ラクターゼとディスパーゼが主力
酵素医薬品事業の起源は、同社が八戸で展開していた日本酒製造にある。1970年に酵素医薬品事業を開始し、発酵技術を応用して付加価値の高い製品を生み出すことを理念としてきた。以来50年以上にわたり、発酵を核にした事業を拡大してきた。
現在では酵素分野で約10品目を展開しており、主力製品は乳糖分解酵素「ラクターゼ」と、再生医療分野で活用される「ディスパーゼ」だ。
「ラクターゼ」は乳糖を分解し、「お腹がゴロゴロしない牛乳」や、乳糖を分解して自然な甘みを付与する食品用途に使われる。健康意識が高い欧米市場を中心に「ラクトースフリー製品」への需要が拡大。ラクターゼは同社酵素医薬品事業売上の中心であり、輸出先は欧米が大半を占める。
一方の「ディスパーゼ」は、皮膚の再生など再生医療用途で活用され、こちらも海外売上が主体となっている。
医薬品分野では体外診断用医薬品、特に大腸がんスクリーニングに用いる診断薬が柱だ。かつてはジェネリック医薬品の原薬も扱っていたが、現在は診断薬と酵素製品に集中している。
発酵受託事業の成長
同事業のもう一つの柱となっているのが、発酵受託事業だ。
同社は食品・飲料メーカーを中心に、自社工場の発酵設備と精製技術を活用して受託生産を行ってきた。もともとは工場稼働率を高めるために始まったが、現在では大型案件も増加し、工場は高稼働の状態が続いている。同社の技術が高く評価され、依頼も増加の一途だ。
設備投資と研究開発
同社は今後の成長戦略として、売上の約10%の研究開発費を継続投資し、ラクターゼに次ぐ主力製品を育成していく考えだ。
また、原材料やエネルギーコストの上昇を価格に反映させるとともに、製造の最適化と省力化を進め、安定的な収益基盤を築く方針。
将来展望
同社では今後、酵素医薬品の事業規模を100億円規模に拡大するとともに、営業利益率30%を目指していきたいという。その中心には、海外需要が拡大するラクターゼの供給強化と、「ポストラクターゼ」の開発によるポートフォリオの多様化がある。特に欧米市場を主戦場としつつ、中国などアジア市場の動向も見極めていく構えだ。
発酵技術を起点に育ってきたオエノンホールディングスの酵素医薬品事業は、すでに世界市場で確固たる立ち位置を築きつつある。しかしその歩みは、ラクターゼ依存からの脱却と、次世代製品開発という新たな挑戦の途上にある。八戸の酒造りから始まった発酵の知恵が、次の半世紀にどのような医薬・食品の未来を切り拓くのか、注目が集まる。












