最適素材安定供給する“コーディネーター”
商社としての高い専門性と知見が強み
「TATRAS」は23店舗
繊維専門の老舗商社のヤギは、マテリアル事業、ライフスタイル事業、アパレル事業、ブランド・リテール事業と4つの事業を展開し、多角化を進めている。祖業のマテリアル事業は売上高比率26・9%を占める。
原料と生地の調達と供給で領域を拡げ、現在は国内外にある拠点で素材全般の開発も手掛ける。衣料やインテリア、生活資材、自動車関連など、顧客は世界20カ国以上に及び、最適な素材を安定的に供給する“素材のコーディネーター”の役割を担う。
素材に精通した高い専門性と幅広い知見は、ほかの3事業でも活きている。現在、同社の主力事業となっているのが売上の51%を占めるアパレル事業だ。アパレル企業などに向けて、企画提案型のOEM・ODMを行い、メンズ・レディース・キッズ衣料や、ユニフォーム・スポーツ・アウトドアウェアを供給。グローバルな生産ネットワークと販売までの一貫した取引体制が特長で、顧客は継続して安定的な供給を享受できる。
「ブランド・リテール事業の売上高比率は3番手となる12・5%ですが、今後の伸びを期待しています。当社の全事業経常利益率は4・5%の中で、ブランド・リテール事業だけでみると9・7%と高く、売上高も前期比14%増と伸びているからです」(八木隆夫社長)
「NIKEストア」も運営
代表的なブランドは3つ。グループ会社のWEAVAが運営する日本とイタリアにルーツを持つブランド「TATRAS」、メンズブランド「ATTACHMENT」と、韓国のスポーツアパレル企業「WINWIN SPORTS」との合弁会社WINWIN YJVが運営する「NIKE(ナイキ)ストア」だ。これらの厳選したブランドに同社が扱う素材・デザイン性などを掛け合わせ、付加価値の高い商品を各ブランドで展開している。現在、「TATRAS」はミラノ店を含め23店舗、「ATTACHMENT」は国内に4店舗、NIKEストアは国内12店舗を構える(2025年10月末時点)。
そのほか、売上高比率8・6%を占めるライフスタイル事業ではタオルや化粧品商材などの生活用品から、不織布や機能性素材原料などの産業資材分野まで取り扱う。
25年3月期の売上高は前期比0・6%増の833億7600万円、営業利益は同12・3%増の35億7200万円、ROEは6・3%だった。マテリアル事業、ライフスタイル事業、アパレル事業が利益に貢献しており、売上高は2期ぶりの増収、利益は3期連続で拡大している。
同社の強みは何と言ってもその事業領域が幅広いことだ。繊維商社としてアパレル業界の“川上”である「原料・生地」に携わりながら、“川中”にあたる「アパレル製品」、“川下”の「店舗」までを網羅している。
「総合商社で多領域に展開されている企業は多数ありますが、当社のように繊維専門商社の括りで、糸や生地からアパレルや生活雑貨、ブランド・リテールまでを手掛けているところはなかなかない。数字的にも各事業のバランスがとれてきましたから、そこは良かったと思っています」(同氏)
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