自動車業界中心に幅広い分野で
イノベーションを支える
安心・安全に貢献する火薬の技術
「モビリティ&イメージング事業」は、自動車分野の進化とともに拡大する“安全”と“視覚”に関わる素材ニーズに応える戦略的事業群だ。中でも、「セイフティシステムズ事業」と「ポラテクノ事業」は、同社が長年培ってきた火薬・化学・光学分野の技術を融合させた中核領域であり、それぞれが独自の強みでグローバル市場から高い信頼を獲得している。
「セイフティシステムズ事業」は、自動車のエアバッグに搭載されるインフレータ(ガス発生装置)や、シートベルトプリテンショナー用のマイクロガスジェネレーターを開発・製造する分野。
火薬事業にルーツを持つ同社ならではの、精密かつ安定した“点火・爆発制御技術”が中核にあり、事故の瞬間に確実に作動する製品の性能は、自動車の乗員保護において重要度は高い。特に、ステアリングやサイド用といった各種インフレータは、高出力かつコンパクト設計が求められ、厳しい温度・湿度条件下でも安定的に機能する信頼性が必要とされている。
同社の製品は、欧州のプレミアムブランドからアジアの量産車メーカーまで、幅広い完成車に採用されており、北米・欧州・アジアに構築された一貫生産体制によって、グローバルな安定供給を実現している。
進化するイメージングデバイスを支える光制御の技術
一方、「ポラテクノ事業」は、車載ディスプレイ用の染料系偏光板や、X線分析装置用の部材(X線を発生させる部材や検出器)などを展開。
特に注目されるのが、高耐久を特徴とする染料系偏光板の新しい用途である車載HUD(ヘッドアップディスプレイ)遮光板だ。偏光機能を持つ遮光板は、HUDの表示輝度を下げることなく、HUD投影部に入射する直射日光のエネルギーを効率的にカットして、デバイスの熱劣化を著しく抑制できる。近年では、HUD表示領域の拡大にともない、日光の入射する開口部が大型化する傾向にあり、効率的に熱を遮断するHUD遮光板のニーズがますます高まっている。
同社の偏光板は、堅牢性に富み、二色性染料の高い合成技術と、染色・延伸・貼り合わせ等のフィルム加工の技術が融合して生まれた。顧客ごとのニーズに応じたカスタム設計力や、安定した生産体制も評価されており、車へのHUD搭載に積極的な中国や、HUD搭載が安全基準への対応として評価される欧州等の市場をターゲットに拡大を目指している。
これら2事業は、いずれも「見えない領域に価値を見出す」すきま発想に根差した取り組みだ。事故時の一瞬の安全確保から、走行中の確実な視認性まで、人とモビリティの接点に不可欠な“守る”と“見る”を高機能素材で支えるこの分野は、まさに日本化薬の技術と発想力を象徴する成長エンジンとなっている。