100年企業へ向けて創業70年から未来へのロードマップ アジア航測 【9233・スタンダード市場】

防災・環境・社会基盤の「空間情報コンサルタント」
最先端の計測技術やAIによる解析技術生かす

航空測量のリーディングカンパニーであるアジア航測(畠山仁社長)が、今年創立70周年を迎えた。同社は現在、最先端の計測技術やAIを活用した解析技術を活かし、防災や環境、社会基盤等における「空間情報コンサルタント事業」を展開している。「技術のアジア」と呼ばれるように同社では、設備投資と先進技術開発に年間数十億円規模で投資しており、更なる成長を見据えている。

「社会インフラマネジメント」
「国土保全コンサルタント」

同社は、航空測量分野の大手に位置付けられ、事業規模ではパスコ・国際航業に続き第3位に位置する。祖業の航空写真測量からスタートした同社は近年、森林の資源量を測る航空レーザ計測分野などにも注力している。また洋上風力など再生可能エネルギーの環境アセス調査も展開する。

同社は現在、7機もの航空機を業界内で唯一自社保有する。これは災害時に「どこよりも早く撮影することで、状況を早く、正確に把握し空間情報で生命をつなぐこと」という考えに基づくものだ。

同社の事業セグメントは「空間情報コンサルタント」単一。売上規模は道路・鉄道・行政支援・エネルギー・復興・DS(Defense&Security)分野等からなる「社会インフラマネジメント事業」が売上高の63%を占める。続いて流域マネジメント・森林・環境分野等による「国土保全コンサルタント事業」が27%、その他が10%。公共性が高く、顧客別売上構成は、公共約75%、民間約25%。民間でも電力・鉄道・高速道路など、インフラ関連が中心だ。

主力事業の「社会インフラマネジメント事業」では、道路・鉄道・トンネル・上下水道などの保全、エネルギーや行政サービスなどをコンサルティングする。

近年、高度経済成長期に整備された社会資本が築後50年を経過し、維持管理・長寿命化が大きな問題となっている。同社はこうしたインフラ施設を3次元データ・モニタリング技術・ロボット・AIなどを用いて、効率的、効果的、戦略的に維持管理できるよう支援する。またエネルギー分野では、再生可能エネルギーのポテンシャル調査や環境影響評価、導入計画等様々に支援。自治体に対しては、GISを中心とした行政支援を行っている。

「国土保全コンサルタント事業」では、空間情報を通じて防災・環境を守る国土保全マネジメントをサポートする。
防災分野では、微地形を面的に把握することで溶岩流や土砂災害の痕跡をいち早く見つけ出せる「赤色立体地図」や、自由な視点から被害状況を確認できる「高精度3Dビューワ」などのシステムも提供する。河川・砂防・火山・都市防災などに精通したスペシャリストが、災害の予測支援や災害復旧のコンサルティングを提供。また、森林保全・生物多様性といった環境保全に対しても、その調査から予測・解析、保全対策の検討、施策支援までトータルに対応、林業などの産業活性化にも寄与している。

       ▲航空機を自社保有する

戦後復興時の地図作りから
近年は防災・減災の需要増

同社の設立は1954年。戦後復興の基盤となる地図づくりから船出した。翌年には自社機の運航開始や研究部門を設立。1959年9月、甚大な高潮浸水被害をもたらした伊勢湾台風では、初めて緊急撮影を実施。広範囲が被害を受け、被害状況の全貌がわからない中、空から撮影した写真は浸水範囲を明らかにし、関係機関へ提供された。

1960年代に入ると、解析空中三角測量法の実用化に世界で初めて成功、地図の大量生産を可能にした。一方で高度成長の中、環境問題の深刻化に伴い環境調査分野を強化。ガーナやインドネシアなど、海外展開も開始し、「技術のアジア」を確立した。

1980年代からは、環境・防災分野をはじめとするコンサルタント事業のさらなる発展期にあたる。1995年に発生した阪神淡路大震災を契機に、情報のデジタル化が進み、1998年にはGISによる自治体業務支援システム「ALANDIS」を開発した。

2000年代に入ると、有珠山・三宅島などの噴火、中越地震や東日本大震災、西日本豪雨など大災害が頻発し、防災・減災事業への社会的要請が高まった。同社はこうした災害の際にも発生直後に空中写真撮影を行い、被害状況の把握や、地図・写真情報を関係機関に提供するなど、技術で貢献を果たしてきた。

この頃、航空レーザ計測の技術が発展し、航空測量の精度が大きく向上。レーザ計測は三次元データが得られるため、様々な表現方法も開発され、同社では地表の凸凹がわかりやすい特許技術「赤色立体地図」を発明した。

『空間情報技術で社会をつなぎ、地球の未来を創造する』

同社は創立70周年を迎えた今年、「アジア航測グループ長期ビジョン2033」として、『空間情報技術で社会をつなぎ、地球の未来を創造する』を掲げた。

同社は、これまで国土の保全や社会インフラにかかわる様々な課題に対し、「測る技術」を基軸とした事業により、解決策を提供し続けてきた。しかし昨今、社会課題はより複雑化していることに加え、気候変動に伴う自然災害の激甚化など、より高度なリスクや課題への対応を求められている。

同社の社会的使命は、先人達が紡いできた技術や事業を基盤に、過去と現在、未来をつなぐ地理空間情報を核として、常に技術の深化や探究により新たな価値の創造に挑戦し続けることであり、更には社会課題に誠実に向き合い解決するエンジニアリング企業として、安全・安心で持続可能な社会の構築に貢献することにある。

「お客様、株主の皆様、パートナー、地域社会、そして従業員と共に誰もが豊かで、楽しく、安全に、住みよい地球の未来を創りたい」、これが長期ビジョンに込める同社の想いだ。

同社は長期ビジョンの数値目標として2033年9月期には、売上高600億円、営業利益45億円、ROE10%以上を目標としている。一方でCO2排出量を2030年までに2020年度比42%削減を掲げる。

創業70周年を迎えて
畠山 仁 代表取締役社長

当社は今から遡ること70年前の1954年2月、戦後の国土復興が進む中、「空から写真を撮影し地図を作成して国の復興に役立とう」という技術者の強い志から始まりました。

このような創業時の強い信念、国や社会の復旧復興に対して全力で貢献していく精神は、この70年間、社会環境や事業内容がどんなに変化しても、変わることのない企業文化として今日まで脈々と受け継がれてきました。

70年にわたる当社成長の系譜を今に受け継ぐ身として、偉大なる先人が抱いた創業時の想いは、今日の当社グループ経営の根幹を成す重要な信念だと思っています。この想いをベースに、当社グループをこれから先の80周年、90周年、100周年、さらにその先の未来へと紡いでいきたいと考えています。

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