「既存事業の深化」と
「グローバル展開の加速」中核に
新中期計画で掲げた2027年度の主要目標は、売上高620億円、営業利益率10%、ROE(自己資本利益率)11%、EPS(1株当たり利益)132円と意欲的な内容となっている。売上高544億円、営業利益率10・7%となった2024年度実績からの段階的な成長を見据え、利益水準を維持しながら事業規模を拡大する構えだ。
計画の中核には「既存事業の深化」と「グローバル展開の加速」を据えた。主力であるコンプレッサ・真空機器・塗装機器の3分野に経営資源を集中し、製品・技術力を強化するとともに、塗装設備においてはその収益性を高めていく。また、海外販売拠点の機能拡充や現地最適化を進め、特に欧州・米州市場においては、高付加価値製品の需要取り込みを重視し、地域別に最適なマーケティング・供給体制を構築する方針だ。
一方、事業領域の拡張を図るため、M&Aにも積極的に取り組む姿勢を明示した。技術・製品の補完や地域網の拡大を目的とした戦略的な投資により、既存の延長線上にとどまらない〝第三の軸〟の創出を目指す。すでに国内外において情報収集や候補検討が進んでおり、2027年度までに複数の成果が期待されている。
製品開発力の強化にも注目が集まる。2025年夏には神奈川県の本社敷地内に新たな試作棟の開設を予定し、開発から製造、評価に至る一貫した体制を整える。これにより開発スピードと製品の完成度を高め、競争力ある製品投入を加速させる。また、IoTやクラウドを活用した製品のデジタル化も進めており、遠隔モニタリングや予防保全といったサービス提供型ビジネスへの転換を進めていく。
「企業文化・人材の変革」
基礎固めを重用視
今回の中期計画は、経済的な成長だけでなく、「企業文化・人材の変革」にも重点を置いている点が特徴だ。
100周年という節目を迎えるにあたり、社員一人ひとりが経営ビジョンを共有し、自らの行動を変えていくインターナルブランディング活動を全社で推進。若手人材の登用、グローバル共通の人事制度整備、DX推進チームの編成など、組織の柔軟性と多様性を高める改革を進めていく。
資本政策の面でも、株主還元と成長投資の両立を打ち出した。配当性向やEPSだけでなく、DOE(株主資本配当率)を重視し、安定的な配当と機動的な自社株買いを組み合わせた還元策を展開。内部留保は、M&Aや開発棟への投資、ERPなどのIT基盤整備に活用することで、中長期的な企業価値の向上を目指す。
このように、第一次中期経営計画は、「既存の強みの深化」「成長領域への挑戦」「人と組織の進化」を三位一体で推し進める構成となっている。短期的な業績拡大を狙うだけではなく、10年後の目標達成に向けた基礎固めを重要視している。
アネスト岩田は、100周年を“通過点”と位置づけ、さらなる飛躍へ向けた戦略的な3年間が、いままさにスタートしている。
未来を見据えた 第二創業期へ向けて
2026年、アネスト岩田は創業100周年を迎えます。これまでの99年間、 私たちは社是である「誠心」を原点に、技術の進化を追求し、お客様の信頼に支えられながら歩んでまいりました。
空気圧縮機と塗装機器を中心とした製品を通じて、豊かな社会の実現への貢献に取り組んできたことは、私たちの誇りです。 しかし、私たちは現状に満足して立ち止まることはありません。次の100年に向け、これまで培ってきた技術を圧縮し、さらに高い価値へと昇華させ、未来へと放出することで新たな成長につなげていきます。
そして、この中期経営計 画期間を「第二創業期」と位置づけ、大胆な変革へと踏み出します。
(6381・プライム)
会社概要
同社の現在の事業セグメントは、液体を扱う「コーティング事業」と気体を扱う「エアエナジー事業」
「コーティング事業」は、塗料を主とした液体を霧にする技術を核として、「塗装機器事業」と「塗装設備事業」に分かれる。主力製品のハンドスプレーガンは、世界トップレベルの霧化技術を誇り、70%以上の国内トップシェア、世界シェア2位の実績(自社調べ)を持つ。
一方「エアエナジー事業」は、「圧縮機事業」と「真空機器事業」に分かれる。「圧縮機事業」では、世界で初めて空冷式小形オイルフリースクロール圧縮機を開発するなど小形圧縮機の製品シェアは、国内第2位(自社調べ)。「真空機器事業」では、世界で初めて潤滑油を使用しない空冷式オイルフリースクロール真空ポンプを開発。国内シェアは50%以上(排気速度600L/分未満)、海外売上比率は約50%。
所在地
〒223-8501神奈川県横浜市港北区新吉田町3176番地