川上から川下まで一気通貫で支える
1937年に無機化学品の卸として創業した昭栄薬品は、51年に花王石鹸(現・花王)の化学品部門と取引を開始。洗剤や化粧品の原料となる「オレオケミカル」を軸に、界面活性剤の用途拡大とともに事業を広げてきた。現在も同社の仕入の4割超を花王グループが占めている。
同社の特徴は、原料メーカー(川上)から中間加工メーカー(川中)、トイレタリーや化粧品などの最終製品メーカー(川下)に至る一連の商流に深く介在し、オレオケミカルのサプライチェーン全体をワンストップで支える事業モデルを確立している点だ。 数万社が存在すると言われる化学品商社の多くは、取引先が川上だけ、川中だけなど、特定領域のみを担う企業が一般的だ。同社の「サプライチェーン全体を支える」モデルは、業界でも独自の立ち位置と言える。
「川上から川下まで一気通貫で接点を持っているからこそ、あらゆる現場の情報が集まってきます。どこの現場でどんな課題やリスクが生じているかをいち早く捉え、ニーズや市況に応じた提案や、海外も含めた代替ルートの提案が可能です」(藤原佐一郎社長)
事業の軸は「安心・安全」「環境」
こうしたサプライチェーンを支える同社の事業は、「化学品」「日用品」「土木建設資材」の3つに分かれる。異なる分野の組み合わせに見えるが、根底には「安心・安全」「環境」という共通の軸が貫かれている。
主力の化学品事業(売上構成比92・5%)で扱う「オレオケミカル」は、パーム油、ヤシ油といった主に植物系の天然油脂を原材料とした油脂化学品だ。資源の枯渇リスクや環境負荷が低いため、石油由来製品の代替となるサステナブル素材として近年注目を集めている。
日用品事業では生協やECサイトを中心に洗浄剤や日用雑貨品などを企画・販売。土木建設資材事業では地盤改良に使用する材料・添加剤や土壌汚染対策用の処理薬剤などを扱っている。また原材料の供給にとどまらず、取引先の現場で生じる臭気問題や排水処理といった課題に対しても、機器やソリューションの提案を行っている。
「オレオケミカルは、土と水と光があれば再生産できる原料です。もっとも、創業当時からサステナブルを意識していたわけではなく、長年扱ってきた商材が時代の変化とともに結果として『安心・安全』や『環境』というテーマに重なったと感じています。現在は『環境』を重要な切り口として改めて前面に押し出し、新領域の拡大へとつなげています」(同氏)
売上・利益ともに10年で1・5倍へ
時代のニーズに合致した取り組みの積み重ねにより、同社の売上・利益は、上場から10年で約1・5倍へ拡大。26年3月期の売上高は269億2100万円と過去最高を更新した。
「上場は『第二の創業』と言える転機でした。上場により高いスキルや挑戦心を持った人材が集まるようになり、環境を切り口にした新ビジネスなども推進しやすくなりました。商社は人が資本ですから、優秀な仲間の参画が近年の着実な成長を支えています」(同氏)
人材という成長基盤を固めた同社が、持続的な企業価値向上に向けて経営の根幹に据えるのが「信頼」である。藤原社長は企業価値を「すべてのステークホルダーから信頼を勝ち取り、高めていくこと」と定義している。
信頼をさらに獲得するための、キーワードが「伝えて、つなぐ」だ。現場で顧客の「困りごと」を聞き取り、社内で共有して解決策を提案するサイクルを回す狙いである。この循環を組織に根付かせるため、同社では成果を上げた社員だけでなく、情報を聞いて伝え、つないだ社員全員を評価するよう制度改革を進めている。また刷新を予定する基幹システムでは、現場の知見を連携・共有する仕組みの構築を進める意向だ。
価格決定権を持つ商材拡大で利益成長
現場で「伝えて、つなぐ」取り組みは、収益構造の改善にも直結する。同社では利益率を高める施策として「より価格決定権を持つ商材の拡大」を進めている。
「当社が価格決定権を持つ商材の一つは、輸入化学品です。メーカーの工場稼働停止など、さまざまな事情で原料が手に入らなくなるリスクに備えるBCP(事業継続計画)の観点から、お客様からは『現在の調達先以外にも選択肢を確保したい』というご依頼をいただくことが多いです。当社では海外拠点網を活かして輸入化学品を紹介し、調達ルートを広げるご提案を行っています。もう一つは、産業廃棄物や未利用資源の再資源化です。少し手を加えれば使えるものに価値を見出し、商品化する。お客様の産廃削減や環境負荷低減をお手伝いできれば大変喜ばれますし、当社としても利益が上がります」(同氏)
資本効率を意識した経営へ
収益構造の改善施策は、資本効率重視の経営と連動している。同社ではバランスシートや資本収益性を重視する経営へと舵を切り、中長期的には売上高300億円以上、ROE8・0%以上、PBR1・0倍以上の達成を掲げている。
「これまでは売上や利益の追求が第一でしたが、東証の要請を機に視点が大きく変わりました。目標達成に向けても目先の利益捻出にとどまらず、当社の最大の資源である『人』への投資やシステムの強化を進めてまいります。従業員とその家族、取引先、株主の皆さまなど、関わるすべての人の安心を築き『社会になくてはならない会社』となることができれば、ROEやPBRといった数値は自ずとついてくると考えています」(同氏)
昭栄薬品[3537・スタンダード]
所在地 大阪市中央区安土町1丁目5番1号船場昭栄ビル
創業 1937年12月
事業内容 化学品事業、日用品事業、土木建設資材事業








