“運輸”だけじゃない 生産現場を預かる仕事
鴻池運輸は社名に“運輸” が入るが、運輸の枠を超えた 幅広いビジネスを展開する。
同社の100年を超える歴史 を持つ根幹事業の一つが、工場内作業の請負だ。顧客は鉄鋼から食品、化学、アパレルなど多岐にわたる。
鴻池運輸の仕事は、図1のように顧客の工場に原料を運び入れる物流からスタ—ト。
そこから工場での生産工程を、 顧客と一体になって行う。製品の企画開発はメーカーが行 うが、鴻池連輸は量産に乗せる前段階の製造工程設計から携わり、さらに量産後の生産管理も任されている。ラインにトラブルがあれば生産停止になるため、工場機械の保守・メンテナンスも担う。保守点検業務は機械を使う業界で必ずニーズがあり、今後更に強化する構えだ。向上で完成した製品は、鴻池運輸が全国物流倉庫や店舗などに届けていく。
原材料の搬入から生産、製品として出荷まで一貫体制で、顧客が安心し任せることができるのが“運輸”を越えた同社の仕事である。
“期待を超える”
鴻池ビジネスの神髄
ポイントは、鴻池運輸が行うのは“派遣ではなく請負”であるということ。生産現場を請負ことで工程責任を負い、業務効率の改善提案まで行う。 プロセスのオペレーションを任されるため自由度が高い。 派遣の売上高は派遣人数により、10人のプロセスを9人にすると売上減になる。一方請負の売上高は生産量で、業務効率化は顧客にとっても鴻池運輸にとっても売上増となる。 ここに大きな差がある。請負だからこそ顧客の課題解決まで担い、自主性を持った改善提案ができるのだ。
例えば鉄鋼事業では、 製鉄所で全長40キロに及ぶベルトコンベアの点検を毎日する必要がある。鉄鉱石がベルトコンベアに詰まる事故を防ぐため、 今までは全て人の目でチェックしており膨大な時間と人員を要した。そこで鴻池運輸はドローンを提案。デジタルを使った点検で大幅な時間短縮、人的資源の効率化を実現した。
今でこそ多角経営の同社だが、それは創業者の鴻池忠治郎から受け継いだ“社会や顧客の困りごとを放っておけない”社風からだという。儲かる事業に手を伸ばしてきたというより、社会や顧客が困っていることを解決したり、顧客のニーズを深堀したり、なんとかならないかという問いに対して 真摯に応えてきた結果であるところが大きい。これが“期待を超える”鴻池ビジネスの神髄に繋がっている。今後も新技術やサービスを提案し、ビジネスパートナーとして顧客の勝利を力強く支え続ける。