前期売上高は1559億5800万円
営業利益率9・4%、商社としては高水準
大規模の商業施設やオフィスビルに入ると、夏は涼しく、冬は温かい。こうした快適環境をつくるのに貢献しているのが東テクだ。
同社は「空調」「計装」「エネルギー」の3つの事業分野を柱とする。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比10・8%増の1559億5800万円、営業利益が同48・3%増の146億9100万円と共に過去最高を更新。営業利益率は9・4%となった。同社は業種区分上、卸売業にあたるが、営業利益率をみると一般的な卸売業が叩き出す数値より比較的高い水準にある。
同社のセグメントは「商品販売」「工事」の2つ。商品販売には、主に空調事業全体と計装事業やエネルギー事業での設備販売、保守・メンテナンスが含まれる。工事には、計装工事やエネルギー事業に関わる設計施工・保守・メンテナンスが主な収益源だ。売上比率は商品販売が約6割、工事が約4割を占める。
ダイキンの最大手販売代理店
空調事業については、同社はダイキン工業(6367・P)の国内最大手の販売代理店であるほか、業務用空調機器専門商社のパイオニアとしても知られる。ダイキン工業を中心に空調メーカーから仕入れた製品を、主にオフィスビルや工場、商業施設など非住宅の大規模建物に提供する。 業務フローとしては、サブコンから案件を受注し、メーカーから仕入れた空調機器を施工先に納品。グループ会社と連携しながら、販売に加え施工・保守・メンテナンスまでワンストップで対応している。
次に計装事業については、快適な建物環境を実現するための技術とサービスにあたり、同社の強みとなるビジネスだ。
そもそも計装とは、建物の設備を自動制御システムで計測・監視・制御する技術を言う。同社は温度や湿度、CO2濃度などの状態を「計測」し、それを基に空調や換気設備を「制御」する。そして建物全体を「監視」して、必要に応じて最適な状態に調整する。自動制御システムは、建物の頭脳・中枢神経とも呼ばれ、安全・快適・省エネの空間づくりに不可欠となる。
業務フローは空調事業と同様にサブコンから案件を受注。同社は計測・制御機器メーカーのアズビル(6845・P)の大手特約店であり、アズビルを中心にメーカーから計装機器を仕入れる。設計図の作成や施工管理を手掛け、その後の施工・保守・メンテナンスまでも対応する。最近では、東京駅・大阪駅周辺の再開発に携わるほか、今年開催された大阪・関西万博のパビリオンなどが施工例となっている。
「一般的な業務用エアコンで十分に対応できる小規模空間もありますが、大規模施設の空間では計装が不可欠です。冷やす装置、温める装置、空気を送る装置などすべてが連動します。バルブの開閉や設定値の調整など、現場でのものづくりの要素が不可欠となります。熱源や送風機など、一品一様の機器を設置し、その建物に最適な空調空間を築いていく。それを制御するシステムを手掛けているのが東テクです」(小山馨社長)
また、計装は一度の施工で終わることがなく、定期点検や調整、更新などが長期的に発生するため、安定した収益を生むストック型のビジネスでもある。
「例えば大型のビルやショッピングモールでは、常に快適に過ごせる環境が整っているものです。実際には、温度や湿度を計測するセンサーや制御装置が正常に作動し、空調設備の運転や設定を適切に調整しています。遠隔で温湿度を監視したり、温度設定を上下させたり、目に見えないところで快適な環境を維持しています」(同氏)
さらに計装事業について言えば、メーカーや施工業者など多くの関係者が関わるため、全体を取りまとめる旗振り役が不可欠だ。東テクは全国各地の協力会社とのネットワークを束ね、研修会などを通じて技術の底上げを図っている。
3事業が相互補完的な関係
3つ目のエネルギー事業については、様々なエネルギー課題を抱える顧客(施主)に向け、太陽光発電や蓄電池、省エネ機器の導入提案などを行う。機器の販売や施工のみならず、リース会社やエネルギー会社との連携、補助金の有効活用など、柔軟な対応によって最適な解決策を提案。環境負荷低減やBCP(事業継続計画)対応にも寄与でき、施主のニーズに応えることができる。なお、同事業では、空調事業で蓄積した省エネのノウハウを生かすことができている。
このように、同社の3つの事業分野はそれぞれが独立して存在するのではなく、空調を軸に計装が全体を最適化し、さらにエネルギーが未来への価値を加えるという相互補完的な関係にあるという。
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