ティーケーピー 【3479・グロース市場】

「空間」「事業」「業界」「地方」
『再生』キーワードに新たなステージへ

今年8月に創業20周年を迎えるティーケーピー(TKP)。同社は、貸会議室運営事業を皮切りに事業領域を拡大してきた。現在では単なる「空間再生」にとどまらず、既存資産・既存市場を活かす「事業再生」「業界再編」、「地方創生」に挑戦している。高コスト・低効率のモデルに代わる柔軟で利益性の高いビジネスを構築しつつある点が、今後の成長戦略の要となっている。
ティーケーピー-河野 貴輝

河野 貴輝(かわの・たかてる)

社長

1996年慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部を経て、日本オンライン証券株式会社(現三菱UFJ eスマート証券株式会社)設立に参画、 イーバンク銀行株式会社(現楽天銀行株式会社)取締役営業本部長等を歴任。2005年8月当社設立、代表取締役社長就任、現在に至る。

TKPは近年、上場企業を中心に様々な企業との資本業務提携を進めている。これまでにブライダル事業を手掛けるエスクリ(2196・スタンダード)、ノバレーゼ(9160・スタンダード)、組織コンサルティング事業の識学(7049・グロース)、賃貸住宅管理大手のAPAMAN(24年上場廃止)とそれぞれ関係を強化した。同社は、2026年2月期を最終年度とする中期経営計画の中で、「M&Aを活用しながらハードとソフトの領域を拡張し獲得市場を拡大」を打ち出している。一連の業務提携はその一環で、成長戦略を描くうえで重要な施策となっている。

「TKP fabbit」オープン
「ビルのポートフォリオ化」実現

——貴社が考える「再生」ビジネスについて、方向性を教えてください。
河野  当社はもともと「空間再生」、つまり既存の空きスペースやオフィスを有効活用することで成長してきました。今後はそれをより広義の「再生」へと広げていくつもりです。例えばホテルやオフィスを新築するには莫大なコストと時間がかかりますが、既存資産を再利用することで、初期投資を抑えながら収益を上げる仕組みをつくっているのです。

——APAMANとの提携で、同社の子会社であるファビットをグループ化しました。第一弾として5月に渋谷で「TKP fabbit」をオープンさせました。
河野 新拠点は、元々大手企業のオフィスだった場所をそのまま借りて運営しています。受付もミーティングルームもきれいなままで、我々はそれを「TKP fabbit」という新ブランドとしました。執務室を会議室に変更するだけで済み、初期コストはほぼゼロ。短期間で開業でき、リスクも少なくすぐに収益化可能です。

——「fabbit」のようなビジネスモデルには、どのようなメリットがありますか?
河野 オフィス需要が再び高まる中で「6ヶ月だけ借りたい」「1年だけ使いたい」といったニーズが増えています。「fabbit」はそのニーズに応える仕組みです。イニシャルコストを抑えた再生型オフィスを提供し、会議室やオフィスを月単位でも貸し出しています。また、空いている時間帯には時間貸しも可能で、稼働率と利益率の向上に繋がっています。

——似たような業態として、他社にはWeWorkやリージャスがあります。その違いは?
河野 WeWorkなどは最初から内装に数百万円かけて作り込みますが、「TKP fabbit」は既存の設備を活かしてコストを抑えたモデルです。これは既に利益が出やすい形になっており、真似できる企業は少ないと思います。

——約10年前、河野社長は「これからはビルのポートフォリオ化が必要だ」と話していました。
河野 当時は理解されにくかったかもしれませんが、今は多様な再生オフィスを実現しています。アメリカのように、一軒家や倉庫をオフィスにする発想を取り入れ、当社でも大塚家具の店舗、家電量販店なども再利用してきました。市場価格の安い場所を再生・リノベーションして、付加価値をつけて高値で貸すことで、差額が利益になります。

既存事業の成長を軸に
政策投資で事業領域拡大

——現在では、「再生」をキーワードに、「事業再生」にも取り組んでいます。昨年は同じ上場会社のリリカラを子会社しました。
河野 リリカラは創業約120年の老舗ですが、同社は素材を売るだけのビジネスにとどまっています。TKPと組むことで、そこを垂直統合し、素材の供給から施工、販売まで一貫して行うことで利益率を高めようとしています。

——同時期にブライダル業界への参入も本格化させました。河野社長の言葉を借りれば、こちらは「業界再編」になります。
河野 ブライダル市場は年々縮小傾向にあるものの、まだ数千億円規模の市場性があります。これまで当社は、ホテルの宴会場がシュリンクする中で、会議室ビジネスを拡大してきました。これと同じ手法をブライダル業界でも応用しようとしているのです。

——ブライダル業界大手のノバレーゼやエスクリへの資本参加で、よりTKPの市場参入が鮮明化しました。
河野 ノバレーゼは地方のハイブランドとして強みがあり、エスクリはノーマルな価格帯の市場を持っています。この2社と連携することで、さらにマーケットの川上(集客、メディア、マッチング)まで取りにいければ、強力なシナジーが期待できます。実際、エスクリは沖縄の新しいテーマパークである、ジャングリアとの提携で、リゾートフォトウェディング市場にも進出しました。

——フォトウェディングや宴会などの領域での拡大も期待できます。
河野 首都圏では今、結婚式の形がフォトウェディング中心に移っています。そこに目をつけ、既存施設を活かした「リゾートフォト婚」を展開しています。さらに、サッカーチームやアイドルとのコラボといったファン層を意識したコンテンツ連携も視野に入れています。宴会などは施設の活用次第で、企業のパーティーや表彰式などにも対応可能です。

——もう一つ「再生」をキーワードにしたものに「地方創生」があります。22年に貴社は、大分県別府市のPFI事業(公募設置管理制度)「上人ヶ浜公園整備運営事業」の管理者に選定されました。7月にはこの事業を「SHONIN PARK」として開業させました。
河野 天然砂湯を持つ上人ヶ浜は大分空港からアクセスしやすく、インバウンド旅行者の訪問が期待されます。PFIでは、自治体の土地を利用して建物を整備するのでコストを一定セーブできる。ここに企業と一般の両方のお客さんを入れていくことで、地方創生に貢献していきたと考えています。

——今後のTKPの方向性は?
河野 大きなマーケットでも、シュリンクしているがゆえにチャンスがある分野に着目しています。ニッチな市場の中で、安価に再生資産を仕入れ、収益化するというスタイルは、まさにTKPの得意分野です。これは単なる「再生」ではなく、事業の再編や業界の垂直統合を通じた「再構築」といえるでしょう。

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