業務用厨房機器メーカー 中西製作所 【5941・スタンダード市場】

人材への積極投資と風土改革で急成長
厨房エンジニアリングのリーディングカンパニーへ

学校給食センター向け市場でトップクラスの実績を持つ、業務用の大型厨房機器メーカーの中西製作所。同社は納品先施設の生産ラインのレイアウト設計までを行い、取引先との強固な関係づくりに成功している。2018年には、当時36歳の創業家出身、中西一真氏が社長に就任。攻めの経営に舵を切り、直近7年間で売上高は1・5倍、経常利益は2倍へと拡大した。
中西製作所-中西 一真

中西 一真(なかにし・かずま)

社長

1981年9月生まれ、大阪府出身。2004年、関西学院大学商学部を卒業。08年中西製作所に入社。16年管理部長、17年代表取締役副社長。18年代表取締役社長に就任(現任)。

従業員数を1・3倍に増やし7年間で
売上高1・5倍、経常利益2倍を実現

機器製造・ライン設計の両輪

2017年に開設した府中市立学校給食センターは、地上3階建て、延床面積1万4305㎡と全国でも最大規模の給食センターだ。1日の調理能力は小学校2献立と中学校2献立分の2万2000食。安全性を確保するために、1階は調理エリア、2階は見学・体験エリア、3階は炊飯・アレルギー対応・洗浄エリアと各階の役割を明確に分けている。1階の調理エリアは、入居の段階から小学校と中学校のラインを完全に分離。献立を分けることで万が一の食中毒の場合にも、汚染の拡大を防ぐことができる。

さらに、調理の際に床に水が落ちないドライシステムの導入、徹底した食材の温度管理、汚染作業区域と非汚染作業区域を分けるなど、学校給食衛生管理基準やHACCP(ハサップ)概念に基づいて、衛生管理とリスク分散を可能な限り考慮した設計となっている。

このような大規模な施設の緻密なレイアウト設計を行ったのが、総合厨房機器メーカーの中西製作所だ。同センターでは、同社の製品である過熱水蒸気調理機や全自動炊飯ラインなどを納品するほかに、その他の必要な機器の調達も行った。つまり中西製作所はいちメーカーに留まらずに、サブコンの役割を果たしている会社なのだ。

■府中市立学校給食センターの事例

給食センターの中は、1階が調理エリア、2階は見学・体験エリア、3階は炊飯・アレルギー対応・洗浄と、エリアごとに役割を分けて安全性を確保している。

1階の調理エリアは、食材を運ぶ入庫口から小学校と中学校のラインを完全に分離。食中毒などのリスクが拡大しないように設計されている。汚れを落とす作業を行う汚染作業区域と、調理作業を行う非汚染作業区域を分け、床や作業を行う人の服装も変えて間違いの発生を防止する工夫が施されている。

40名のレイアウト設計部隊

▲連続式過熱水蒸気調理機「SVロースター」

同社は、学校給食センターや外食チェーンのセントラルキッチン、食品工場などに設置する大型機器を製造している。ラインアップには、連続式過熱水蒸気調理機や省エネ型ガス連続炊飯器、連続式食品裁断機、業務用冷凍冷蔵庫、大型食器洗浄機などがある。例えば、美味しいお弁当づくりに寄与すると言われる過熱水蒸気調理機は、コンビニベンダーに多く納品してきた。

取引先には、性能はもちろん、安心・安全や機能性なども求められることが多い。そこで同社は、機器を導入する施設の生産ライン設計から行い、自社製品以外の必要な機器を調達する商社の役目も果たすようになった。CADデータだけでも75万枚以上あり、生産ライン設計のノウハウの集積が同社の強みでもある。

特に安心・安全を重視する学校給食のライン設計は、ゼネコンでもできない領域だ。全国に40名近くのレイアウト設計部隊がおり、ほとんどの案件で施設の設計段階から関わっているという。同社は着実に実績を積み上げ、学校給食向け市場でトップクラスのポジションにまでなった。

自動化・省人化が進む学校

▲卓上型過熱水蒸気オーブン「DEECO(ディーコ)」

同社売上高の約半分を占める学校給食向け市場は、少子化に伴い縮小しているものの、足元の給食センターの着工は安定している。

給食センターを統廃合するにしても、機械の廃棄、移設、新設という全てが同社の出番となり仕事は減らない。またメーカーとしては、例えば100食つくる場合と1000食つくる場合で、設置する機械の種類は変わらない。むしろ「人手不足が深刻なので、高くてもいいから自動化・省人化する機械をつくってほしい」という相談が増加しているという。

給食センター建設に際し、PPP・PFI(官民連携)方式の増加も予想され、案件の長期化や売上伸長を今後も見込む。

人員増で案件獲得率上昇

同社の業績は、19年3月期に売上高255億円・経常利益13億円だったのが、25年3月期に同399億円・同28億円と、7年間で売上高は約1・5倍、経常利益は2倍と大きく伸びている。

業績アップに寄与したのが、従業員数の増加である。従業員数は18年3月時点の476人から25年3月時点の635人にまで増えた。これまで人手不足で取りこぼしていた案件も受注できるようになり、ニーズが増している学校市場で案件獲得率がアップした。これが大幅な売上増につながった。

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