技術力トップクラスでも世界では小規模
EVシフトの加速で経営統合を決意
リケンNPRは、エンジン用ピストンリングの世界トップクラス企業だ。2025年3月期実績の売上高は前期比22・9%増の1703億4000万円、営業利益は同34・7%増の118億700万円となった。
同社はピストンリングの国内シェア2位のリケンと、同3位の日本ピストンリング(NPR)による大型統合によって生まれた。
ピストンリングとは、エンジンのピストンにはめ込むリング状の部品のこと。ピストンとシリンダー壁の間で燃焼ガスが漏れないよう気密性を保ち、潤滑油のコントロールなどを行うための部品で、エンジンには欠かせない役割を果たす。
統合前は国内にTPR、リケン、日本ピストンリングと3社のピストンリングメーカーがあった。しかし世界を見ると、他には独マーレ社、米テネコ社という2大メーカーのみ。5メーカーが世界のピストンリングのほとんどを製造する寡占市場だった。
「日本の自動車部品メーカーには世界的なニッチトップ企業が多数存在しますが、その多くは売上規模が小さい。一方、欧米の部品メーカーは大規模企業が多く、日本の部品メーカーは規模で劣っていました」(前川泰則会長)
相性のいい2社が
タッグを組む
地球温暖化対策への意識が世界的に高まり、CO2削減に有効とされるEVへの注目も大きくなってきた。20年には欧州でEVとPHV(プラグインハイブリッド車)の販売台数が前年の2・4倍となるなど、自動車のEV化がにわかに拡大してきた。
「EVシフトが、考えていたよりずっと早く来るのではと思いました。当時リケンは、乗用車の内燃機関関連ビジネスが売上の65%。大きな危機感を持ちました」(同氏)
リケンは以前に、一部事業に関してのみという限られた範囲で部分的な協業の議論をしたことがあった、日本ピストンリングに統合を持ちかける。日本ピストンリングは製造拠点がリケンと重ならないなど、マッチングの良い面が多かった。
21年から急ピッチで協議が進められ、22年に統合合意を発表。23年10月に両社の完全親会社であるリケンNPRが設立され、東証プライムに上場。両社は上場廃止し、持株会社であるリケンNPRの傘下に入る形となった。
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