パッケージか、内製でフルスクラッチか
迅速な経営判断で、SIerをM&A
三洋貿易は、ファインケミカル、インダストリアル・プロダクツ、サステナビリティ、ライフサイエンスの4市場に注力する商社だ。その一員であり、グループ唯一のSIerであるコスモ・コンピューティングシステムでは、グループ内システムの開発、DX化推進を担い、グループ全体のIT化に貢献している。
コスモ・コンピューティングシステムがグループ傘下に入ったのは、2022年11月のこと。「専門商社の中で先頭を走りたい」と考える三洋貿易では、変化する事業環境や顧客のデジタル化ニーズへの対応、業務スピードアップや採算性の改善といった側面から、グループ全体のIT化、特に基幹システムの開発が急務であった。
ITソリューション部 一ツ木部長(以下一ツ木) 当初、基幹システム開発にはパッケージ導入(※1)を考えていました。ただ当社の業務に合わせると、改修に時間がかかります。そこで経営陣が最適解として下した判断が、コスモ・コンピューティングシステムのM&A、そして同社によるフルスクラッチ(※2)での開発でした。当社ではITと経営陣との距離が近く、一般的な企業であれば基幹システムの開発に掛かるコストや時間について経営陣に理解していただくまでに多くの時間を要しますが、当社の場合は代表や取締役が既にその部分を理解しており判断を下すという状況でしたので、ジャッジまでのスピードが非常に早かったです。
※1 パッケージ導入:あらかじめ作られた汎用的なソフトウェア(パッケージ製品)を導入し、自社の業務に合わせた設定を行うことでシステムを利用する手法
※2 フルスクラッチ開発:既存のシステムやテンプレート、コードなどを一切使わず、要件定義から設計、実装、テストまで、すべてをゼロから独自の仕様で開発する手法
コスモ・コンピューティングシステム 小笠原社長(以下小笠原) 当社としても、三洋貿易傘下に入ればグループ唯一のSIerとしての明確な役割が用意されており、システムの内製やDXによって期待に応えることができると考えました。
DXプロジェクトで相互理解を促進
結果、基幹システム2年弱で開発完了
M&A直後から、コスモ・コンピューティングシステムでは社員とパートナーの3分の1にあたる約50名体制で基幹システムの開発を開始。開発には5年は掛かると見込んでいたが、その半分の2年弱で導入に漕ぎつけた。
一ツ木 正直なところ、最初は苦労しましたよね。はじめに仕様やデータの作り方をITソリューション部から説明して一旦作ってもらうのですが、仕様書には書ききれない細かな部分もありますので、ギャップが生まれることもありました。ただ、そこから密に打ち合わせをし、業務や仕様の説明も繰り返す中で、キャッチアップをしていただいて、途中からかなり加速度的にスピードが上がったという印象です。
小笠原 しっかりとした仕様を出していただいたことで、2年弱での開発を実現できました。細かな部分に関しては相手のことがわからなければ汲み取れない部分がありますので、両社でコミュニケーションを重ね関係性を構築できたということが大きかったですね。
両社の相互理解を促進したのが、同時並行で行ったグループ内DXプロジェクトだ。三洋貿易ではプロジェクト立ち上げ後、ITにまつわる困りごとを社員から募集。すると150もの声が集まったという。コスモ・コンピューティングシステムはわずか1年のプロジェクト期間で、そのうち約7割を実現。成功体験の積み重ねが、グループ内での同社の存在意義を高めた。
小笠原 さまざまな部署とやりとりする機会があり、当社にとってはグループのカルチャーや優先順位、技術的な部分の理解を深める良い機会となりました。基幹システムと並行して多くのプロジェクトを割り振りハンドリングするのは容易ではありませんでしたが、エンジニアが業務を通じてグループを理解したことは、基幹システムをはじめ他のシステムの開発スピードや品質の向上に好影響を与えました。
開発した基幹システムは既に三洋貿易で導入されており、今後はグループ各社にも展開予定である。基幹システム以外でも、コスモ・コンピューティングシステムではグループ全体のシステムの開発やウェブサイト制作、AIサービスの開発などを進めている。
一ツ木 グループ会社のシステムは、各社の担当が直接ベンダーとやりとりしており、品質にばらつきが出やすい状況でした。グループ全体の開発を一社が担うことで品質を担保できるようになったことも、大きなメリットと感じています。
現在では数名のエンジニアが三洋貿易本体に常駐。社員から現場の要望を聞き、各システムの要件や設計をITソリューション部とともに詰めている。そんな中、事業部からの発案で開発した「図面・品質管理システム」は他社から引き合いがあり、導入の検討中。決定すればグループ外へのITサービスの横展開の第1号となる。
社内システムの外販でシナジー創出
IT化で専門商社の中で優位性発揮
挑戦を奨励するグループの社風や考え方にコスモ・コンピューティングシステムがフィットし、基幹システム、DXプロジェクトの成果が着々と上がっている。今後も三洋貿易では着実かつ迅速にIT化を進め、業界での価値向上を図っていく。
小笠原 グループ唯一のSIerとして、次々と生まれる新技術のキャッチアップを先頭に立って行っていく考えです。あとは図面・品質管理システムの外販のように、社内用に開発したシステムの横展開も進め、シナジーをより発揮していけたらと考えます。
一ツ木 私も、社内用に開発したシステムが他社からも求められたというのは非常に良い流れだと思います。新しい技術をどんどん一緒に展開し、またスピードと同時に正確性も両立してユーザーが安心して使えるように常にアップデートしていく。そうやってグループとしての成長に繋げていきたいです。
(3176・プライム)
東京都千代田区神田錦町2-11
https://www.sanyo-trading.co.jp
コスモ・コンピューティングシステム

[会社概要]
創業:1986年11月
事業概要:大手システムインテグレーターをはじめ、
金融・保険・小売・医療関連等、さまざまな業務系システムの
ソフトウェア受託開発、システム開発・販売・運用及び関連事業
本社所在地:東京都港区港南1-6-34 品川イースト6階
従業員数:103名(パートナー会社含む稼働エンジニア数180人)
拠点:札幌開発ブランチ
(北海道札幌市北区北七条西4-1-2 KDX札幌ビル5F)
https://www.cosmocomputing.co.jp/









