市民が測る、新しい地図づくり
従来の屋内ナビゲーションは、施設内に多数のビーコンなどの機器を設置する必要があり、膨大なコストと管理の手間が普及の大きな障壁となっていた。そこでアジア航測らが導入したのが、スマートフォンに搭載されたLiDARセンサーや360度カメラを活用した、簡易的かつ効率的な三次元マッピング手法。提供されたフロアマップをベースに施設内を歩くだけで空間データを取得できることから、導入負担を抑える手法として実証を進めている。
ユニークなのは、このインフラ整備を市民参加型イベント「屋内スキャン・クエスト」として展開している点だ。
2026年5月に第1弾として広島市内で行い、専門の技術者だけが測量を担うのではなく、一般市民や学生、地域の専門家がスマートフォンを手にゲーム感覚で施設内を歩き、データを蓄積した。取得したデータは今後「オープンデータ化」する予定で、誰もが二次利用できる形で流通させることを目指している。住民を巻き込み、インクルーシブなまちづくりを進めるこの試みは、広島県のインフラデータ利活用コンテスト「DoboXデータチャレンジ2025」で銀賞を受賞するなど、社会的にも高く評価されている。
同プロジェクトは、アジア航測、視覚障がい者向けナビゲーションデバイスやアプリを開発・提供するスタートアップ「Ashirase(あしらせ)」、地域インフラに強みを持つ建設コンサルタント「復建調査設計」の3者で推進されている。2026年6月には第2弾としてJR広島駅周辺の商業施設でも実証実験を実施し、視覚障がい者や車いす利用者も計測に協力した。当事者目線を取り入れたデータ収集により、誰もが恩恵を受けられる屋内ナビゲーションの基盤が整いつつある。
オープンデータ化で自治体等へ提案
技術の進化はデータ取得だけにとどまらない。アジア航測らは現在、AIを用いた画像解析により、点字ブロックや手すり、エレベーターなどのバリアフリー設備を画像から自動抽出し、歩行者空間データとしてネットワーク化するシステムを開発中だ。
さらに、施設内の店舗改修や構造変更を検知してアラートを発信する機能の実装も予定しており、常に最新の情報を維持できる持続的なデータ循環体制を目指している。
今後は、屋内計測データのオープンデータ化も視野に入れている。また、「屋内計測人材コミュニティ(仮)」の形成を通じてデータ更新を仕組み化していく方針だ。全国の自治体への横展開に加え、大手不動産会社やデベロッパーが管理する商業施設、オフィスビルへの民間導入も推進していく。
屋内外をシームレスにつなぐ移動インフラが社会の当たり前になる日へ向け、アジア航測の挑戦は加速している。










