金融グループであるJトラストの中核は、日本国内で展開する保証事業と債権回収事業だ。金融機関が個人投資家向けに融資を行う際の債務保証を手がけ、長年にわたり与信審査や回収ノウハウを磨いてきた。ここ数年間、投資用不動産融資の保証が伸びており、安定的な収益を生み出している。また、カード・信販分野でも事業が拡大しており、加盟店の増加に伴って割賦債権残高も堅調に推移している。
一方で、証券事業が今後の成長の柱として注目を集める。2022年に旧エイチ・エス証券を買収して傘下に収めたJトラストグローバル証券では、富裕層向けの資産運用サービス「プライベートバンキング」を積極展開。2024年末時点で約4,000億円の預かり資産を、2029年には1兆円へと拡大する計画であり、達成時には単体で30~35億円規模の営業利益が期待されている。
海外でも足元の回復と成長が進む。韓国では、信用不安や金利上昇で一時的に業績が悪化したが、構造改革の効果が現れ、2024年には黒字に転換。東南アジアでは、インドネシアとカンボジアの両国で商業銀行を運営し、高い経済成長を背景に貸出を着実に伸ばしている。特にインドネシアでは、国際的な資本規制に対応するための増資が今後のカギとなり、仮に30億円規模の資本増強が実現すれば、単体の営業利益が倍増する可能性もあるという。
24年12月期は総還元性向61%
積極的な株主還元方針を明示
株主還元の姿勢も明確だ。配当性向は原則30%以上を掲げ、業績の伸長に合わせて増配や自己株取得も柔軟に実施する。2024年12月期の総還元性向は61%と、投資家への利益還元にも積極的なスタンスを示している。
JトラストのPBR(株価純資産倍率)は長らく1倍を下回っているが、今回の計画ではROEの改善や資本コストの意識を明確に打ち出しており、企業価値の見直しに向けた取り組みも本格化している。
多様な金融機能を束ね、収益の多軸化を進めるJトラスト。再成長のステージに立った今、その動きから目を離せない。
企業価値向上に向けたもう一つの注目ポイントは、ESG評価だ。Jトラストは2025年7月、英FTSE Russell社が提供するESG投資指標「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選定されたことを発表した。これは、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点で一定水準以上の評価を受けた企業に与えられるもので、サステナビリティへの取り組みが対外的にも認められた格好だ。
(8508・スタンダード)
英語表記 J Trust Co.,Ltd.
本社所在地 東京都渋谷区恵比寿四丁目20番3号恵比寿ガーデンプレイスタワー7階
事業内容 ホールディング業務
グループ事業内容 日本金融事業/韓国金融事業/東南アジア金融事業/その他の事業
設立 1977年(昭和52年)3月18日
資本金 9,000万円
社員数 3,097名 ※連結子会社含む(2024年12月末現在)
上場取引所 東京証券取引所 スタンダード市場