100円ショップ大手 セリア 【2782・スタンダード市場】

「誰もが働きやすい環境」をシステム化で実現
女性管理職比率が右肩上がり、24年度52%に

100円ショップ「Seria」を2000店以上展開するセリアの女性管理職比率がぐんぐんと伸びている。政府目標30%以上に対し、2024年度は52%と大幅にクリア。07年時点では同比率が0%だった同社だが、この変化の背景には業務のシステム化による「誰もが働きやすい環境」の整備と、人事制度改変によるパートからの積極的な社員登用がある。
セリア-河合 映治

河合 映治(かわい・えいじ)

社長

1967年9月生まれ、岐阜県出身。同志社大学卒業後、90年大垣共立銀行入行。2003年セリア入社。同年常務取締役、05年経営企画室長。14年代表取締役社長就任(現任)。

POSデータ活用で目標や在庫を管理
店舗運営に集中できる環境を構築

同社では従業員数565名のうち約75%が女性である。また、パートタイマー2万6000名以上のうち90%以上、4~5店舗を統括する「エリア店長」430名のうち80%以上、エリア店長のサポート役として約50店舗を担当する「エリアサポートマネージャー」46名のうち70%以上を女性が占めている。

エリアサポートマネージャー以上にあたる女性管理職の比率は、07年に0%だったが、08年3%、14年16%、18年43%と推移し、23年には50%を突破。24年は52・8%となった。この変化について、河合映治社長はこう話す。

「女性にとって働きやすい職場を意識したというよりも、『誰もが働きやすい環境』をつくってきたことが現状に結び付いています。最大の要因は、業務の徹底的なシステム化です。04年にリアルタイムPOS(販売時点情報管理)システム、06年にPOSデータを活用した発注支援システムを導入しました。デジタルな分析や管理は会社が責任を負い、現場では接客や商品陳列、清掃、スタッフ管理など、アナログな仕事に集中できるようになった。『自分が店長だったら、そういう形がよいな』と思ったのです」

同社ではPOSが集計した売れ筋や在庫の情報をもとに、店舗条件や季節要因・物流網などを勘案して、アルゴリズムが店ごとの発注商品や数量を自動抽出。現場ではタブレットから「発注」ボタンを押すだけで発注作業が完結する。 店ごとの売上目標なども、アルゴリズムをもとにシステムが自動で設定。近隣に競合他社が出店した際には、インターネット上から出店情報をシステムが抽出し、経緯度などから自社店舗の影響を予測した上で目標数値に自動反映する仕組みだ。

「発注支援システムを入れた当初、一部からは『責任や自由度がなくなった』という声もありました。その一方で、『責任から解放されて、仕事がしやすくなった』『自信を持って店舗運営に専念できる』という現場からの声が非常に多かった。当社では店舗管理をしっかりやってもらった上で売上目標が未達であった場合、店舗ではなく、システムのアルゴリズムがそもそも正しかったかどうかを疑うのです」(同氏)

全国に2000店以上ある店舗のクオリティを高水準で保つため、同社では徹底したシステム化を進めてきた。日々の業務において、出社した際にその日のタスクがPC上に表示される。本部やエリア店長、エリアサポートマネージャーは、店舗の売上やタスクの消化状況、陳列スピードや人手の過不足などをリアルタイムでモニタリングし、状況把握や評価を行える仕組みとなっている。

また採用などの事務手続きについては、「面接日を設定」「採否を入力」「採用者情報を登録」といったシステムからの指示に従ってタスクを消化できるようになっており、通常外業務にかかる時間や手間を極力減らす工夫がなされている。

ほかにも、同社では店舗ごとの教育水準の格差是正及び人間関係のストレス軽減を目的に、全従業員へ業務全てを網羅したポケットサイズのマニュアルを配布。

また効率化や混雑予防のため、業界に先駆けてセルフレジ設置に取り組んできた。配置を許可されているテナントでは100%導入済だ。

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