設立以来、黒字経営を継続
25年3月期も過去最高売上更新見込む
京都に本社を置く同社は、「プラスチック射出成形機用取出ロボット」において、世界トップシェアを獲得している。プラスチック製造には、溶かした樹脂を金型に流し込み、固めて成形する射出成形機が用いられる。固まった成形品を型から取り出す工程は、古くは人の手で行われていたが、安全性やスピードの面から、射出成形機と対で取出ロボットの導入が早くから進んだ。同社ではこの取出ロボットを主力に、成形品取出前後の工程を自動化する特注機を販売。品目別売上高は、主力の汎用品ロボットが57%、特注機が25%、部品・保守サービス18%で構成されている。
同社は1973年の設立以来連続黒字で、安定した経営を継続している。直近の20年間で二桁減収となったのは、リーマンショックの影響があった2010年3月期のみ。この安定経営の要因には、「顧客業種の幅広さ」、「ファブライト経営」、「特注機と保守サービス」の3点が挙げられる。
プラスチックは、自動車では内装品やバンパー、エレクトロニクスではスマートフォンやパソコン、医療では使い捨て注射器など、あらゆる産業で使われている。同社の業種別売上高構成を見ると、モビリティ28%、メディカル25%、エレクトロニクス19%、雑貨8%、容器8%、家電8%、その他5%と顧客業種は幅広く分布。リスクが分散され、景気の波に強い体制となっている。
また同社では研究開発や設計、品質管理、検査、一部ロボットやカスタマイズ性の高い特注機の生産は自社で行うものの、基本的な汎用品の各パーツの製造や組立ては、主に地元・京都の製造業に依頼する「ファブライト経営」を実施。固定費を低く抑えることで、顧客の機械設備投資が低迷した時期も赤字になりにくい体質を構築している。
「進歩と安心の提供が役割」
「特注機と保守サービス」も、安定した経営体制づくりに貢献している。特注機には、成形品のストック、ゲートカット(樹脂残りの切断)、ワークインサート(金具などの部品を金型に挿入してから樹脂を充填するインサート成形及びその取出しを1台で完了させる自動化装置)、カメラ検査を行う装置などが挙げられる。顧客要望に合わせてカスタマイズするため設計に時間が掛かる分、汎用品よりも納期が長くなる。しかし納期が短いロボットとミックスで、全体として売上が安定する傾向にある。
また、国内17カ所、海外40カ所のネットワークを有しており、サービス兼営業拠点として機能。納品後には定期的な訪問による予防保全を中心に、緊急時の対応や部品提供などを行っている。サービスは安定的な売上計上にも貢献しているほか、顧客と定期的にコミュニケーションを取ることで信頼関係構築にも繋がっている。
「当社が販売しているのは、工場の自動化、省人化、より安全な工場作りを担う装置です。お客様の工場の安定稼働のための『進歩と安心』の提供が当社の役割と考えています。技術部門がマーケットに合わせて適切に製品を作り、『進歩』を提供する。顧客に対し営業部門は適切にご提案します。そしてサービス部門がメンテナンスを含めて、適切にお客様をサポートすることで、『安心』が生まれます。3つの力が連動して初めて、お客様は『YUSHINを選んでよかった』と思ってくださるのです。だからこそ当社の業績も、技術力・提案力・サポート力を合わせた『総合力』によって成り立っています」(小谷高代社長)
24年3月期業績は、売上高が前期比5・6%増の236億1500万円。積極的な人的資本投資により営業利益は同7・7%減の24億3700万円となった。25年3月期も好調に推移しており、過去最高売上高を3期連続で更新予定。売上高は前期比8%増の255億円、営業利益は同6・7%増の26億円を見込む。
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