2025年3月期決算は力強い業績を記録 帝国通信工業 【6763・プライム市場】

連結売上高は前期比10・3%増の167億9000万円
事業の安定性と成長性の両面で成果

自動車・家電・アミューズメント・AV分野を中心に電子部品を提供している帝国通信工業。創業以来80年に渡りエレメント技術(抵抗器を構成する技術)を磨き続けてきた同社は、2000年代以降はIoTやAI分野での急激な進化に伴い高付加価値製品を提供、「NOBLE」ブランドとして既存市場から新市場へと業域を拡大してきた。2027年には本社ビル竣工を計画するなど、100年企業に向けて未来図を描いている。

総資産は前期比4・3%増
財務の健全性は極めて良好

同社の2025年3月期決算は、連結売上高は167億9000万円(前期比10・3%増)、営業利益は16億6300万円(同75・5%増)、経常利益は21億2700万円(同36・4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は20億900万円(同47・5%増)と、全体的に力強い業績を記録。総じて、事業の安定性と成長性の両面で成果を挙げた決算といえる。電子部品事業を中心に需要が堅調に推移したことや、生産体制の効率化によって、大幅な増収増益を達成した。

主力の電子部品セグメントでは、AV機器や自動車関連製品の需要が回復基調にあり、特に自動車電装品向けのHVAC向け等センサ部品の販売が堅調に推移した。加えて、海外向けの需要拡大も追い風となり、輸出関連の売上も好調に推移。さらに、同社は製造現場での自動化、省力化を積極的に進めており、従来よりも効率的な生産体制が構築されつつある。これが利益率の改善に寄与し、営業利益の大幅な増加につながった。

また、同期は円安が進行したことも追い風となり、海外売上の円換算額が増加。原材料費や物流費などのコスト上昇もあったものの、それを上回る販売拡大と生産性の向上が業績を押し上げた。

財務面では、総資産が前期比4・3%増の334億6000万円となり、企業規模の拡大を裏付ける結果となっている。自己資本比率は83・0%と引き続き高水準で、財務の健全性は極めて良好だ。
一方で、営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期比37・9%減の18億1400万円となったが、これは主に棚卸資産の増加や売掛債権の変動によるもの。

24年度の配当は、普通配当と創立80周年記念配当を合わせて前期比30円増の1株あたり年間100円。25年度も100円を予定している。

2026年3月期の連結業績見通し
売上高は若干増の170億円

同社では、持続可能な成長のために中長期的な視点での設備投資にも取り組んでおり、品質向上や新製品開発に資源を投じている。特に自動車電装市場ではEV自動車向けに、医療ヘルスケア市場では電気化学センサの対応部品の開発に注力しており、今後の成長ドライバーとして期待されている。

2026年3月期の連結業績見通しはやや慎重にみている。売上高は170億円(前期比1・3%増)とわずかに伸長するが、営業利益は15億円(同9・8%減)、経常利益は16億円(同24・8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は13億円(同35・3%減)と減益を予想する。その背景には、原材料費や電力料金の高止まり、地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの不安定化、さらには為替変動リスクなどが挙げられる。

同社は、収益構造のさらなる強化に加え、環境変化に対する柔軟な経営判断と、持続可能な成長戦略の実行が求められる局面に入っているといえる。

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