成長と理念が結びつく
事業基盤
家賃保証という社会インフラを担い、創業以来21年連続の増収を続けるジェイリース。その歩みは、単なる市場拡大の物語ではない。同社の根幹にあるのは、「地域社会を支える存在でありたい」という変わらぬ想いだ。
2000年代初頭、まだ「家賃保証」というサービスが浸透していなかった時代から、入居者と家主の双方に“安心”を届ける仕組みを築き上げてきた。入居者が保証人を探せない場合には、ジェイリースが保証人の代わりとなり、入居しやすくする支援を行う。さらに、やむを得ず家賃を支払えない場合には、ジェイリースがその分を立て替え、家主には安定した賃貸経営を、入居者には継続して住まいを確保できる環境を提供する。双方の信頼関係をつなぎ、地域の賃貸市場と入居者の生活を下支えしてきた。
結果として、2025年3月期には売上高172億6792万円(前期比+30・6%)、営業利益31億249万円(同+19・0%)を達成。家賃保証の専業大手として確かな地位を確立している。
また近年では、店舗やオフィスなどを対象とした「事業用賃料保証事業」が第2の柱として拡大。さらに医療費保証や養育費保証など、暮らしを支える新たな領域にも挑戦し、保証の枠組みを社会全体へと広げつつある。
いずれも「私たちに関わる全ての人の幸せを追求」という理念、そして「誰もが自分の人生をまっとうできる社会をつくる」という未来ビジョンを具現化した挑戦といえる。本稿では、ジェイリースがどのようにしてこの理念を事業として体現し、社会的価値と企業成長を両立させているのかを紐解いていく。
地方発、全国へ。
根づく「地域密着」の精神
ジェイリースの原点は、大分の地にある。創業の地から九州全域へ展開し、現在では業界最多となる全国39都道府県42店舗体制を構築。東京、新潟、宇都宮、群馬、長野など全国へと徐々に拠点を広げてきた。同社が全国へ展開する理由は、単に事業拡大のためではない。困っている人が困った時に、すぐに寄り添える距離にいるためだという。根底に家賃を支払えずに悩む入居者を一人でも多く支えたいという想いがあるのだ。現場に近い場所に拠点を置くことで、地域の事情に即した迅速な対応を可能にしている。
その姿勢を支える理念が「私たちに関わる全ての人の幸せを追求」という言葉だ。ジェイリースにとって“入居者”はもちろん、“家主”もまた大切な存在。入居者には生活の安心を、家主には安定した収入を、双方の幸せを守ることが同社の使命だ。
この考え方は、いわゆる「BtoBtoC」というビジネスモデルにも表れている。契約の相手は不動産会社やオーナーだが、常に見つめているのは“その先にいるC=入居者”。「保証」を単なる取引ではなく、“人を支える仕組み”として位置づける姿勢こそが、ジェイリースの地域密着経営の原点だ。
こうした誠実な取り組みは、各地の不動産会社や自治体、オーナーからも高く評価されている。ジェイリースの「地域密着型」という言葉には、単に拠点があるという意味を超え、“人に寄り添い、地域に根づく”という精神が込められているのだ。
官民連携で広がる居住支援の取り組み
高齢者や外国人、低所得者など、住宅の確保に配慮が必要な方々の住まい探しには、保証人の不在や入居審査など、多くの壁がある。
ジェイリースは「居住支援法人」として、行政・不動産事業者と連携し、こうした課題の解決に取り組む。大分市居住支援協議会の創立メンバーとして参画し、住宅確保要配慮者(高齢者、低所得者、外国人、被災者、ひとり親世帯など)を対象に、入居支援から生活サポートまでをワンストップで支える体制を整備。専用の家賃債務保証プランを通じて、スムーズな入居のサポートをしている。地域共生社会の実現に向け、誰もが安心して暮らせる環境づくりを進めている。
他にも、2024年1月には中部電力ミライズコネクトとの提携をはじめ、電力会社が提供する見守りサービスとの連携を開始。単身高齢者の増加に対応する見守りサービスで、スマートメーターの電力量を活用し、変化があれば入居者の親類に通知。カメラやセンサーは不要で、入居者のプライバシーに配慮しつつ、孤独死などのリスクを軽減する。これは入居者の家族に安心を提供するだけでなく、不動産会社・物件オーナーの不安・リスクを軽減し、住まい探しが困難な高齢者の入居促進にも寄与するサービスだ。今では中部電力だけでなく、九州電力、北陸電力とも同様の提携を行なっている。
また、2025年4月からは、サービス付き高齢者向け住宅を対象とした家賃保証サービス『コサージュ』を提供。高齢者の家賃滞納や孤独死リスクに対し、物件オーナーの費用負担や空室増加を抑え、安心して暮らせる環境を整える。さらに、死後事務委任を取り扱う企業との提携により、入居者の生活の最期まで見守る体制も構築。入居から暮らしの終わりまで、一貫した支援を可能にしている。
さらにひとり親家庭向けには養育費保証を提供。母子世帯の約6割が養育費を受け取ったことがない現状に対応し、経済的な支援を保証することで子どもたちの生活を支える。
地域との接点を広げる取り組みにも力を注ぐ。「居住支援 九州サミット in べっぷ」へのブース出展や、大分市居住支援相談会への相談員派遣も行い、地域住民や関係機関とのネットワークを強化。さらに、市区町村と連携し、居住支援用保証商品の開発・運用を協議するなど、地域課題に即した実践的な施策を展開している。
地域とともに、
未来を支える
全国展開を進める一方で、ジェイリースの活動の原点は、常に“地域との共生”にある。
「信用で人をつなぐ会社」として、人と人、人と地域を支える多様な社会貢献活動を続けている。
その象徴が、スポーツを通じた地域活性化だ。自社でサッカーチーム「ジェイリースFC」を運営。選手たちは日々の練習だけでなく、地域に根ざした活動にも積極的に取り組んでいる。保育園や児童養護施設でのサッカー教室、高齢者施設での運動支援など、世代を超えて人と人がふれあう場を創出。スポーツを「競うため」だけでなく「つながるため」の手段として、地域に笑顔と活力をもたらしている。
また、プロとして活躍を終えた選手の〝第二のキャリア支援”という側面も持ち、スポーツを軸にした新しい地域貢献の形を築いている。
教育・人材育成の分野では、未来を担う若者への支援を積極的に展開している。地元大学での社長による特別講義をはじめ、インターンシップを通じて、学生が社会を知り、成長する機会を提供。また、NPO法人大分県海外教育支援機構を通じて、韓国など海外の学生を対象としたスピーチ大会を支援するなど、地域を越えた教育交流にも力を注いでいる。こうした活動は、2007年から継続して行われており、「九州と韓国をつなぐ懸け橋」として高く評価されており、2025年6月には外務大臣表彰を受けている。
また、地域文化の継承にも積極的に関わっている。地元・大分の夏を彩る『おおいた「夢」花火』への特別協賛をはじめ、社員がボランティアとして運営に参加するなど、地域の人々と喜びを分かち合う場を支えている。
地域イベントへの協賛は、単なる広告活動ではなく、“地元の一員としての責任”を果たす取り組みでもある。こうした一つひとつの活動はすべて、「誰もが自分の人生をまっとうできる社会をつくる」というビジョンの実践にほかならない。
ジェイリースは、地域の人々とともに歩み、支え合うことで、より強く、しなやかな社会の土台を築いている。
スポーツの力で、誰もが輝ける未来へ
ジェイリースFCが描く、地域と人をつなぐビジョン
2018年、ジェイリース株式会社のCSR活動の一環として、スポーツを通じたまちづくりや地域貢献を目指し、特定非営利活動法人カティオーラ(大分市角子原)と連携して「ジェイリースフットボールクラブ」が誕生した。大分を拠点に九州サッカーリーグへ参戦し、アマチュア最高峰であるJFLを目指して活動を続けている。
ジェイリースFCの理念は、「スポーツを通じて ジェイリースフットボールクラブを取り巻く 全ての人を このまちを もっと元気に もっとハッピーに」。年齢や環境の変化でプレーを続けられなくなった人など、サッカーに情熱を注いできた人々へ“セカンドキャリア”を提供している。
活動の舞台は、ピッチだけではない。保育園や児童養護施設でのサッカー教室、高齢者施設でのドリブルパフォーマンスやキックターゲット、高齢者の買い物支援など、選手自ら地域に出向き、人と人が交流する温かな時間をつくり出している。
その根底にあるのが、クラブビジョンのひとつ「地域に密着したスポーツを“する”“みる”“ささえる”活動を通して、地域の課題解決に取り組み、前向きで活力に満ちた、絆の強い社会を創る」という考え方だ。世代や立場を超えて人と人をつなぐ存在として、地域の元気づくりに貢献している。
スポーツを通じて地域の課題解決に挑む姿勢は、クラブのもうひとつのビジョンである「スポーツへの多様な関わり方を通じて、スポーツの魅力を広げ、全ての人がスポーツの力で輝く未来を創る」ことそのもの。夢を諦めざるを得なかった選手たちも、活動に触れる子どもや高齢者、地域の人々も、すべてが交流し笑顔になる場をつくり出している。
ジェイリースFCは、関わるすべての人がハッピーになれる活動を体現している。
ESGで支える
安心と地域の未来
ジェイリースの保証事業は、単なるビジネスではなく、社会課題の解決につながる事業である。保証人が探せない入居者や家賃を支払えず困る入居者を支えることで、安心して暮らせる基盤を提供し、誰もが挑戦できる社会の土台をつくっている。こうした取り組みは、ESGの「S(社会)」の観点で高く評価されている。
地域に根ざした活動や社会貢献は、CSR活動にとどまらず、地域からの信頼やブランド力の向上、中長期的な企業価値の向上にもつながる。地域社会とともに歩む姿勢は、会社の持続的成長の土台を支える要素でもある。事業活動と地域密着を両輪に、ジェイリースはESG経営を実践し、社会に貢献しながら持続的に企業価値を築き続けている。
広がる連携、
進化する保証ビジネス
ジェイリースは、既存の家賃保証事業を拡大するとともに、社会的使命を果たす新たな領域への挑戦を進めている。創業の地である大分をはじめ全国各地で事業を進める中、低所得者や高齢者、障がい者、ひとり親家庭、被災者など、住宅の確保が難しい人々を支援する居住支援法人の指定を受けるなど、地域の団体や自治体との連携をさらに深めてきた。
こうした取り組みを通じて、ジェイリースは患者が保証人を依頼せずに入院できる医療費保証や、ひとり親家庭の養育費保証など、住宅だけでなく生活の基盤を支えるサービスにも挑戦。高齢化や地方創生といった社会課題に対応し、保証事業の枠を超えた新しい支援モデルを模索している。
地域に必要とされるサービスを拡大しつつ、ジェイリースは地域密着型企業として社会的使命と企業成長の両立を目指す。今後も、地域の人々が安心して暮らし、挑戦できる社会の基盤づくりに貢献する。
すべての人にチャンスを!
未来をつくる「奨学基金」
「障がいがあっても、人生を豊かに」。この理念のもと、ジェイリースは2018年に視覚障がい者を対象とした奨学基金を設立した。
視覚に障がいのある人は、学びの機会や就業の選択肢が制限されやすく、社会参画や自立に向けた挑戦が困難になりがちである。こうした課題に対し、教育を通じた支援を行うことが同基金の目的である。
奨学基金では、大学進学を希望する視覚障がい者や、就労訓練中の人に対して、返還義務のない奨学金を提供する。学費や訓練費用を経済的に支援することで、安心して学びや訓練に集中できる環境を整え、自立や社会参加の促進につなげている。また、基金の運営には、視覚障がい者の就学や就労に見識のある理事を迎え、資金が適正に活用される仕組みを確保。必要な人に確実に支援が届く体制を整えている。
この取り組みは、単なる教育支援にとどまらず、ジェイリースの未来ビジョンである「誰もが自分の人生をまっとうできる社会をつくる」を具現化するものだ。学びの機会を通じて障がい者が自立し、地域社会の中で活躍できるようになることは、地域の活力向上にもつながる。
また、教育支援という形で社会課題に向き合うことは、企業としての社会的責任を果たすとともに、長期的な社会貢献のモデルとしても意義がある。
ジェイリース奨学基金は、視覚障がい者に限らず、すべての人に教育や挑戦の機会を届ける活動として、企業の理念と社会的使命を両立させる取り組みの一端を担っている。
まとめ
ジェイリースの各種取り組みは、そのすべてが未来ビジョンと企業理念に基づき展開されるものである。社会的課題を事業とつなげて解決することが、持続的な成長の土台となり、企業の使命と事業の発展が一体化している点が大きな特徴だ。
家賃保証を中心とした事業の枠を超え、地域や社会のさまざまな課題に向き合う姿勢は、同社ならではの強みである。スポーツ振興や教育支援、居住支援など、多岐にわたる活動を通じて、ジェイリースは地域に根ざし、人々の安心や挑戦を支える存在としての存在感を高めてきた。こうした取り組みは、事業活動を超えて、地域や社会にとって欠かせない価値を生み出しており、ジェイリースの独自性と信頼感を強く印象づけている。
(7187・プライム)
会社概要
代表者:代表取締役社長 中島 土
所在地:大分本社 大分県大分市都町1-3-19 大分中央ビル7F
東京本社 東京都新宿区西新宿6-22-1 新宿スクエアタワー2F
設立:2004年2月
資本金:720,166,000円(2025年3月31日現在)
従業員数:508名(連結:2025年3月31日現在)
事業内容:保証関連事業〔家賃債務保証、医療費保証、養育費保証〕














