上下水処理・産業機器大手 月島ホールディングス 【6332・プライム市場】

下水処理施設と機器・プラントの2本柱
HD化で事業統合による業界再編も目指す

月島ホールディングスは、下水処理施設の汚泥焼却炉建設で国内シェア1位。全国約160カ所の浄水場・下水処理場などの運転管理・メンテナンスを自治体から受託しており、水インフラにまつわる水環境事業でトップクラスの企業だ。同社はまた、化学・エネルギー・食品・化粧品といった水環境以外の産業インフラの分野でも存在感を示す。2023年にはホールディングス化に踏み切り、スピーディな事業展開を推進。今後はM&Aなどにも積極的に取り組み、業界再編の旗振り役を果たそうとしている。
月島ホールディングス-川﨑 淳

川﨑 淳(かわさき・じゅん)

社長

1971年7月生まれ、92年月島機械入社。2019年取締役、22年代表取締役専務執行役員。23年4月代表取締役社長社長執行役員就任(現任)。

機器の製造をベースとして
水環境事業と産業事業を展開

 同社の2025年3月期業績の売上高は前期比12・1%増の1392億3500万円、営業利益は同31・8%増の89億1500万円と、いずれも過去最高となった。

全体売上の約3分の2が「水環境事業」、約3分の1が「産業事業」という2本柱で事業を展開している。上下水道など水インフラの機器・プラントの設計・建設から運転管理・メンテナンスまでを行うのが、水環境事業だ。一方、水環境以外の化学・エネルギー・食品・化粧品といった分野の、機器・プラントの設計・建設・メンテナンスなどを行うのが産業事業となる。

「水環境事業は公共事業の仕事で、産業事業は民間がクライアントということで2つのセグメントとしています。ただ大きい意味でやっていることは共通で、どちらも固体・液体・気体を処理するための機械の製造がベースにあります」(川﨑淳社長)

水環境事業の売上高は927億円、営業利益は61億円と好調。これは豊富な受注済案件が順調に進行したためで、25年3月期も引き続き複数の大型案件の受注があった。一方の産業事業の売上高は452億円、営業利益は21億円で、こちらも受注が好調だ。

水インフラは安定の更新需要

水環境事業は、機器・プラントの設計・建設を行う「水インフラ」と、運転・メンテナンス・補修工事・サービス業務を行う「ライフサイクルビジネス」で構成される。

水インフラにおける下水汚泥焼却炉の国内シェアは約3割、国内1位だ。下水処理施設のプラントの受注額は、小型のもので5億円程度から大型だと100億円と幅広いが、数十億円クラスになると受注から納めるまでに3~5年程度掛かる。政令指定都市や県庁所在地の大都市の焼却炉で1日の処理量は50~200t、東京ではさらに300tの大型設備となり、受注額は数十億円にもなる。大型の処理場は、敷地も数十~数百万㎡と広大だ。

日本の下水道普及率は80%程度とほぼ行き渡っており、市場の大きな拡大は見込めないが、機械設備の耐用年数は15~20年程度で、プラントの更新時期には施設を更地にして建設し直す。そのため、事業環境は安定していると言える。

「公共事業なので20年に1回は必ず更新しますし、人口が減ったからと言って減っていくということはありません。ただし、マーケットが大きく伸びることもないと思います。そのため、自治体の発注の仕方が変わってきているので、それに対応して機器だけではなく維持管理もセットになった案件を狙っていこうとしています」(同氏)

ライフサイクルビジネスにおいては、浄水・下水処理設備などの運転管理・メンテナンスを自治体から同社が受託するのは約160施設で、業界トップクラスの実績を持つ。処理場のメンテナンスを専門に行う月島ジェイテクノメンテサービスの社員は約1800人に及ぶ。

24時間体制で交代制のため、大きい処理場だと数十人が勤務する。雨が降ると流れ込む水量が変わるなど自然の変化の影響を受けやすく、どうしても人間の判断や操作が必要になるからだ。

「今、省人化のためのDXなど技術革新はトライしており、メンテナンスも好調なことから収益率は向上しています。受注残高も豊富にあることから、ストックビジネスとして経営の安定度という点においても大きなメリットがあります」(同氏)

多種多様な機器を製造

産業事業は、機器・プラントの設計・製造・建設の「産業インフラ」と、環境保全設備の設計・製造・建設、廃棄物処理事業の「環境」で構成される。

同事業の機器では化学向け乾燥機、化粧品製造用撹拌機などで高シェアを誇る。例えば新幹線の1車両分の大きさがあるような大型の乾燥機「スチームチューブドライヤ」は、ペットボトルの原料のもとであるテレフタル酸を大量に乾かす。回転する乾燥機の中に液体状のテレフタル酸を落とすと回りながら乾燥していき、サラサラの原料が出来上がる。1台数億~数十億円もする機器だが、化学ではこういった乾燥過程が必ずあるのだという。

「日本の大手化学メーカーはもちろん、海外の主要メーカーにも納めています」(同氏)
化学品・食品製造用の遠心分離機、電気自動車向け電池の材料をつくる晶析装置、半導体製造工場の排水に含まれるアンモニアを回収・処理する排水処理装置など、他にも納品する機器は多岐にわたる。

25年3月期には、子会社の化粧品・医療向け高速撹拌機を取り扱うプライミクス、廃棄物処理設備の月島環境エンジニアリングが特に受注・売上ともに好調だった。

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