ピストンリング世界大手 リケンNPR 【6209・プライム市場】

EVシフト見据え、エンジン部品大手2社が統合
シナジー創出と新事業育成で次なる成長軌道へ

リケンNPRは、2023年に自動車エンジン用ピストンリング大手のリケンと日本ピストンリング(NPR)が経営統合し設立した会社だ。世界的な乗用車のEVシフトを背景にした統合だった。シナジー創出とともに、成長分野である半導体やEV関連事業を積極的に推し進めている。2社統合の旗振り役で、リケンNPR会長兼CEOを務める前川泰則氏に、今後の展望を聞いた。
リケンNPR-前川 泰則

前川 泰則(まえかわ・やすのり)

会長

1958年2月生まれ、東京都出身。81年早稲田大学理工学部卒業、伊藤忠マシナリー入社。86年リケン入社。2010年取締役海外委員会委員長。15年常務取締役。19年代表取締役専務執行役員。20年代表取締役社長兼COO。22年代表取締役社長兼CEO兼COO(現任)。23年リケンNPR代表取締役会長。25年リケンNPR代表取締役会長兼会長執行役員兼CEO(現任)。

技術力トップクラスでも世界では小規模
EVシフトの加速で経営統合を決意

リケンNPRは、エンジン用ピストンリングの世界トップクラス企業だ。2025年3月期実績の売上高は前期比22・9%増の1703億4000万円、営業利益は同34・7%増の118億700万円となった。

同社はピストンリングの国内シェア2位のリケンと、同3位の日本ピストンリング(NPR)による大型統合によって生まれた。

ピストンリングとは、エンジンのピストンにはめ込むリング状の部品のこと。ピストンとシリンダー壁の間で燃焼ガスが漏れないよう気密性を保ち、潤滑油のコントロールなどを行うための部品で、エンジンには欠かせない役割を果たす。

統合前は国内にTPR、リケン、日本ピストンリングと3社のピストンリングメーカーがあった。しかし世界を見ると、他には独マーレ社、米テネコ社という2大メーカーのみ。5メーカーが世界のピストンリングのほとんどを製造する寡占市場だった。

「日本の自動車部品メーカーには世界的なニッチトップ企業が多数存在しますが、その多くは売上規模が小さい。一方、欧米の部品メーカーは大規模企業が多く、日本の部品メーカーは規模で劣っていました」(前川泰則会長)

相性のいい2社が
タッグを組む

地球温暖化対策への意識が世界的に高まり、CO2削減に有効とされるEVへの注目も大きくなってきた。20年には欧州でEVとPHV(プラグインハイブリッド車)の販売台数が前年の2・4倍となるなど、自動車のEV化がにわかに拡大してきた。

「EVシフトが、考えていたよりずっと早く来るのではと思いました。当時リケンは、乗用車の内燃機関関連ビジネスが売上の65%。大きな危機感を持ちました」(同氏)

リケンは以前に、一部事業に関してのみという限られた範囲で部分的な協業の議論をしたことがあった、日本ピストンリングに統合を持ちかける。日本ピストンリングは製造拠点がリケンと重ならないなど、マッチングの良い面が多かった。

21年から急ピッチで協議が進められ、22年に統合合意を発表。23年10月に両社の完全親会社であるリケンNPRが設立され、東証プライムに上場。両社は上場廃止し、持株会社であるリケンNPRの傘下に入る形となった。

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