは、従来の「3年サイクル」という固定観念を打破したいと考えています。まずは2030年、2035年といった長期ビジョンを定性的に明確にし、そこから逆算した単年度の具体的施策を組み合わせる形式への変更を検討しています。生産現場ではロボット化や自動化投資を完了させ、さらなる省人化・省力化とAI活用を推進していきます。時代がどう変わろうとも、「変化を恐れない企業体質」への転換こそが私たちの生きる道です。

津田 AIやロボットの導入が進むからこそ、最後に差別化の鍵となるのは適切な『問い』を立てられる人間。だからこそ、これまで以上に人材育成と教育にリソースを集中投資します。選択と集中によって収益基盤を強固にし、100年後も社会から、そして世界から必要とされ「感動体験」を届け続けられる企業を全員で創り上げてまいります。

▲冶金工程に導入した自動化ロボット

冨士ダイス株式会社[6167・プライム]

所在地:東京都大田区下丸子2-17-10
創立:1949年6月
https://www.fujidie.co.jp/

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