| モビリティ第二事業部営業2部 第1グループ 東 洋和 主任 ひがし・ひろかず トヨタ自動車東日本材料技術部にて、樹脂材料(内・外装、艤装部品、シート表皮など)の開発を担当した後、2016年三洋貿易入社。自動車シート用の本革開発を終え、QUARTECHRの開発を担当。 |
モビリティ第二事業部営業2部 第1グループ 青木 貴嗣 氏 あおき・たかし 2019年三洋貿易入社。入社後は自動車内装材の技術営業を行ってきた。2021年より新素材のQUARTECHRの立ち上げを行い、現在は営業兼マーケティング活動に従事。 |
ポリエステル100%の新表皮素材
多様な質感再現でき、リサイクルも可能
協業企業との二人三脚で
5年がかりのプロジェクト
三洋貿易は、ファインケミカル、インダストリアル・プロダクツ、サステナビリティ、ライフサイエンスの4市場に注力する商社だ。自動車業界への売上が半分以上を占めており、40年以上にわたって自動車メーカー各社と強固な関係を築いている。
その中でも、モビリティ第二事業部は車載内装用の本革の輸入販売で発展してきた。
しかし近年では本革市場が縮小し、同社も本革製品からの撤退を決定。その際、今後の収益の柱となる新事業の創出が急務となった。
「本革からの撤退を模索していた段階から、今後の車載用内装表皮材はどうあるべきか、という漠然とした問題意識がありました。植物由来原料からつくるものや、本革そのもののリサイクル技術など、さまざまな可能性を検証していく中で、偶然辿り着いたのが、協業先となる森常が持つポリエステル生地に応用できる、独自の加工技術でした」(東洋和氏)
森常は、北陸で75年以上にわたって糸の染色・加工全般を手掛けてきた繊維会社だ。森常の繊維技術と、国内外で高付加価値品を扱ってきた三洋貿易が力を合わせ、2021年より、革の風合いも表現可能となる意匠を持ち、環境への優しさを兼ね備えた新素材を作るプロジェクトが始まった。
「開発では、商社ゆえに開発に必要な装置や機材が自社で賄えないことが最も大きな足枷となりました。協力してもらえる業者選定や、これら協業先の本業を邪魔しない範囲での試作や開発日程の調整、またこれらの協力業者が全国に分散していることで都度現場に足を運んでの作業となっていたので、思うような進行が図れなかったこともありました。現時点では必要最低限の機材は揃えつつありますが、製造部門を持たない当社としては、十分な開発体制を整えるにはまだ時間が掛かりそうです。社内調整に関しては、やはり商社としてメーカー機能を持つことに対する意義、その理解の浸透にはかなりの労力が必要でした」(東氏)
合皮並の耐久性、水洗い可能
循環型経済の実現に貢献

▲QUARTECHⓇ LINEUPより(https://quartech.jp/)
こうして生まれたのが、革の風合いの表現も可能にした、ポリエステル生地に特殊コーティングを施した新素材、「QUARTECHⓇ(クアルテック)」だ。内装用の表皮素材は本革、ファブリック、合成皮革の3カテゴリーに分かれるが、同製品はポリエステル素材のみから作る、どのカテゴリーにも含まれない表皮材である。
素材名は「4番目」という意味の「QUARTO」(伊語)と「テクノロジー」の「TECH」を合わせた造語から名付けられた。合皮は布製の生地に石油からできた合成樹脂や様々な薬剤で加工を施すことに加え、リサイクルが不可能だ。
ヴィーガンレザーは植物を主原料とした天然樹脂を使用するため石油資源の消費を抑えることができる反面、合皮同様にリサイクルには困難が伴う。一方で「QUARTECHⓇ」は、生産の過程で樹脂や薬剤を混ぜることなく、高品質なポリエステル繊維を織って作られた素材のため、使用後は新たなポリエステル素材としてリサイクルが可能だ。合皮に匹敵する耐久性・撥水性を持ち、水洗いも可能。加工によってシボ感やスエード調などさまざまな質感を施すことができ、バッグや衣服、車の内装など、幅広い用途で使用できる。
「自動車業界では電動化・軽量化・サステナビリティといった潮流が進んでいます。『QUARTECHⓇ』はポリエステル100%で構成されている『モノマテリアル』という特性上、リサイクルが容易ですので、循環型経済実現に向けて大きく貢献することが可能です。特に欧州市場ではアニマルフリーや環境配慮への意識が相当高いため、手応えを十分に感じており、その期待の高さも認識しています」(青木貴嗣氏)
環境意識高い欧州市場で手応えあり
輸出ビジネスという新たな挑戦
24年にランドセルに採用
大手自動車メーカーも検討
これまで世界になかった新素材の開発に加え、同プロジェクトにおけるもう1つの『変革』が、欧州市場への挑戦である。
「『QUARTECHⓇ』の展開は、これまでの当社の商売形態とは逆方向のビジネスと言えます。従来から現在も海外サプライヤーの製品や素材を日系のお客様に展開することが基本スタイルですが、日本発の開発品を海外のお客様に届けるという点が大きな変化と考えています。また当社のような独立系商社が、メーカーの機能を獲得することも同時に大きな変革になり得ると考えています」(青木氏)
「QUARTECHⓇ」は23年から展示会への出展を開始。24年には国内ランドセルブランドで採用された。現在も大手自動車メーカーをはじめ、国内外のさまざまな企業で導入が検討されている。
「市場における環境対応素材の潜在能力の高さを改めて実感したと同時に、市場の期待に応えるための更なる開発進化と安定製造の確立が急務であることを実感しています。また知名度の継続的な市場浸透、10年後の姿をどうするかという点も、非常に重要なテーマと捉えています。同時に、現時点で見えている市場以外にも波及する可能性を、更に追求していくことも必要です。表皮材に留まらず、ポリエステル素材の持つ可能性を見つけて『QUARTECHⓇ』と親和性を持つ新たな価値創造ができれば理想です」(東氏)










