EV・半導体等工場への対応重点
同社は、ビル空調やクリーンルームなどを手がける「環境システム事業」と、自動車関連の塗装設備を展開する「塗装システム事業」を両輪としてきた。
今回の中期経営計画で注目すべきは、同社が堅実な財務基盤を活かしつつ、成長市場に的を絞った投資と事業再構築を着実に進めていくことを打ち出した点だ。
ポイントとなるのは、成長市場である半導体やEV(電気自動車)向けバッテリー工場への対応力強化。従来からの強みである空調や塗装のエンジニアリング技術を融合し、新たな受注機会を創出する。
たとえば、EV向けバッテリー製造工場では、短納期かつ原価低減の顧客ニーズに対応するため、空調による温湿度管理と塗装事業で培ってきた生産ライン構築技術の組み合わせが求められる。こうした複合ニーズに対して、同社は一括ソリューションを提供できる技術基盤を持ち、新たな価値提案を実施。足元でも国内外での受注実績があり、請負範囲を拡大している。
さらに、生産性向上の取り組みも本格化。設計・施工のモジュール化・ユニット化を進めることで、納期短縮やコスト削減、人手不足対策を同時に実現していく計画。具体的には、BIM(Building Information Modeling)を活用して、設計図面・進捗・部材の情報を一元管理し、業務効率の飛躍的な向上を図る。協力会社とのパートナーシップ強化を通じて、現場での施工品質や安全性の確保にも注力していく。
3年総額380億円を成長投資に
これらの戦略を支える成長投資は3年間で総額380億円。国内外でのコア事業・成長事業の強化、研究開発の拡充、新規事業開拓への取り組みに資金を投じる予定。研究開発分野では、水処理、脱炭素、再生可能エネルギー、省エネ関連といった社会課題をビジネスに結びつける動きを進めていく。
中期経営計画の財務目標では、ROE(自己資本利益率)10%、DOE(自己資本配当率)4%を設定し、10年プラン2035においては段階的な引き上げを計画。利益成長と株主還元の両立を目指しており、配当は安定配当を基本としつつ、必要に応じて自己株式の取得も検討する方針で、中期経営計画では年間50億円、3年間で150億円実施を予定しており、高い総還元性向を目指す。
世界的なEVシフト、半導体投資の拡大、カーボンニュートラル社会への移行といった構造変化は、同社にとって追い風となっている。既存の技術力と実績をベースに、成長分野への横展開を本格化させるこの中期経営計画は、企業価値の持続的な向上を図る重要なステップとなっている。