法面・地盤改良・維持補修・ダム基礎工事 日特建設 【1929・プライム市場】

ダム基礎工事で培ったボーリングと材料圧送の技術が強み
「斜面」や「地下」のインフラ整備で安定成長

日特建設は斜面を保護し安定化させる法面工事で国内シェア1~2位を競い、また、地盤改良工事で同3位に位置する特殊土木の大手企業だ。祖業のダム基礎処理工事で培われた「ボーリング技術」と「材料を圧送する技術」を活かし実績をあげてきた。特許群を構築した工法を多数持ち、発注者のニーズや現場条件などに応じた施工を得意として、顧客数は年間1600社におよぶ。
日特建設-和田 康夫

和田 康夫(わだ・やすお)

社長

1959年1月生まれ、東京都出身。81年東海大学工学部卒業、日特建設入社。2007年執行役員、19年取締役常務執行役員、21年代表取締役社長(現任)。

発注者のニーズや現場条件に応じ施工
年間1600社の顧客に対応する

同社の年間売上はここ数年、700億円前後で推移しており、そのうち法面工事では約300億円、基礎・地盤改良工事では約250億円を売り上げており、この2事業で全体の約8割を占めている。2025年3月期実績での工事別売上構成比は、法面工事が45・8%、基礎・地盤改良工事が37・3%、補修工事が10・4%、その他が6・5%となっている。

「法面」とは、道路建設時などに切土や盛土でつくられる人工的な斜面のこと。そのままでは雨風などによって崩れてしまう恐れがあるため、斜面の表面の保護や鉄筋などの挿入によって、長期的に安定させる法面保護工事が必要になる。

基礎・地盤改良工事は地盤を強化するもので、液状化対策などの耐震補強工事、止水や土留めの補助工事、構造物や重量物の基礎をつくる工事などがある。

同社は様々な技術を組み合わせて、発注者のニーズや多様な現場条件などに応じた施工を強みとしている。顧客は、スーパーゼネコン、地場ゼネコン、電力会社、鉄道会社と幅広く、年間1600社におよぶ。施工の平均単価は3000万~4000万円と小規模のため、売上の振れ幅が小さく、安定成長を続けている。

今期は売上760億円見込む

2025年3月期連結業績は、売上高が前期比6・5%減の672億1600万円、営業利益が15・5%減の36億7900万円だった。

全体として、法面の大型工事や能登半島地震の災害復旧・復興工事などで受注が増えたものの、期首に手持ち工事が少なかったことや能登半島地震の災害復旧・復興工事の着工遅れが響き、前期より売上高は減少した。また、不採算工事の抑制により前期に比べ採算性は改善したが、売上高減少と社員給与の増加、そして、麻生フオームクリートを25年2月に子会社化した際の諸費用などにより、営業利益も減少。この状況を受け、25年3月期後半には繰り越し受注高の確保に注力。26年3月期は前期比13・1%増の売上高760億円を見込む。

時代に合った新工法を開発

同社は常に社会の課題を踏まえ、どんな技術で貢献できるかを考え、時代にマッチした新工法を生み出し続けている。

環境に優しい工法もその1つだ。「ジオファイバー工法」は、吹付のり枠工事に替わる法面保護工法。CO2排出量の多いセメントではなく、繊維と砂で構成される補強土を使用するため、吹付のり枠に比べてCO2排出量が40%削減される。さらに全面緑化が可能で、草木の生える自然な法面を形成できる。京都の国宝・清水寺でも採用されたほどだ。

老朽化した吹付法面をはつり取ることなく補修・補強する技術が「ニューレスプ工法」だ。靭性に優れた有機繊維補強モルタルを吹き付け、せん断ボルトで新旧の吹付面を一体化させる。既設吹付モルタルをはつり取らないため、産業廃棄物縮減、工期短縮、安全性の向上が図れる。

少ない切土量で道路拡幅や路肩決壊の復旧が可能なのが、親杭とコンクリートパネルを組み合わせた山留め式擁壁工事の「親杭パネル壁工法」だ。20年7月に記録的な大雨で、熊本県・球磨川流域の各所で護岸・道路擁壁が損壊した。同社は21年度から、被災した擁壁を、4㎞に渡って親杭パネル壁工法で復旧する工事に着手。早期復旧の一翼を担った。これは、近年の自然災害の激甚化に対応した工法と言える。

同社ではこれらのように様々な工法の技術に関して特許群を構築して、企業優位性を確保している。

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