
Chapter 1
未来事業を育み長期成長に布石
第1章では、長い歴史で独自技術を磨き、各業界の発展に貢献してきた3社をピックアップした。
新明和工業(7224・P・兵庫県宝塚市)
航空機技術を特装車や搭乗橋に応用し市場構築
海外展開、水インフラなど新ステージへ
新明和工業は、ダンプトラックや塵芥車(ごみ収集車)で国内シェアトップ、航空旅客搭乗橋はアジアシェアトップと、様々な分野で地位を築く。創業100周年となる2020年には「長期ビジョン」を制定。その達成を志向した長期経営計画[SG─Vision 2030]では、31年3月期に売上高4000億円以上を目標水準とする。既存事業を海外などへ拡大させるとともに、新事業の創出にも力を入れる。
1920年創業の同社は、戦前は国内最速の機体や国内初となる旅客輸送機などを完成させるなど、国内航空機メーカーの先駆的な存在だった。だが戦後しばらくの間は、日本企業による航空機の開発・製造が禁止に。そこで、同社は同技術を生活用品やダンプトラックなどに転用、戦後の復興を支えた。
2025年3月期の売上高は前期比3・6%増の2664億4100万円で過去最高、営業利益は同18・7%増の139億7000万円(営業利益率は5・2%)。売上の内訳は下図の通り。現在最も売上の大きい特装車セグメントでは、トラックメーカーが製造した車体に取り付ける機能部位を製造・販売する。建設、環境、物流分野を中心に、200機種以上のラインアップを展開。アフターサービスも全国で行っており、近年は車両の状況をユーザーが把握できるシステム開発などにも注力している。
売上高の17%を担うパーキングシステムセグメントでは、機械式駐車設備や航空旅客搭乗橋などを製造。機械式駐車設備は大型機分野で国内トップクラスのシェアを誇り、アフターサービスが主な収益源となっている。一方航空旅客搭乗橋では、24年に世界初となるバリアフリータイプを開発したり、23年には搭乗橋の遠隔操作システムを実用化したりなど、技術力に定評がある。
原点でもある航空機セグメントでは、国内唯一の飛行艇メーカーとして水陸両用の「US─2型救難飛行艇」を製造。同機は全て海上自衛隊に納入され、海難事故発生時の救助活動や、離島で発生した患者の搬送などに使用される。
長期経営計画の達成に向け、現在はフェーズ2にあたる中期経営計画[SG─2026](25~27年3月期)を進行中。「転換」を掲げた前中計(22~24年3月期)では、EV電池向け設備を手掛ける産機・環境セグメント傘下の韓国子会社の伸長などで海外売上高が目標値を上回った。現中計では、27年3月期に売上高3200億円、うち海外売上高は800億円(25年3月期は451億円)とするなど、引き続き海外展開の加速に力を入れる。セグメント間で連携を図るほか、現地企業とのアライアンスも強化。アジアや北米、欧州を中心にシェア拡大を進める。
加えて、新規事業の創出も強化する。既存5事業に続く事業を育成すべく、22年に「新事業戦略本部」を新設した。例えば、水インフラに関する課題解決製品の開発を手掛けるWOTA社に出資したり、水素サプライチェーンビジネスに参画したりなど、これまでの事業領域にとらわれずに事業アイデアを探索している。持ち前の技術力と応用力を武器に、更なるポートフォリオ拡大に挑む。
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