船舶ビジネスを中核にグローバルニッチトップへ
「今、当社の事業を最も力強く牽引しているのが、舶用バルブを中心とした船舶関連ビジネスです。売上高の6割近くを占め、数年前は5割程度だった構成比も着実に高まってきました。船舶分野は、当社にとって名実ともに最大の主力事業になっています」(奥村社長)
オーケーエムは現在、船舶市場において確固たるポジションを築いている。とりわけ、船舶の排ガス処理設備などに用いられる舶用バルブ分野では、世界シェア約40%を有し、グローバルニッチトップの地位を確立。国内の主要造船メーカーのほぼすべてに製品を供給しているほか、韓国・中国の造船メーカーにも納入実績を持つ。
「同じ船は一つとしてありません。限られたスペースや使用条件の中で、お客様ごとに最適な仕様を提案してきた。その積み重ねが、現在のポジションを支えています」(同氏)
船舶向けバルブには、省スペース性や高い信頼性が求められる一方で、使用環境や条件は船ごとに大きく異なる。画一的な製品では対応しきれない領域において、オーケーエムは一隻一隻に向き合う姿勢を貫いてきた。それが造船メーカーからの信頼につながり、同社の舶用事業を主力へと押し上げている。
この強みを軸に、同社は2028年3月期を最終年度とする第2次中期経営計画において、売上高132億円、営業利益率10%以上、ROE8~10%という目標を掲げる。舶用分野を中心とした高付加価値領域での成長を通じ、持続的な収益力の強化を図っていく考えだ。
環境対応が加速する船舶市場と広がる事業機会
船舶市場は今、世界的に強化される環境規制を背景に大きな転換点を迎えている。国際海事機関(IMO)を中心に、バラスト水処理や排ガス規制の強化、さらには温室効果ガス(GHG)削減に向けた取り組みが段階的に進められており、船舶の設計思想そのものが変わりつつある。
「規制が厳しくなるほど、船舶に求められる設備の高度化は避けられません。結果として、バルブの役割や要求水準も確実に上がっています」(同氏)
とりわけ排ガス規制の強化は、船舶の設計や設備構成に直接的な影響を及ぼした。限られたスペースの中で確実に機能すること、過酷な条件下でも安定した性能を維持することなど、こうした要件を満たす機器へのニーズは、引き続き高水準で推移している。
また、世界的に新造船の需要が増加しており、造船市場そのものも回復基調だ。環境対応と需要回復が同時に進む中で、船舶向けバルブを主力とする企業にとって、市場は明確な追い風となっている。
さらに中長期の視点では、船舶燃料の転換も重要なトレンドの一つだ。重油に代わり、天然ガス(LNG)を燃料とする船舶の導入が進むほか、将来的にはアンモニアや水素など、新たな燃料の活用も視野に入っている。燃料が変われば、船内で扱う流体や設備構成も変化し、それに対応する流体制御技術の重要性は一層高まる。
環境規制の強化、船舶需要の回復、燃料転換という構造的な変化が重なり合う中で、船舶における流体制御の役割は、確実に存在感を増している。
検証体制を基盤とした「共創」型ものづくり
オーケーエムの舶用分野における強みは、顧客の多様なニーズに応えるカスタマイズ力にある。セミオーダー的な製品対応が、同社の評価の礎となってきた。
「造船は、量産型ではありません。船舶は一隻ごとに構造や流体条件が異なります。それこそタンカーなら、流体そのものが酸性だったり、アルカリ性だったりするので、材質の対応も必須です」(奥村社長)
この柔軟性を支えているのが、自社での検証体制だ。顧客が扱う流体や環境を可能な限り再現し、漏れや耐久性のテストを自社ラボで実施。排ガス用バルブでは、高温ガス設備を用いた試験も行い、実際の使用条件に近い環境で性能を確認している。この「現場を想定した検証」によって、製品への信頼が積み重なってきた。
こうした信頼の蓄積を背景に、近年では設計段階から顧客と密に関わる「共創」のスタイルへと進化している。完成品を提案するだけでなく、開発中のプラントや設備構想に参加し、設計部隊と連携して最適な流体制御の形を描く。展示会でも完成品ではなく開発中のコンセプトを提示し、顧客との接点を増やす取り組みが進められている。
ニッチに徹し変化を積み重ねる成長戦略
オーケーエムが描く成長の軸は、極めて明快だ。船舶という専門性の高い分野において、流体制御という不可欠な領域を担い、環境変化に応じて着実に事業を積み上げていく。
その姿勢は、短期的なブームに依存するものではない。
燃料転換や環境規制の進展により、船舶に求められる設備や仕様は今後も変化を続ける。そのたびに、新たな流体や使用条件に対応する技術が必要となり、同社の事業機会は広がっていく。ニッチであっても、変化が続く限り、仕事は積み重なっていく構造だ。
舶用分野で磨いてきた技術と信頼を土台に、オーケーエムは自らのペースで成長曲線を描いていく。











