Q:三浦工業が大切にされているお客様との「つながり」と業容の変化についてお聞かせください。
米田 お客様の事業分野は業種こそ多岐にわたりますが、その多くは「工場」を中心とした生産活動を担う企業の皆様です。当社は1959年の設立以来、ボイラの製造・販売を出発点とし、食品機械や舶用機器、近年ではコンプレッサーや水処理機器へと製品群を拡大しながら、お客様の生産現場を支える事業領域を広げてきました。
設立当初は製品そのものの提供が中心で、修理などのアフターサービスは無償で対応していました。しかし、創業者の三浦保が米国を視察した際、有償メンテナンス制度の意義を学んだことを契機に、1969年に有料メンテナンス点検制度(ZM契約)、1972年には有償保守管理制度(ZMP契約)を導入いたしました。これにより、当社は「お客様の設備を止めないこと」を最優先する姿勢を明確にし、故障やトラブルの予防に重点を置いた「ビフォアメンテナンス」を基軸に、設備の安定稼働と生産性向上に寄与するパートナーとしてのビジネスモデルを確立してまいりました。
当社の製品は長期にわたりお使いいただくものであるため、納入後も安定した稼働を支え続けることこそが、当社にとって最大の価値提供であると考えています。
Q:2024年度の売上収益営業利益率が10%を上回るなど、三浦工業の高い収益性を支えるものは何でしょうか。
米田 当社の収益構造を支えているのは、利益の過半を構成しているメンテナンス事業です。ボイラのような工場向けの製品は大量生産品とは異なり、何百万台と出荷されるものではありません。そのため安定的に収益を確保する仕組みとして、ストック型ビジネスであるメンテナンスサービスが重要な役割を果たしています。
加えて、IoTの活用をはじめとする業務効率化にも積極的に取り組んでいます。例えば従来はフィールドエンジニアが1日にいくつもの工場を訪問していましたが、現在は、1工場でボイラのみならず食品機械や水処理機器など複数の設備をワンストップでメンテナンスすることが増えています。そうなると1工場での滞在時間が増え、移動時間が削減されて生産性が上がることになります。
Q:米田CEO兼CTOが描く、三浦工業の未来はどのような姿でしょうか。
米田 中期経営計画2025─2027(以下、中期経営計画)で掲げているとおり、国内市場においては「トータルソリューションの深化」を通じて工場全体を安心してお任せいただける存在となることを目指しています。具体的には、ユーティリティにとどまらずプロセス(生産)領域や排水処理分野などさまざまな領域に挑戦するほか、「まるごとメンテナンスサービス」として、当社製品に加え当社以外の製品や設備の保守・点検・修理にも領域を拡大していきます。
実際に、お客様の要望を受けて競合メーカーのボイラを当社がメンテナンスしたり、メンテナンス部門を持たない機器メーカーから依頼を受けたりする事例が既にあります。こうした取り組みをさらに広げることで、工場全体の安定稼働や省エネ化を支えるパートナーとしての地位を確立していきたいと考えています。
Q:中期経営計画の国内事業戦略における各事業については、どのような戦略・施策で進めていくのでしょうか。
米田 当社の事業のうちアクア事業は、特に成長余地の大きい分野です。水処理市場はボイラ市場を大きく上回る規模があり、今後の重要な成長ドライバーと位置付けています。
もともとアクア事業はボイラの水処理からスタートし、お客様から相談をいただく中で純水などへ領域を拡大してきました。中期経営計画では超純水領域での需要拡大を掲げており、具体的には半導体および医薬用精製水に注力しています。これらは加熱殺菌や冷却といった熱の制御が不可欠であり、熱技術に強みを持つ当社ならではの付加価値が発揮できると考えています。
排水処理分野については、工場ごとに特性が異なるため難易度が高く、これまで未参入でした。しかし、工場全体のトータルソリューションを提供する上で不可欠な領域であることから、新たに挑戦を開始しました。近年、排水処理現場では人手不足や熟練技術者の高齢化、属人的作業といった課題が顕在化しているため、当社はIoTセンサーを活用した水質モニタリングにより、省エネ・省人化に取り組んでいます。設計・施工・運転管理を一体化した水処理トータルソリューションを提供できる体制の強化も予定しています。今後は、買収や協業を通じて、地域ごとにパートナーシップを拡大しながら、排水処理分野への事業領域を広げていきます。
食品機械事業やメディカル事業では、工場現場におけるサービス領域の拡充が戦略として挙げられます。例えば食品工場では、排水処理、チラーなどの冷熱設備、資本業務提携先であるダイキン工業との協業による空調ソリューション、さらには作業環境改善に至るまで、幅広いサービスを提供できる体制を構築しています。
加えて、人手不足や効率化ニーズの高まりに伴い、今後はロボット化、自動調理、自動搬送などの省人化・自動化システムの需要拡大が見込まれています。当社グループのミラボット株式会社では、防水仕様など食品工場特有のニーズに対応した自動搬送装置を開発しており、この分野での競争力を高めてまいります。
Q:中期経営計画期間における株主還元の基本方針についてお聞かせください。
米田 2024年度に実施した大型買収に伴い、自己資本比率は46・4%まで低下いたしました。R&Iによる格付けは「A」を維持しておりますが、財務の健全性という観点からは借入金の返済を着実に進めていくことが重要です。
その一方で、株主の皆様が最も期待されていることは、当社の持続的な成長であると考えています。したがって、今後も企業価値向上に資する成長投資を最優先としつつ、株主還元については従来と同様に配当性向30%前後を目安とした安定的な配当を継続する方針です。
株主・投資家の皆様をはじめ、当社を支えてくださるすべてのステークホルダーの皆様のご期待に応えるべく、成長投資と財務健全性、株主還元のバランスを適切に図りながら、今後も持続的な成長と中長期的な企業価値向上に努めてまいります。
三浦工業(6005・P)
創業 1959年5月
資本金 95億4400万円
事業概要
小型貫流ボイラ・舶用補助ボイラ・排ガス(廃熱)ボイラ・水処理機器・食品機器・滅菌器・薬品等の製造販売、メンテナンス、環境計量証明業 等
東京本社 東京都港区高輪2-15-35
松山本社 愛媛県松山市堀江町7番地
従業員数 単独3,364名、連結7,729名(正社員・準社員のみ)
※2025年3月31日現在










