補聴器、聴力計測器のトップ リオン 【6823・プライム市場】

3事業のポートフォリオ経営で業績好調
「社会貢献」の視点重視し商品を開発

リオンは補聴器メーカーとして国内トップシェアを誇る。微粒子計測器、環境機器も手掛け、3本の事業を柱としたポートフォリオ経営で安定成長を持続する。特に微粒子計測器は世界の半導体製造現場で不可欠とされ、売上が急拡大している。今後は国内で補聴器、海外で微粒子計測器と環境機器を伸ばし、2031年3月期には売上高350億円以上、営業利益率15%以上を目指す。
リオン-加藤 公規

加藤 公規(かとう・こうき)

社長

1974年12月生まれ、東京都出身。97年中央大学商学部卒業、リオン入社。2018年執行役員事業支援本部副本部長兼同本部海外戦略部長。19年取締役経営企画本部長兼同本部海外推進部長。22年常務取締役経営企画本部長。25年代表取締役社長(現任)。

全事業顧客異なるポートフォリオ経営
幅広い市場に高機能製品を提供

「計測」を軸とした3事業

同社の2025年3月期業績は、売上高が前期比8・4%増の278億7700万円、営業利益は同16・1%増の40億3300万円となった。売上高・営業利益・経常利益・当期純利益すべてで過去最高を更新。4期連続増収、2期連続増益と堅調に推移する。

好調な業績の背景には、3つの事業が支えあうポートフォリオ経営がある。特に3事業の中でも急成長しているのが「微粒子計測器事業」だ。同事業は5年前のセグメント売上51億7200万円から、前期までに約2倍に伸びている。現在の全体売上に占める割合は約34%と約3分の1だが、営業利益の実に約69%と全体の3分の2以上を稼ぐ。 微粒子計測器とは、気体中や液体中の微小な粒子(チリ、ほこり、不純物など)を計測する装置のこと。同社の微粒子計測器は20ナノメートル(※1)が計測できる精度を持ち、半導体製造などの先端産業分野において大手企業を中心に信頼を得ている。
(※1:nm、1nmは100万分の1mm)

「医療機器事業」は売上の約45%を占める大黒柱だ。医療機器事業の商材は補聴器と医用検査機器の2つ。「リオネット」ブランドの補聴器は国内約2割のトップシェア。医用検査機器は、聴力検査に使用するオージオメータを製造・販売する。

3本目の柱は、売上の約21%である「環境機器事業」。騒音計や振動計、地震計などを手掛ける。

セグメント割合は売上ベースでは、微粒子計測器事業が34%、医療機器事業が45%、環境機器事業が21%なのに対して、営業利益ベースでは、同69%、27%、4%となる。医療機器事業をメインに据えながら、半導体市場向けの微粒子計測器事業で収益を高める事業構造になっている。

市場の分散で安定収益

▲︎聴力測定の様子

それぞれの事業の顧客が全く異なることで、経営リスクが分散されやすいのも特徴だ。医療機器事業のうち、補聴器は聞こえに悩みを抱える個人への販売を展開。聴力検査機器のオージオメータは主に大学病院や耳鼻咽喉科クリニックなどの医療機関に提供する。

微粒子計測器の主な販売先は、世界各国の半導体製造関連企業だ。半導体製造では、加工に使用した膜の除去や洗浄などの工程に大量の薬液や純水が必要となる。その薬液などの品質管理のために、同社の微粒子計測器が活用されている。半導体メーカーだけでなく、薬液などを納入するサプライヤーにも、同社の製品が幅広く浸透している。

一方、騒音計、振動計などの環境機器は、自治体などの行政機関や建築業などの民間企業に販売される。家電・自動車などの製造業の現場でも、製品の騒音や振動を計測するために使用される。市場や顧客の異なる3事業を並行して展開することにより、外的環境の影響を受けたとしてもリスク分散できるため、経営の安定につながっている。

25年4月にトップに就任した加藤公規社長は「それぞれの事業で顧客層は異なりますが、『正しく測る』という根本は共通しています。医療機器事業と環境機器事業は、音振動の計測技術が真ん中にあります。微粒子計測器事業は当社の中では比較的新しい事業ですが、『測定する』という意味では、ほかの事業と近いといえます」と語る。

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