日本の食を創る企業10選

日本の食を創る企業10選

サカタのタネ(1377・P・神奈川県横浜市)
タネ開発の先駆、高い発芽率で業界をけん引
成長余地の大きい北中米で最先端拠点を開設

サカタのタネは、ブロッコリーのタネで世界シェア65%を持つほか、トマトやホウレンソウ、大根、メロン、スイートコーンなど様々なタネも展開する種苗会社だ。タネの国内シェアはトップを誇り、世界でも170カ国以上に展開。2024年5月期業績は、売上高が前期比14・8%増の886億7700万円で過去最高、営業利益は同3・9%減の104億9500万円。売上高のうち、海外売上比率は77%に上った。近年は、北中米地域でのシェア拡大に注力。30年には同地域での売上を現状から1・5倍に拡大させる計画だ。

同社は1913年に創業。当初は苗木の輸出入を行っていたが、苗木より輸出入しやすいタネに商材を変更し、業績を拡大させていった。また、日本の民間企業で初めて「発芽試験室」を設置したり、1930年に神奈川県茅ケ崎に試験場を開設したりと、早くから研究開発に注力していた。

現在も、研究を「事業の根幹」と位置付ける同社。そのため日本や米国、フランス、インド、ブラジルなど13カ国に研究所を21カ所設置し、各地の気候や環境、土壌、食文化などに合った新品種の開発(育種)に取り組んでいる。育種には約10年かかると言われるが、これまで培った豊富な遺伝資源(野菜や花の情報)や病理研究を基に、ブリーダー(育種家)がチームで育種するため、ノウハウの伝承や開発速度の向上ができるという。また、新品種は自社農場だけでなく、世界中の契約農家のもとで試作。実際に栽培する畑やハウスでの試作を経て商品化するため、高い発芽率や病気に強いタネができるという。

2025年5月期業績は、売上高が前期比5・4%増の935億円、営業利益は同4・8%増の110億円となる見込み(6月執筆時点)。地域別で売上をみると、野菜・花共に不振のアジアを除いた全地域で前期比売上増を予想している。

特に力を入れる北中米地域では、米国、メキシコ、グアテマラを中心に市場開拓を進めている。同社によると、3カ国の野菜種子市場は年平均成長率約3・2%で順調に拡大し、2030年には約14億ドル規模となる見通し。サカタのタネは、現在同市場でシェア2位の位置につける。攻勢をかけるべく、24年には北中米統括子会社の本社を、果菜類の主要産地である米国カリフォルニア州ウッドランド市に移転した。新拠点には研究開発や種子生産、加工、試験、包装、流通、バイオテクノロジーなどの機能が集約。さらに農業分野に強いカリフォルニア大学とも近く、近々同校と産学提携を結ぶ予定だ。

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