西華産業 【8061・プライム市場】

事業も人も育てる経営へ
~西華産業が挑む人事改革~

三菱系機械総合商社として、産業機械やエネルギー分野を中心に事業を展開する西華産業。事業環境が変化する中で、同社は「人」の在り方を経営の重要テーマとして捉え直してきた。2023年に発表した中期経営計画では、「人事戦略」を成長の中核に位置づけ、「多様な個性が活躍し、すべての社員が働き甲斐を持てる人事制度」の導入を掲げた。教育・研修予算を従来の2倍に拡充し、2024年には新人事制度へ移行。着実に改革を進めた結果、新入社員の離職者はここ3年間ゼロ、全社の離職率も3%台を維持している。今回の刷新は、単なる働き方改革ではない。事業と人を同時に育てるための組織改革だ。

人事戦略転換の出発点

▲西華産業の事業内容

中期経営計画の策定を機に、西華産業の経営における「人材」の位置づけは大きく変わった。事業ポートフォリオの再構築や営業戦略の高度化と並び、人事戦略を中核施策の一つとして位置づけたのは、商社としての競争力の源泉が「人」にあるという認識に至ったからだ。

中計では、数値目標をこれまで以上に高く掲げた。その実現に向けて事業領域の拡大や付加価値の創出を進めるには、個々の営業力だけでなく、多様な人材が組織として力を発揮できる状態をつくることが不可欠になる。経営陣の間で、「人材をコストとして捉えるのではなく、投資すべき資産・資本として最大化していく」という考え方が共有されたことが、今回の人事戦略転換の出発点だった。

背景には、事業構造の変化もある。子会社の収益力向上や事業ポートフォリオの広がりにより、単体の成果よりも、組織としての総合力が業績に直結する局面が増えてきたためだ。

新人事制度を軸に、採用・育成・エンゲージメントを一体で見直し、社員一人ひとりが力を発揮できる環境づくりに踏み出した。制度の刷新はゴールではなく、あくまで手段。人を育て、事業を育てるという好循環を生み出すことが、西華産業の人事戦略の根底にある考え方だ。

年功序列を廃し、対話で育てる
新人事制度の核心

西華産業の人事戦略転換を象徴するのが、新人事制度の導入だ。年功序列を廃し、役割等級制度へと舵を切った。年齢や在年数ではなく、担う役割と期待される成果を軸に評価する仕組みである。

狙いは単なる若手抜擢ではない。役割を明確に定義し、成長の機会を前倒しで提供することで、社員一人ひとりの可能性を引き出すことにある。役割を果たせるのであれば年次に関係なくポジションを任せ、そのために必要な能力開発も含めて組織として支えるという考え方だ。

役割等級制度は、役割と期待値を明確にすることで初めて機能するため、同社は対話の質を重視。役割ごとのミッションや目標、指標を細かく言語化した上で、上司によるフィードバック面談や人事部による個別面談を徹底。評価を「つけて終わり」にせず、納得感と次の成長につなげることを重視している。

一見すると手間のかかる取り組みにも映るが、社員一人ひとりと向き合う姿勢こそが制度を機能させると考えた。制度を回すために対話があるのではなく、対話を通じて人を理解し、制度を機能させる。そこに経営陣の覚悟がにじむ。

こうした姿勢は、組織風土にも波及している。その一つが「さんづけ」で呼び合う取り組みだ。経営層が率先して実践し、社長自身も役職ではなく「さん」で呼ばれる。年次や立場ではなく、仕事に向き合う姿勢へのリスペクトを大切にする文化が、徐々に根づいてきた。制度、対話、風土改革。これらを一体で進めてきた結果、新入社員の離職ゼロが3年続き、全体の離職率も3%台にまで低下。数値は結果にすぎないが、人を「管理」するのではなく「育てる」ことに軸足を移した人事戦略が、着実に組織の変化として表れ始めている。


櫻井社長は、社員に対して「威風堂々とした一流企業を目指そう」と繰り返し呼びかけているという。それは規模の拡大だけを意味するものではない。社員一人ひとりが働き甲斐を感じ、力を発揮できる組織として、大手総合商社に次ぐポジションを目指すという意思表示だ。

その実現に向けて不可欠なのが、人材育成への本気の投資であり、人的資本経営の強化である。人事制度を刷新しなければ、その姿にはたどり着けない─。そうした覚悟のもとで進められている変革こそが、今の西華産業の人事戦略だ。

西華産業(8061・P)

本社所在地 東京都千代田区
代表者 櫻井昭彦
設立 1947年
資本金 67億2800万円
従業員数 連結1,077名(2025年3月31日現在)
事業内容
各種プラント、機械装置・機器類、環境保全設備、電子情報システム機器類の販売および輸出入

https://seika.com

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