多面体経営 実践企業10社

多面体経営 実践企業10社

東亞合成
(4045・P・東京都港区)

独自技術活かしたEV・半導体向け製品が拡大中
24年に新研究所開設、多方面で新技術の創出進む

瞬間接着剤の代名詞となっている「アロンアルフア」を持つ東亞合成。実は、カセイソーダや塩酸、アクリル酸などの基幹原料を軸に様々な製品を展開する化学品メーカーだ。

スマホなど向け「光硬化型樹脂」、水道水などの滅菌に使用される「高品位次亜塩素酸ソーダ」など、様々な国内トップシェア製品を保有。また近年は、EVなどのモビリティ分野向け、そして半導体分野向けの製品群が成長ドライバーとなっている。2025年1月には、研究開発出身の小淵秀範氏が新社長に就任。技術に明るい小淵社長が指揮を取り、新製品・新技術の開発力強化に取り組んでいる。

24年12月期の業績は、売上高が前期比5・2%増の1675億9400万円、営業利益は同13・9%増の142億3300万円となった。

 

売上高の内訳は、カセイソーダや塩素、塩酸、アクリル酸、酸素、窒素といった化学品を手掛ける「基幹化学品事業」が47%。自動車、半導体、電子材料、医薬・化粧品などで使用されるアクリル誘導品を扱う「ポリマー・オリゴマー事業」が21%。アロンアルフアや多様な機能性接着剤を擁する「接着材料事業」が8%。半導体向けやメディカル向け製品などを展開する「高機能材料事業」が6%。そして下水道老朽化対策製品や介護用品などを提供する「樹脂加工製品事業」が17%。セグメント別営業利益率をみると、10%を超えたのは主力の基幹化学品に加え、ポリマー・オリゴマー、高機能材料の3事業だった。

ポリマー・オリゴマー事業のけん引役となるのは、小淵新社長が開発を率いた「リチウムイオン電池用バインダー」だ。同事業は2000~10年代前半まで、低利益水準にあったという。状況打破に向け、同社の持つ技術にマッチした開発テーマを1件1件模索。その中で、同社グループの高分子合成技術が、電池の長寿命化に貢献する同製品の開発につながった。EV気運が低迷する中でも、同製品の受注は拡大。26年には同製品の新工場が稼働する予定だ。

また高機能材料事業では、半導体向け「高純度液化塩化水素(クリーニングガス)」や「高純度カセイカリ」のほか、「メディカルケア製品」などを展開。特にクリーニングガスは世界シェアトップを誇る。25年には同製品の生産能力が増強される計画で、同分野の売上高は今後も右肩上がりを予測している。

更なる競争激化を見据え、研究開発に力を入れる同社。24年8月には、高度な設備を取りそろえた新施設「川崎フロンティエンスR&Dセンター」を開所した。新センターでは「セルロースナノファイバー」や次世代電池向け材料、iPS細胞実用化研究など、多岐にわたるテーマを扱う。将来性の高い分野を見極め、自社技術を生かした製品開発に勤しむ。

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