―Reborn―
足場の50年から、業界変革へ

藤田 武敏社長
[プロフィール]ふじた・たけとし
山口県出身。証券会社の営業を経て、1993年に同社入社。住環境事業部・部長や執行役員、営業本部長、専務取締役などを歴任。2015年4月、代表取締役社長(現任)。
住宅用足場施工でトップシェアを築くダイサン。2025年4月期は売上高108億3700万円(前期比104・1%)、営業利益3億7000万円(前期比658・7%)と大幅な増益を達成した。しかし同社は、足場施工会社にとどまるつもりはない。第4次中期経営計画(2025年4月期-2029年4月期)に「Reborn」を掲げ、建設現場をソリューションする企業へと進化を図る。住宅足場で頂点に立った同社が、なぜ業界全体の課題解決へと舵を切るのか。その現在地と未来像を追う。
安全を売るという思想が収益構造を強くする
「私たちは足場を売っているのではありません。“安全”を売っている会社です」(藤田社長)
ダイサンの現在地を最も端的に示す言葉だ。売上の約66・7%を占める施工サービス事業では、約2000億円規模といわれる住宅足場市場でトップシェアを確立。しかし、その競争優位は単なる規模や価格ではない。
足場は建物ごとに設計が異なる“完全オーダーメイド”だ。敷地条件、周辺環境、作業動線が異なるため、一つとして同じ現場はない。だからこそ同社は、施工前の打ち合わせ段階から深く関わる。安全基準を満たす仕様書を作成し、計画段階からハウスメーカーと共に現場を設計する“共創”が強みだ。
「単に足場を組むだけではありません。我々が中心となってお客様と議論し、安心・安全を一緒につくり上げる “パートナー”だと自負しています。それが他社との決定的な違いです」(同氏)
その思想は設計、施工にとどまらない。ハウスメーカーの現場監督向け教育やコンサルティングも行い、安全文化そのものを支えてきた。この積み重ねが信頼となり、住宅着工数が減少する局面でも仕事量は安定。リフォーム需要の取り込みも進む。価格重視の業者へ発注が流れる時期があっても、「やはりダイサンでなければ」と戻ってくる顧客が少なくないという。
売上の約21・8%を占める海外事業も存在感を高める。シンガポールではプラント向け足場や熱絶縁工事を展開し、受注単価の高いメカニカル分野へとシフト。収益性の改善が進む。製商品販売事業やレンタル事業も拡大し、事業ポートフォリオは着実に厚みを増している。
その基盤を支えるのが人的資本への投資だ。建設足場工事は体力的負荷が高く、若手人材の確保が難しい分野とされるが、同社は30歳前後までの成長モデルを描いた研修カリキュラムを整備。さらに年間平均3・0%の継続的な賃上げを実施し、働き続けられる環境づくりを進めている。
「きつい仕事だからこそ、きちんと報いる。会社だけでなく、業界・社会を守るという気持ちでやっています」(同氏)
こうした品質志向と人材基盤の強化、そして事業ポートフォリオの多層化が重なり、大幅な収益増を達成した。“安全を売る”という思想は、理念にとどまらない。収益構造そのものを強くするエンジンとなっている。
安定の裏で芽生えた視座の転換
ビケ足場を軸に成長を重ねてきた同社は、2000年の上場後も堅調に業績を伸ばしていた。
しかし、その“安定”に対して、次第に経営陣の間で問いが生まれていく。
「地震や台風など自然災害の後には復興需要が発生し、結果的に仕事が増える局面もありました。いわば“神風”が吹くような側面です。しかし、それに支えられた成長は、本当の意味で持続的と言えるのかと考えるようになったのです」(同氏)
中期経営計画の策定を機に、現場を回りながら4〜5か月にわたって議論を重ねる中で、同社は自らの事業の存在意義を改めて見つめ直した。そこで浮かび上がったのが、足場事業の“有用性”だった。
「創業以来、何十年にもわたり現場の安全を支えてきました。しかし、その価値は社会に十分に伝わっているでしょうか。現場で奮闘する技能職の地位は、正当に評価されているでしょうか。自社だけが良くても意味はない。我々の事業の価値を高めることも、自社の成長を持続させることも、建設業界そのものが元気でなければならないと考えました」(同氏)
日本では住宅着工の減少やインフラ老朽化が進む一方、技能人材の不足は深刻さを増している。海外、とりわけシンガポールで見た建設業界の構造も、日本と共通する課題を抱えていた。業界が持続可能でなければ、自社の成長も持続しない。同社の判断軸は、自社の業績から業界全体の持続性へと広がっていく。この視座の転換こそが、現在進行中の第四次中期経営計画「Reborn」へとつながっている。
Reborn
足場から業界ソリューション
第四次中期経営計画のテーマは「組織・ビジネスモデル変革による再生」。ブラッシュアップではなく、構造を変えるチャレンジである。
その軸となるのがDXだ。ただし同社にとってDXは目的ではなく、現場課題を解決するための“武器”である。まずは内向きの基盤強化。自社でエンジニアを雇用し、人事評価システムを内製化。積算や図面作成の自動化、自動作図システムの開発など、施工サービスを支える土台についてデジタルでの再設計を進めている。さらに内部効率化に留まらず、行政届出のアプリ化や建設業の煩雑業務のDXなど、業界BPO領域へと拡張する。開発の起点は、経営者の“困りごと”。現場を知る企業だからこそ、飛び地ではない進化が可能になる。
新規事業ではレンタルがすでに成果を上げている。2年前にスタートした同事業は、自社施工で培った品質管理や礼節、いわゆる“3Kにしない”現場づくりの思想を外部へ展開するものだ。いずれの事業も自社のためではなく、顧客や業界全体の生産性向上という視点に立ったことが、立ち上がりを早めた。
人材領域も広がる。インドネシアの送り出し事業では、1か月講習と家族面談制度を設け、「家族の元に無事に帰す」という思想を徹底。想定利益率は25〜30%と高収益も見込む。外免切替支援や秋田県能代市など自治体との協働も進む。さらに海外人材の紹介を軸に、顧客層はハウスメーカーから運送・引越会社へと広がり、建設に限らない領域への展開も視野に入る。また、収益構造にも変化が現れ始めている。
「M&Aやレンタルの拡大次第で営業利益率は変わってきますが、前中計と比べると確実に進んでいます。ここから2年でどこまで上げられるか。第五次ではさらに飛躍させたいと考えています」(同氏)
足場の会社から、業界ソリューションへ。創業50年で積み上げた現場DNAを武器に、同社は次の成長エンジンを加速させる。
所在地 大阪市中央区南本町2丁目6番12号 サンマリオンタワー3階
設立 1975年4月
資本金 1億円(2025年4月20日現在)
事業内容 住宅や建築現場で使用される「ビケ足場」の開発・製造・販売・施工・レンタルを一貫して手掛ける
中計の資料は
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