『トレードピアお台場』にみる、いちごの“持続可能な不動産戦略” いちご 【2337・プライム市場】

「働くだけの場所」から「コミュニティの場所」へ
物件の価値を再構築し収益と地域に還元

東京・湾岸エリアに立つ大型オフィスビル「トレードピアお台場」。その内部に足を踏み入れると、一般的なオフィスビルのイメージが静かに覆されていく。アートや緑が彩る共用空間、入居企業がすぐに稼働できるセットアップオフィス、さらには敷地内農園を活用したコミュニティプログラム─。こうした“人の体験”を軸にした空間づくりの背景には、サステナブルインフラを掲げるいちごの独自戦略「心築」がある。単なるリノベーションでも、老朽化建物の延命措置でもない。価値を“育て”、収益と地域に持続的に還元していく仕組みとしての不動産運営だ。

物件価値を“再構築”する
「心築」の実験場として

▲トレードピアお台場

「トレードピアお台場」は、もともと立地優位性を備えた物件だった。そのポテンシャルをさらに引き出したのが、いちごが導入した「心築」の考え方だ。これは単なる不動産の改修やリノベーションではなく、不動産に新たな“心”と“価値”を与えることを目指す同社独自の再生コンセプトだ。従来のスクラップ&ビルド型の開発とは異なり、既存の建物を最大限に活かすことで、環境負荷を低減しつつ、投資価値・利用価値の双方を高める点に特徴がある。

▲セットアップオフィス

象徴的な施策が、セットアップオフィスだ。什器・内装・設備を整えた空間により、新規入居の初期負担を極小化し、スピーディな稼働を可能にした。

内装工事不要、プロによるデザイン、敷金0(保証会社利用)、福利厚生サービス「いちごプラス」の提供などにより、成長企業を支援する。一般オフィスと比較して坪7000円高い賃料設定だが、内装工事や原状回復が不要なため、例えば55坪の区画の場合、2年間で約2200万円の資金メリットがあった。

導入後、賃貸区画は従来以上に早期に成約。稼働スピードの向上は、安定した賃料収入の確保だけでなく、空室期間の短縮による運営効率の改善に直結した。

「トレードピアお台場」地上23階/地下2階

「トレードピアお台場」とは、同社が保有・運用するオフィスビルで、地上23階/地下2階、延床面積は約76,925 ㎡。2001年2月竣工。

全体の稼働率は1月時点で97%超。ビル内には15のテナント専用会議室があり、カフェラウンジも設置されている。

2016年に取得した同ビルは、コロナ禍で満室だった入居率が約50%まで落ち込んだ。これを契機に、その間にフードトラック(キッチンカー)の導入、ファミリーマートの24時間営業の維持、お弁当販売、マイクロモビリティサービスの設置など、テナント向けのサービス拡充を行った。現在でも、内覧時にはオーナー自らが立ち会い、直接テナント候補企業とコミュニケーションをとっているという。

同ビルが位置するお台場エリアは、四方が海に囲まれているが、津波対策として地盤が高く設計されており、想定される津波の高さ(2.61メートル)を大きく上回るため、津波ハザードマップでは安全地帯になっている。また帰宅困難者対策として、2リットルのペットボトル1万本、アルファ米など1万5000食分の食料、毛布とエアマット各1000枚など、備蓄品も充実させている。

所在地 東京都港区台場二丁目3番1号
構造/規模 鉄骨・鉄筋コンクリート造/地上23階/地下2階
竣工年月 2001年2月
耐震 新耐震/耐震構造
基準階面積 2,148.28㎡(649.86坪)

サステナブルインフラの実装
“非財務価値”の創出施策として

同ビルは、建物自体が〝働く場所”としての機能を超え、コミュニティの核となる場となっている。

敷地内に設けられた都市型農園「Bay Village Farm」では、ハーブや葉物野菜を栽培、定期的に収穫イベントが行われる。オフィスワーカーが植物に触れ、土に近い体験を通じて交流する光景は、一般的なビルではなかなか見られない。

▲Bay Village Farm収穫祭

アート展示や地域連携イベントの開催など、ビル内外の接点を生むプロジェクトも充実している。これらの取り組みは、短期収益を目的にしたものではなく、テナント満足度の向上や長期入居化を促す“非財務価値”の創出施策として位置づけられている。
ESG投資やウェルビーイング経営が広がる中、これらの取り組みは入居企業の人材戦略とも相性がよく、物件競争力を高める武器となっている。

稼働率改善が示した
「持続可能な収益モデル」

同社の「心築」ブランドによる価値向上は、実績としても明確に表れている。「トレードピアお台場」の稼働率は、コロナ禍で心築への取り組みを展開し、低稼働率からいち早く顕著な改善を示し、安定稼働のフェーズへ移行した。

ここで着目すべきは、稼働率の改善が単なる“物件の成功”にとどまらず、いちごのビジネスモデル全体の競争力向上につながる点だ。

同社は、不動産の賃料収入によるストック収益と、価値が高まった資産の売却によるフロー収益を両輪とするビジネスモデルを展開している。つまり、バリューアップによる稼働改善は、賃料収入の増加(短期)と資産価値向上による売却益(中長期)の双方を押し上げる。

同社はこの成功を、オフィスブランド「Village」シリーズとして複数物件に展開し始めている。この“仕組み化された価値向上モデル”こそ、いちごのサステナブルインフラ戦略の中核であり、企業の成長エンジンとして位置づけられている。

ビル運営コンセプト「Bay Village」

「トレードピアお台場」は、「Bay Village Cafe」「Bay Village Gallery」「Bay Village Farm」の3つの施策を通じて、テナント同士や近隣との交流を促進している。「Bay Village Cafe」は家のリビングのような空間を目指し、コンシェルジュ機能を持たせることで、テナント間の交流を促進する場となっている。

「Bay Village Farm」は、2025年4月にテナントからの提案で始まったアーバンファーミング(都市型農園)の取り組みで、40人弱が参加。2ヶ月に1回程度イベントを開催し、畑づくり、夏の収穫祭、流しそうめん会、農園居酒屋など、テナント同士の交流の場となっている。近隣ビルや近隣企業とも連携し、地域との交流も図っている。

「Bay Village Gallery」は、1階のエントランスに無料開放された展示スペースで、現在5作品目の展示を行っている。テナントや関係者の作品を展示し、2ヶ月ごとに入れ替えており、1年先まで予約が埋まっている状況だ。テナントの社員が足を止めて鑑賞したり、新たな交流のきっかけになるなど、コミュニケーションツールとしても機能しているという。

9月19日から10月19日までの週末に5週連続で実施された「TokyoBay Harmony Fes!!」では、いちごを含む3社が幹事となり、お台場エリア企業合計15社で手を組んで開催した子供向けイベント。クラシックライブ、元Jリーガーによるトークショー、水素燃料電池教室、AIワークショップ、ドローンプログラミング教室、EVカー試乗など、様々なプログラムを提供した。

Bay Village Farm by grow
4.29 立ち上げワークショップ 10.2 農園居酒屋
7.24 夕涼み流しそうめん会 10.11 コンポスターづくりワークショップ
8.28 夏の収穫祭 12.12 夕涼み流しそうめん会

▲Bay Village Gallery(NEUNOA氏)

湾岸立地・築年数の制約を
“価値”で乗り越える

「トレードピアお台場」は2001年竣工の物件で、湾岸立地ゆえの市況変動の影響も避けられない。だが、いちごはこうした外的条件をハンディではなく、価値創造の余地として捉えている。

築年数は変えられないが、価値は変えられる─。設備更新、環境性能の向上、働きやすさの改善、コミュニティ形成などの施策が相まって、同物件の競争力は確実に高まっている。

市場リスクが高まる局面であっても、差別化された価値を提供できる物件は選ばれる。「トレードピアお台場」の改善はその好例と言える。

同ビルはいちごの企業価値ストーリーを支える“現場”としての存在感が増している。現在、オフィスビルの競争力が、従来の立地・規模・築年数といった要素だけでは測れなくなっている。それはコロナ禍を経てより顕著になっている。コミュニティ、文化、健康、働きやすさ─こうした“体験価値”が、テナント選択の基準として確実に浮上してきているのだ。

いちごは、その流れを先読みし、不動産を長期資産として“育てる”思想を明確に打ち出した。その象徴が「トレードピアお台場」だ。ここには、同社が描く「持続的価値創造型の不動産運営」のエッセンスが凝縮されている。

▲「トレードピアお台場」運用チーム

 

いちご(2337・P)

https://www.ichigo.gr.jp

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