クチコミを武器に4セグメント展開
人気商品を集めた実店舗が売上のけん引役
同社が運営する「@cosme」は、化粧品などの商品データベースに加え、クチコミ検索機能や新商品情報などを備えた国内最大の美容情報メディアだ。約4万4000ブランド、約40万件の商品に関する、累計約2080万件のクチコミデータを誇る。
ユーザーは年齢や肌質、用途などに合わせ、クチコミを参考に化粧品を探したり、様々な情報を得たりできる。サイトのMAU(月間ユニークユーザー数)は1660万人(2025年3月時点)で、換算すると日本の20~30代女性の過半数が毎月利用するという。
掲載されたクチコミに対しては同社が常時監視し、営利目的や公序良俗に反するものは排除する。公正中立な立場を保つことで、一般消費者と化粧品ブランドの両者から信頼を得ている。
売上の75%はリテール事業
店舗の「体験できる場」好評
現在は、@cosmeに蓄積された化粧品の人気ランキングを始めとした膨大なデータを元に、リテール、マーケティング支援、グローバル、その他の4セグメントを展開。24年6月期の売上高は前期比30・8%増の560億8500万円、営業利益は同137・4%増の19億4000万円(営業利益率は3・5%)となった。
売上の75%を占めるリテール事業では、一般消費者向けに実店舗とEC(電子商取引)での小売を展開。同事業内における売上内訳は実店舗が約65%、ECは約35%で、利益率はどちらも平均して5~6%という。
実店舗は、化粧品専門店「@cosme STORE」などを、日本5大都市中心に計34店舗展開する(25年3月末時点)。
従来化粧品業界では、低価格帯商品はスーパーやドラッグストア、高価格帯商品はデパートなど、販売場所が分かれていたという。しかし同社の店舗では、@cosmeのクチコミデータベースを活用し、同じ店舗内に数百円から数万円の人気商品を幅広く取り揃えている。来店客は、一般的な店舗にはない多彩な商品を実際に試した上で購入できる。
旗艦店の1つであるルミネエスト新宿店は、日本で最も売上規模が大きく、坪効率(1坪当たりの売上)は世界トップレベルだという。また他の実店舗も、改装や増床によってさらに坪効率が上がっている。この一因として、遠藤宗社長は「体験できる場の増加」を挙げる。
「店舗面積を広げれば品揃えが広がるだけでなく、商品を体験できる場所が増える。例えば手を洗う場所を作れば、いろいろなクレンジング(化粧落とし)を試せます。ですので、接客を受けて購入するお客様だけでなく、自由に商品を試して購入するお客様も増える。つまり、50坪の店舗より200坪の店舗の方が、圧倒的に体験の量が増え、購入点数も増える。そのため、坪効率が上がります」(遠藤宗社長)
国内最大化粧品ECサイト運営
高利益のマーケティング支援も
リテール事業では実店舗に加えて、@cosmeと連携したECサイト「@cosme SHOPPING」も運営する。約2600ブランド、約5万商品にのぼる正規品取扱数を持ち、国内のECでは最大級だ。各ブランドの新商品の先行販売や、限定セットなどの販売も行う。
一方、マーケティング支援事業の売上は全体の15%だが、セグメント利益率は19・4%と高いのが特徴だ。同事業では@cosmeの広告枠販売や、ECサイトに掲載される広告収入を展開。また、実店舗の店頭を活用したイベントのプロモーションによる販促なども行っている。
売上の7%を担うグローバル事業では、主にアジア諸国を中心に展開。主なサービスは、@cosmeの海外展開や越境ECサイトの運営、実店舗の運営などだ。また、@cosmeで人気の高い商品を中心とした化粧品の海外輸出を行い、日本の化粧品の海外展開もサポートしている。
その他事業では、国内の化粧品店の店頭で接客を行う美容部員、ビューティーアドバイザーなどの求人・転職・派遣サイト「@cosme CAREER」の運営などを展開する。
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