統合報告ダイジェスト ~後編~ 三浦工業 【6005・プライム市場】

目指すべきは、グローバルではなくユニバーサル
相互理解・尊重、技術の交流で、その地ごとの最適解を探ります

産業用ボイラのトップメーカーである三浦工業は、海外事業展開に早くから取り組んできた。2024年にはアメリカとドイツの企業を相次いで買収。一気に事業拡大に踏み切り、市場の注目を集めている。最前線に立つ宮内大介代表取締役 取締役会議長兼CGGO(チーフ・グローバル・グループ・オフィサー)に、ミウラの目指す姿・成長ストーリーとしての海外事業戦略をインタビューした。グローバル化を進める上で重要だと語るのは、「ユニバーサル」なアプローチであるという認識が示された。海外事業の現状認識と今後の方針に迫る。
三浦工業-宮内 大介 氏

宮内 大介 氏(みやうち・だいすけ)

代表取締役 取締役会議長兼CGGO(※) ※Chief Global Group Officer

Q:中期経営計画2025~2027(以下、中期経営計画)で発表された今後の海外事業の戦略について、お聞かせください。

宮内氏(以下宮内) 海外事業については、市場シェアの大小に基づき「ゾーン戦略」を進めます。欧州(トルコ含む)、インド、一部東南アジアを「地域拡大ゾーン」、北米、東アジア、一部東南アジアを「顧客関係深耕ゾーン」に区分しました。

「地域拡大ゾーン」では、引き続き市場での存在感向上を目指します。これまでミウラが日本国外で得意としてきたのは小規模~中規模工場向けの貫流ボイラですが、CERTUSS社、Cleaver─Brooks社を迎え入れたことで、大型コンビナートやプラント向けの炉筒煙管ボイラや、小規模工場向けの蒸気発生器が製品群に加わりました。さまざまなタイプのボイラを保有するミウラグループならではの特長を生かし、業種・蒸気容量別の最適な商品構成で販売体制を構築、グループの進出スピードと市場拡大スピードのアンマッチ地区へのアプローチを加速しています。

「顧客関係深耕ゾーン」では、パイプの強化と深堀りで、付加価値をさらに向上させます。具体的にはIT技術の活用、役割分担の効率化で顧客と代理店等とメーカーが一体化したサービスの提供、教育制度の充実、提供商品の拡充とグループ内商品の融通促進に取り組んでいるところです。そのため、海外事業全体では3年間で50億円の投資を計画しています。


Q:「ボイラメーカーから、熱プロバイダーへ」を海外のグループ会社にも浸透させる意義は何でしょうか?

宮内 お客様は「熱」を求める工場が中心で、当社が提供している価値は「熱」の一言に尽きます。私はいつも言っているのですが、「ボイラが欲しいお客様なんて、世界中に誰ひとりとしていない」のです。スイッチを押したら電気がつくこと、蛇口をひねれば水が出ることと同じで、お客様にとってはバルブを開けたら熱が出る、それでいいわけです。

電気は流通性が良いので基本的には工場で発電機を持たなくて済む。一方で熱は特性上、運ぶとロスが大きいので工場はボイラを持つのが通常。つまり、お客様が欲しており、私どもが提供している価値はあくまでも「熱」なのです。この考え方をCERTUSS社、Cleaver─Brooks社にも浸透させるために「熱プロバイダー」というフレーズを使っています。

CERTUSS社、Cleaver─Brooks社はメーカーとして物を作って主に販売店に卸す、というのが基本で、特に北米では強固な代理店網での販売が中心です。ボイラメーカーを生業とするのか、それともお客様が欲しい「熱」を最適な形で提供するプロバイダーとなるのか。ものづくりだけですと、マークアップ(製品やサービスの原価に一定の利益を上乗せして販売価格を決める)利益の発想になりがちです。

私はそれをやめようと、今しきりに言っています。海外でもメンテナンスなどを通じて、他にないパフォーマンスを提供し、お金をいただく方向でパイプを強化し、パフォーマンスの原価を下げることで利益を増やす。そういった発想にしていこうと。

ボイラメーカーでは最終的にコモディティ化の波に巻き込まれてしまいます。しかし、ミウラ以外「熱プロバイダー」が世界に存在しないとしたら、価値は自分たちで決められるはずです。そこに対する原価低減をどうするかは、やはり技術であり、サービスなのです。

ただし日本のやり方を無理に押し付けるつもりはなく、お互いの文化を理解し、相互信頼した上で融合させていくことを大切にしています。なぜなら、日本の世界地図では日本が中心にありますが、海外の地図では日本は極東に過ぎません。我々も文化を学ばないといけない立場なのです。

例えばCleaver─Brooks社は米国でも最大級のマーケットシェアを持つ会社ですから、マネジメントひとつとっても学ぶことが相当あります。一方でミウラの管理の仕方や、お客様のお困りごとに合わせて製品バリエーションやサービスを広げてきた文化への理解が同社でも徐々に進んでいます。


Q:中期経営計画では、28年3月期に売上収益3000億円、そのうち海外売上収益1530億円を目標に掲げています。年平均成長率は国内の4・5%を上回っているものの、海外は7・7%と無理のない設定に見えますが、数値は中期経営計画のさらに先を見据えたものでしょうか?

宮内 数値を高く設定しすぎても無理が出ますので、それよりも産業の特徴を理解した上での数値設定が重要と考えました。

ボイラはライフサイクルの長い製品ですから、ミウラでは納品後のメンテナンスまでを含むトータルソリューションで利益を伸ばしてきました。極端なことを言うと、お客様が求めていない段階から潜在ニーズをくみ取り「その社内業務を当社に委託し効率化しませんか」とアウトソーシング化を提案し、仕組みを変えるわけです。

トータルソリューションは、その繰り返しで生まれたものです。今ではメンテナンスが利益の約5割を占める収益の柱となりました。我々はそうやって利益を積み上げてきたのです。一足跳びに成長できる魔法はないわけですから、ステップバイステップでやっていくしかありません。

よくジグソーパズルに例えて話すのですが、これまではボイラを中心に、次はコンプレッサー、その次は他の製品と、ピースを面に広げて展開してきました。今度はエリアごとに高さを増していき、このゾーンではまずボイラのパイプライン強化、このゾーンでは横展開、と立体ジグソーパズルのように体積を大きくしていくイメージなのです。

熱プロバイダーとしての方向性は少なくともメガトレンドには乗っています。今後数字が極端に落ちることもありませんので、中長期でしっかりとやるべきことをやっていく。そしてその先にはまだ開拓できていない白地も残っています。

文化と信頼は今日明日で浸透するものではありません。あとは「どうやって浸透させていくか」で、今その第一段階に取り組んでいるところです。ステークホルダーの皆様は、当社の歩みに、ぜひご期待ください。

三浦工業(6005・P)

創業 1959年5月
資本金 95億4400万円
事業概要
小型貫流ボイラ・舶用補助ボイラ・排ガス(廃熱)ボイラ・水処理機器・食品機器・滅菌器・薬品等の製造販売、メンテナンス、環境計量証明業 等
東京本社 東京都港区高輪2-15-35
松山本社 愛媛県松山市堀江町7番地
従業員数 単独3,364名、連結7,729名(正社員・準社員のみ)
※2025年3月31日現在

https://www.miuraz.co.jp/

ログイン SEARCH