創業130年超の繊維専門商社 ヤギ 【7460・スタンダード市場】

「原料・生地」からアパレル、小売りまで
祖業を起点に川上から川下まで展開

ヤギはかつて、繊維業界をリードしてきた「船場八社」の唯一の生き残りとして、今も繊維に関わる事業を展開している。1893年に創業し、130年以上の歴史を誇る同社は2016年、創業家出身となる八木隆夫氏が社長に就任した。以降約10年間で、祖業となる商社としての機能を活かしつつ、事業領域を拡大。積極的なM&Aを含め、ブランド・リテール事業の設立、またグローバル事業にも注力するなど組織改革を進めてきた。今期は中期経営計画の最終年にあたり、5月には最終年度の経常利益目標を上方修正。成果は結実しつつあるが、八木社長が描く未来図は道半ばだ。
ヤギ-八木 隆夫

八木 隆夫(やぎ・たかお)

社長

1973年4月生まれ、兵庫県出身。京都大学大学院工学研究科修了後、99年にインドネシア石油(現INPEX)に入社。2011年、ヤギ入社。14年に取締役管理部門長、15年に常務取締役就任管理部門長兼海外事業部管掌などを歴任し、16年に代表取締役社長就任。21年に代表取締役 社長執行役員に就任(現任)。

最適素材安定供給する“コーディネーター”
商社としての高い専門性と知見が強み

「TATRAS」は23店舗

▲24年11月に東京・銀座にオープンした「TATRAS」旗艦店

繊維専門の老舗商社のヤギは、マテリアル事業、ライフスタイル事業、アパレル事業、ブランド・リテール事業と4つの事業を展開し、多角化を進めている。祖業のマテリアル事業は売上高比率26・9%を占める。

原料と生地の調達と供給で領域を拡げ、現在は国内外にある拠点で素材全般の開発も手掛ける。衣料やインテリア、生活資材、自動車関連など、顧客は世界20カ国以上に及び、最適な素材を安定的に供給する“素材のコーディネーター”の役割を担う。

素材に精通した高い専門性と幅広い知見は、ほかの3事業でも活きている。現在、同社の主力事業となっているのが売上の51%を占めるアパレル事業だ。アパレル企業などに向けて、企画提案型のOEM・ODMを行い、メンズ・レディース・キッズ衣料や、ユニフォーム・スポーツ・アウトドアウェアを供給。グローバルな生産ネットワークと販売までの一貫した取引体制が特長で、顧客は継続して安定的な供給を享受できる。

「ブランド・リテール事業の売上高比率は3番手となる12・5%ですが、今後の伸びを期待しています。当社の全事業経常利益率は4・5%の中で、ブランド・リテール事業だけでみると9・7%と高く、売上高も前期比14%増と伸びているからです」(八木隆夫社長)

「NIKEストア」も運営

代表的なブランドは3つ。グループ会社のWEAVAが運営する日本とイタリアにルーツを持つブランド「TATRAS」、メンズブランド「ATTACHMENT」と、韓国のスポーツアパレル企業「WINWIN SPORTS」との合弁会社WINWIN YJVが運営する「NIKE(ナイキ)ストア」だ。これらの厳選したブランドに同社が扱う素材・デザイン性などを掛け合わせ、付加価値の高い商品を各ブランドで展開している。現在、「TATRAS」はミラノ店を含め23店舗、「ATTACHMENT」は国内に4店舗、NIKEストアは国内12店舗を構える(2025年10月末時点)。

そのほか、売上高比率8・6%を占めるライフスタイル事業ではタオルや化粧品商材などの生活用品から、不織布や機能性素材原料などの産業資材分野まで取り扱う。

25年3月期の売上高は前期比0・6%増の833億7600万円、営業利益は同12・3%増の35億7200万円、ROEは6・3%だった。マテリアル事業、ライフスタイル事業、アパレル事業が利益に貢献しており、売上高は2期ぶりの増収、利益は3期連続で拡大している。

同社の強みは何と言ってもその事業領域が幅広いことだ。繊維商社としてアパレル業界の“川上”である「原料・生地」に携わりながら、“川中”にあたる「アパレル製品」、“川下”の「店舗」までを網羅している。

「総合商社で多領域に展開されている企業は多数ありますが、当社のように繊維専門商社の括りで、糸や生地からアパレルや生活雑貨、ブランド・リテールまでを手掛けているところはなかなかない。数字的にも各事業のバランスがとれてきましたから、そこは良かったと思っています」(同氏)

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