─最初に貴社の事業概要について、簡単に説明をお願いします。
当社では、倉庫保管・荷役をはじめ、仕分け・梱包・検品などの物流加工、運輸、通関から航空・海上輸送手配や輸出梱包など、BtoB物流をワンストップで提供しています。お客様は2000社以上で、メーカーや商社の原料や素材の取扱いが中心です。近畿、関東、東海、北陸、中四国・九州エリアを中心に、全国で9つの部支店(26営業所)・海外1拠点の独自ネットワークを確立しています。
─2024年度単体では過去最高売上高を更新した前期に比べて増収増益予想ではあるものの、24年5月、貴社では今年度を最終年度とする第7次中期経営計画の業績目標数値修正を発表しました。その背景は何でしょうか。
中計目標は当初の売上高290億円から275億円(5・2%減)へ、営業利益は244億円から205億円(16%減)へ下方修正となっています。人件費や燃料価格の高止まりによるコスト増加、円安、中国経済の影響など、7次中計策定当時の21年度からは状況の変化がありました。それらの影響を受け、物流業界全体の荷動きが伸び悩む状況が続いており、現状では国際貨物の輸出の取り扱いが減少しています。しかし、今期からは継続的に取り組んできた値上げの効果が出ており、入庫高の増加、22年にM&Aをしたテスパックとのシナジー効果など、回復の兆しも見えてきました。中計の目標数値を下げた分は目標ではなく必達数値として、さまざまな施策に取り組んでいるところです。
─7次中計進行中での社長交代は、来期発表されるであろう8次中計に向けて、新しい布陣でいち早くスタートを切れる利点がありますね。
現在プロジェクトチームを立ち上げて、8次中計を策定中です。7次はプライム市場残留を意識した内容でしたが、22年度には上場維持基準を全て充たすことができましたので、現在はより一層資本コストや株価を意識した経営に取り組んでおります。PLに加えて、BS重視の経営による企業価値向上が重要という認識です。8次では収益拡大のための営業戦略や資本投資について、より明確にしなければならないと考えています。
─谷奥社長から見た、貴社の強みはどのような点がありますか。
当社には自社のアセット、他業種のお客様にサービスを長年提供してきたことによるノウハウ、自社と協力会社による全国ネットワークがあります。そしてその3つがあるからこそ、お客様の収益性やビジネス効率を改善するためのソリューション提案が可能です。BtoBの一貫物流はいわばメーカーや商社のビジネスプロセスのアウトソーシングとなるサービスであり、ハード・オペレーション・ネットワーク全てが揃っていなければ提案できません。
─ 一貫物流の提供例について教えてください。
ほんの一例ですが、仕入れた素材をコンテナに詰め替えて在庫管理し、お客様のサイロへ投入するまでを担当します。このほか、お客様の物流センター立ち上げをサポート。稼働後は荷役や事務・配送の請け負いや、海外原料品の現地船積みから国内納品まで一元管理したりなど、実にさまざまです。お客様のニーズに合わせ、多様な物流工程を組み合わせたソリューションを提案しております。
─貴社は営業利益率8%と、物流業界でもトップ10に入る利益率を計上しています。その背景にも一貫物流があるのでしょうか。
一貫物流で提供するサービスの中には、流通加工や梱包など、当社独自のノウハウ提供や付加価値の高いサービスも織り込まれています。これらの付加価値の高いサービスは利益率が高いサービスでもありますので、利益率向上に貢献しています。また当社は歴史が長いからこそ償却が進んでいる倉庫も多く、倉庫事業の利益率も高いです。ただその状況に甘んじれば成長が止まってしまいますので、未来への投資を積極的に行っているところです。
─22年にはテスパックのM&Aにより国際貨物梱包を強化。23年には滋賀県に環境負荷や2024年問題に対応した大津倉庫を開設しています。今後の予定もあわせて投資について聞かせてください。
大津倉庫は今後の当社の在り方を示す意思表示として、太陽光発電設備やLED照明を導入し、ドライバー向け宿泊施設なども設けたサステナブルな倉庫にしました。本格稼働から数カ月経ち、稼働状況もようやく軌道に乗ってきたところです。今後も短期的な稼働率向上を追うのではなく、長期的な視点で他のソリューションと掛け合わせて収益性を高めていきたいと考えております。また今後も設備投資を積極的に行い、ネットワークの強化を図る計画です。25年5月には愛知県西部に新倉庫を着工予定で、約5500坪の土地を取得しました。九州地区の拠点機能充実も進めており、更なる営業エリア拡大を図ります。設備投資だけではなく人的投資も積極的に行っていますし、M&Aも当然営業戦略の中に入っております。